第8次医療計画を見据えた持続可能な地域小児医療体制の構築のための政策研究

文献情報

文献番号
202421013A
報告書区分
総括
研究課題名
第8次医療計画を見据えた持続可能な地域小児医療体制の構築のための政策研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1010
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
平山 雅浩(国立大学法人三重大学 大学院医学系研究科小児科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 秀実(三重大学医学部小児科)
  • 高橋 尚人(東京大学  医学部附属病院 小児・新生児集中治療部)
  • 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
  • 竹島 泰弘(兵庫医科大学医学部)
  • 種市 尋宙(富山大学学術研究部医学系小児科学 小児科学講座)
  • 石崎 優子(関西医科大学総合医療センター 小児科)
  • 是松 聖悟(埼玉医科大学 埼玉医科大学総合医療センター小児科)
  • 岩本 彰太郎(三重大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化で出生数が減少し、子どもの成育における支援体制が求められる中、国内の小児医療体制の整備は重要な課題である。また、COVID-19の影響で小児医療の実態は大きく変化し、COVID-19後の新たな医療体制の構築が求められている。そこで本研究開発では、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言を導くことを目的とした。
研究方法
小児科医師確保計画の見直しに向けた全国実態調査を実施した。調査対象施設は、小児中核病院169施設、小児地域医療センター533施設、小児地域支援病院57施設を含む、全国の小児医療機関1088施設とし、実態調査は2019年から2023年の5年間とした。
結果と考察
小児科区域の特定については、小児中核病院の95.5%、小児地域医療センターの77.6%、小児地域支援病院の70.0%、不明・該当なしの病院の50.0%で行われていた。小児科専用病棟は、小児中核病院の84.1%、小児地域医療センターの51.8%に設置されているものの、小児地域支援病院では40.0%(4/10施設)、不明・該当なしの病院では20.5%(9/44施設)の設置に留まっていた。このことより、小児患者が入院する際、小児中核病院と小児地域医療センターの多くで、大人と同じ区域に入院しないよう配慮されている一方、それ以外の施設では小児科区域の特定の推進が必要と思われた。
COVID-19拡大を受けて、小児医療機関の小児科病棟の稼働率低下と、時間内に小児科外来を受診する患者数が減少し、緩やかに回復傾向にあるものの、COVID-19が5類感染症に移行した2023年でも低値が持続していることが明らかになった。この傾向は、小児中核病院に比べ小児地域医療センターで顕著であった。また、小児地域医療センターの小児科医師数の中央値は7.0名と、小児中核病院の23.1名に比べ3分の1と少ない。
時間外の小児科外来受診患者数は、小児中核病院よりも小児地域医療センターの方が多く、COVID-19が5類感染症に移行後には、COVID-19拡大前に比べ、救急車による受診患者数が小児中核病院で1.2倍、小児地域医療センターで1.5倍に増加していた。この理由として、2020年以降のCOVID-19予防策の施行により感染症の罹患数全体が減少し集団免疫が低下したため、予防策解除後に反動で様々な感染症が増加したこと、保護者の小児感染症に対する経験が少なくなったため家庭看護力が低下し、軽症患者の時間外受診や救急車要請につながったことが考えられる。
小児中核病院のNICU稼働率は、調査期間中83.4-89.4%で推移し、継続的に低下傾向にある。また、小児地域医療センターのNICU稼働率は2020年に大きく低下したあと上昇傾向にあるものの、COVID-19拡大前には回復していない。この理由として、少子化の影響が最も大きいと考えられる。
2019年から2023年までの5年間で、小児医療機関の小児科医業収益は、COVID-19が拡大した2020年に低下した。小児中核病院の収益低下は約10%で回復も速やかであったのに対し、小児地域医療センターでの収益低下は約20%で、COVID-19の5類感染症移行後も収益低下が持続し回復していない。
これらより、小児地域医療センターは少ない医師数で入院を要しない軽症の時間外患者の対応を余儀なくされており、時間外の小児一次診療に対する小児地域医療センターの負担軽減と環境整備とともに、家庭看護力の醸成が必要であると考えられた。また小児地域医療センターでは入院患者数が減少し、病床の稼働率は低く医業収益も少ない。今後小児地域医療センターの病床数の見直しや、小児医療のさらなる集約化の検討が必要と考えられた。
小児中核病院では、全体の約90%の施設で医療的ケア児の定期外来診察や、急変時の入院に対応しているが、小児地域医療センターでは約75%、小児地域支援病院では約50%に留まっていた。このことは、医療的ケア児は、急性期に小児中核病院で治療されることが多く、退院後も治療を受けた中核病院で引き続きフォローされていることと、地域・自宅近隣の小児医療機関への移行が進んでいないことを反映している可能性がある。この理由として、小児地域医療センターや小児地域支援病院は、少ない小児科医師で時間外小児患者や救急患者に対応する必要があること、また医療的ケア児は専門性の高い基礎疾患を有する場合が多く、高い人的医療資源を必要とすること等から、医療的ケア児の診療を受け入れる余裕がないことが推測される。
結論
小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言を導くことを目的として全国実態調査を実施することにより、COVID-19拡大後の現在の問題点を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
202421013B
報告書区分
総合
研究課題名
第8次医療計画を見据えた持続可能な地域小児医療体制の構築のための政策研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1010
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
平山 雅浩(国立大学法人三重大学 大学院医学系研究科小児科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 秀実(三重大学医学部小児科)
  • 高橋 尚人(東京大学  医学部附属病院 小児・新生児集中治療部)
  • 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
  • 竹島 泰弘(兵庫医科大学医学部)
  • 種市 尋宙(富山大学学術研究部医学系小児科学 小児科学講座)
  • 石崎 優子(関西医科大学総合医療センター 小児科)
  • 是松 聖悟(埼玉医科大学総合医療センター小児科)
  • 岩本 彰太郎(三重大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化で出生数が減少し、子どもの成育における支援体制が求められる中、国内の小児医療体制の整備は重要な課題である。また、COVID-19の影響で小児医療の実態は大きく変化し、COVID-19後の新たな医療体制の構築が求められている。そこで本研究開発では、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言を導くことを目的とした。
研究方法
小児科医師確保計画の見直しに向けた全国実態調査を実施した。調査対象施設は、小児中核病院169施設、小児地域医療センター533施設、小児地域支援病院57施設を含む、全国の小児医療機関1088施設とし、実態調査は2019年から2023年の5年間とした。
結果と考察
小児科区域の特定については、小児中核病院の95.5%、小児地域医療センターの77.6%、小児地域支援病院の70.0%、不明・該当なしの病院の50.0%で行われていた。小児科専用病棟は、小児中核病院の84.1%、小児地域医療センターの51.8%に設置されているものの、小児地域支援病院では40.0%(4/10施設)、不明・該当なしの病院では20.5%(9/44施設)の設置に留まっていた。このことより、小児患者が入院する際、小児中核病院と小児地域医療センターの多くで、大人と同じ区域に入院しないよう配慮されている一方、それ以外の施設では小児科区域の特定の推進が必要と思われた。
COVID-19拡大を受けて、小児医療機関の小児科病棟の稼働率低下と、時間内に小児科外来を受診する患者数が減少し、緩やかに回復傾向にあるものの、COVID-19が5類感染症に移行した2023年でも低値が持続していることが明らかになった。この傾向は、小児中核病院に比べ小児地域医療センターで顕著であった。また、小児地域医療センターの小児科医師数の中央値は7.0名と、小児中核病院の23.1名に比べ3分の1と少ない。
時間外の小児科外来受診患者数は、小児中核病院よりも小児地域医療センターの方が多く、COVID-19が5類感染症に移行後には、COVID-19拡大前に比べ、救急車による受診患者数が小児中核病院で1.2倍、小児地域医療センターで1.5倍に増加していた。この理由として、2020年以降のCOVID-19予防策の施行により感染症の罹患数全体が減少し集団免疫が低下したため、予防策解除後に反動で様々な感染症が増加したこと、保護者の小児感染症に対する経験が少なくなったため家庭看護力が低下し、軽症患者の時間外受診や救急車要請につながったことが考えられる。
小児中核病院のNICU稼働率は、調査期間中83.4-89.4%で推移し、継続的に低下傾向にある。また、小児地域医療センターのNICU稼働率は2020年に大きく低下したあと上昇傾向にあるものの、COVID-19拡大前には回復していない。この理由として、少子化の影響が最も大きいと考えられる。
2019年から2023年までの5年間で、小児医療機関の小児科医業収益は、COVID-19が拡大した2020年に低下した。小児中核病院の収益低下は約10%で回復も速やかであったのに対し、小児地域医療センターでの収益低下は約20%で、COVID-19の5類感染症移行後も収益低下が持続し回復していない。
これらより小児地域医療センターは、少ない医師数で入院を要しない軽症の時間外患者の対応を余儀なくされており、時間外の小児一次診療に対する小児地域医療センターの負担軽減と環境整備とともに、家庭看護力の醸成が必要であると考えられた。また小児地域医療センターでは入院患者数が減少し、病床の稼働率は低く医業収益も少ない。今後小児地域医療センターの病床数の見直しや、小児医療のさらなる集約化の検討が必要と考えられた。
小児中核病院では、全体の約90%の施設で医療的ケア児の定期外来診察や、急変時の入院に対応しているが、小児地域医療センターでは約75%、小児地域支援病院では約50%に留まっていた。このことは、医療的ケア児は、急性期に小児中核病院で治療されることが多く、退院後も治療を受けた中核病院で引き続きフォローされていることと、地域・自宅近隣の小児医療機関への移行が進んでいないことを反映している可能性がある。この理由として、小児地域医療センターや小児地域支援病院は、少ない小児科医師で時間外小児患者や救急患者に対応する必要があること、また医療的ケア児は専門性の高い基礎疾患を有する場合が多く、高い人的医療資源を必要とすること等から、医療的ケア児の診療を受け入れる余裕がないことが推測される。
結論
小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言を導くことを目的として全国実態調査を実施することにより、COVID-19拡大後の現在の問題点を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202421013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
少子化で出生数が減少し、子どもの成育における支援体制が求められる中、国内の小児医療体制の整備は重要な課題である。また、新型コロナウイルス感染症の影響で小児医療の実態は大きく変化し、ポストコロナの新たな医療体制の構築が求められている。本研究開発では、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言を導くことを目的に、令和6年3月に全国調査を行い小児医療体制の現状を明らかにするとともに課題を抽出した。
臨床的観点からの成果
少子化による子どもの数の減少、または新型コロナウイルス感染症の影響により新たな小児医療体制の構築が求められる中、全国調査を行い小児医療の実態と現状を明らかにした。本研究成果により、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言が導かれ、より充実した小児医療を提供できるようになると予想される。
ガイドライン等の開発
令和6年3月に全国調査を行い、小児医療体制の現状を明らかにするとともに課題を抽出した。本研究成果により、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言が導かれ、より充実した小児医療を提供できるようになると考える。本研究の報告書は広く社会に公表され、全国の医療機関が小児医療体制を整備する際の指針となるとともに、国が行う小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しの参考資料となる。
その他行政的観点からの成果
本研究事業では、小児科医師確保計画の見直しに向けた全国実態調査の実施、小児医療の継続性を維持するための医療経済的視点での検証、医療的ケア児への在宅医療支援体制の強化のための指標の開発の3点について研究を行った。これらの調査結果を解析することにより、小児科医師確保計画および第8次医療計画の中間見直しに向けた具体的指標の提供や提言が導かれた。
その他のインパクト
本研究成果は研究報告書としてまとめられ、広く社会に公表される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421013Z