持続可能な周産期医療と医療機関の役割分担を目的とした周産期医療圏の全国実態把握調査

文献情報

文献番号
202421012A
報告書区分
総括
研究課題名
持続可能な周産期医療と医療機関の役割分担を目的とした周産期医療圏の全国実態把握調査
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
村元 勤(長野市民病院 婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡利 英道(北海道大学 医学部)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 田中 太一郎(東邦大学 健康推進センター)
  • 齊藤 良玄(北海道大学 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,624,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生数減少とともに分娩取扱施設が減少する「自然な集約化」は不可避な課題であり、周産期医療体制維持には医療資源の適正な配分などによる計画的な集約化が今後必要な可能性がある。分娩取扱施設の現状および分布状況を調査し、二次医療圏における分娩取扱施設の分布状況、分娩取扱施設への妊産婦の交通アクセス状況について調査する。分娩取扱医療機関数の減少に伴い、従来ハイリスク妊産婦を担当していた基幹施設にローリスクの妊産婦も集まる「分娩の集約化」が進むと、基幹施設で勤務する医師の業務負担が増加する可能性があり、基幹施設で勤務する医師の勤務状況を調査し、分娩取扱医療機関間での役割分担(オープン・セミオープンシステムの活用)や、機関内での役割分担(助産師外来や院内助産の活用)など、基幹病院の医師の業務負担を軽減しうる取組の活用状況を調査する。
研究方法
妊産婦の分娩取扱施設への交通アクセスについて、国勢調査の0歳から4歳人口を使用し、推定出生地から医療機関への所要時間を地理情報システムを利用し計測する。基幹施設にwebアンケート調査し、医療機関の業務負担の程度やオープンシステム・セミオープンシステム、助産師外来や院内助産の活用状況を調査する。
結果と考察
分娩取扱施設へのアクセス時間別の出生数カバー率は、全国平均で15分未満平均84.8%、30分未満98.1%、60分未満99.5%と推計された。基幹施設においては助産師外来は6-70%程度の施設で採用されていた。院内助産やオープンシステム・セミオープンシステムについては活用している施設数が少なかった。基幹施設にはハイリスク妊産婦の取り扱いが多く助産師外来以外は活用が難しい可能性が考えられた。
結論
妊産婦の医療機関へのアクセスについて、推定出生地をもとに地理情報システムを利用し全国の分娩取扱施設のカバー率について検証した。最寄り分娩取扱施設までのアクセス時間が60分以上を要する妊産婦は、居住地と同一都府県内の施設に限定した場合には全国平均で0.45%(域内推定全出生数2410人)、都府県境を越える場合には平均0.38%(同2112人)と推計された。現在分娩取扱施設への交通アクセスが悪い妊産婦(居住地から分娩取扱施設への距離が遠い「遠隔妊産婦」)に対して、医療機関受診時の交通費・宿泊費助成などの財政的な支援がある。すべての妊産婦が分娩取扱施設へ容易にアクセスできるのが望ましいが、分娩取扱施設数が減少する中では施設を新たに設置することが困難であり、財政的案支援が有効であると考えられた。本研究は今後の妊産婦の移動の支援のあり方について施策を検討する上での判断材料になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
202421012B
報告書区分
総合
研究課題名
持続可能な周産期医療と医療機関の役割分担を目的とした周産期医療圏の全国実態把握調査
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
村元 勤(長野市民病院 婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡利 英道(北海道大学 医学部)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和大学 医学部産婦人科学講座)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 田中 太一郎(東邦大学 健康推進センター)
  • 齊藤 良玄(北海道大学 産婦人科)
  • 上條 恭佑(長野市民病院 婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生数減少とともに分娩取扱施設が減少する「自然な集約化」は不可避な課題であり、周産期医療体制維持には医療資源の適正な配分などによる計画的な集約化が今後必要な可能性がある。本研究では分娩取扱施設の現状および分布状況を調査し、二次医療圏における分娩取扱施設の分布状況、分娩取扱施設への妊産婦の交通アクセス状況について調査を行う。また、分娩取扱医療機関数の減少に伴い、従来ハイリスク妊産婦を担当していた基幹施設にローリスクの妊産婦も集まる「分娩の集約化」が進むと、基幹施設で勤務する医師の業務負担が増加する可能性があるため、基幹施設で勤務する医師の勤務状況を調査するとともに、分娩取扱医療機関間での役割分担(オープン・セミオープンシステムの活用)や、機関内での役割分担(助産師外来や院内助産の活用)など、基幹病院の医師の業務負担を軽減しうる取組の活用状況について調査する。
研究方法
周産期医療圏の実態調査として全国335の全二次医療圏を対象に、二次医療圏の分布と周産期医療圏の不一致の有無、二次医療圏内の拠点病院の有無、複数の二次医療圏が周産期医療圏を形成する事例を調査し、結果を各都道府県の二次医療圏毎に集計する。周産期母子医療センター408か所(総合112か所、地域296か所、2023年4月1日現在)を対象に、質問票を郵送し基幹病院に勤務する産婦人科および新生児科医師の業務分担状況を調査する。セミオープンシステム・オープンシステム採用の有無、院内ガイドライン(提携先との搬送ルールや妊婦健診のルール)の有無と内容についても調査する。分娩取扱施設データベースを利用し、地理情報システムにより全国の妊産婦の分娩取扱施設への交通アクセスについて、アクセス所要時間ごとに区分(15分以上30分未満、30分以上60分未満、60分以上)し、各都道府県で結果を集計する。
結果と考察
2023年6月1日時点で分娩取扱のある医療機関(病院および診療所)は1981か所あり、周産期母子医療センター(以下、基幹病院)は408か所(総合周産期医療センター、以下総合112か所、地域周産期医療センター、以下地域296か所、2023年4月1日時点)であった。二次医療圏(全335か所)のうち分娩取扱施設が存在しない圏域は17か所で、二次医療圏内に基幹病院が存在するのは全体の68.1%(228/335)であった。
アンケート調査の結果から、分娩取扱施設の減少に伴い基幹施設への業務負担が増加している傾向がみられた。助産師外来の開設は総合77.8%、地域63.6%と導入している施設を多く認め、助産師外来の積極的な活用により外来担当医の業務負担を軽減する余地があると考えられた。一方、院内助産を導入している施設は総合29.6%、地域16.3%にとどまっており、ハイリスク妊産婦への対応が必要な基幹施設では院内助産の活用が限定的である可能性が考えられた。基幹施設においてセミオープンおよびオープンシステムのいずれか一方でも採用している施設は、総合37.0%(20/54)、地域37.2%(48/129)にとどまっていた。オープンシステム・セミオープンシステムの活用により施設間の業務負担のリバランス効果や基幹病院の業務負担を軽減する効果が指摘されているが、システムの導入には周産期医療圏内に基幹病院以外に妊婦健診や分娩を取扱う施設が存在する必要があるが、同一医療圏内に基幹病院の他に妊婦健診・分娩取扱がある医療機関数が少なく、システムの活用自体が難しいケースも考えられた。
分娩取扱施設へのアクセス時間別の出生数カバー率は、全国平均で15分未満平均84.8%、30分未満98.1%、60分未満99.5%と推計された。
結論
分娩医療機関の減少に伴い、分娩取扱医療機関が存在しない二次医療圏が17か所に増加し基幹施設がない二次医療圏が約1/3(335か所中に107か所)あり、基幹病院を中心とした周産期医療圏と二次医療圏の不一致がみられた。複数の二次医療圏を基幹病院がカバーしており、今後分娩取扱医療機関の減少に伴い基幹病院の業務負担の増加の可能性もある。基幹病院の業務負担を軽減するための取組(オープン・セミオープンシステムや院内助産・助産師外来の活用)が有用と考えられるが、基幹施設の立地状況や周囲の分娩取扱施設の有無などにより導入の際に配慮が必要である。妊産婦の分娩医療機関へのアクセスについて取扱施設の減少に伴い悪化の可能性があり、引き続き受診の際の経済的支援や宿泊支援など、支援のあり方について検討を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2025-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202421012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は分娩取扱施設が減少していく中で、分娩医療機関へのアクセス状況について全国を対象に行った研究であり、他に同種の全国規模の調査はなく学術的に貴重な研究である。本研究により、全国の妊産婦の分娩取扱施設への交通アクセスの状況が明らかにされ、学術的意義のある研究である。本研究の一部は学会発表・論文化された。
臨床的観点からの成果
全国の周産期母子医療センターでの産婦人科医・小児科医の業務負担の状況が本研究で明らかになった。本研究成果は今後基幹施設への集約化を検討する際に、基幹施設での業務負担を軽減するための取り組みについて示唆を与えるものである。
ガイドライン等の開発
母体搬送やオープンシステム・セミオープンシステムの活用のためのガイドライン作成は断念したが、本研究結果を踏まえ助産師外来や院内助産の活用についてのガイドライン策定を引き続き目指していく。
その他行政的観点からの成果
最寄り分娩取扱施設までのアクセス時間が60分以上を要する妊産婦は、居住地と同一都府県内の施設に限定した場合には全国平均で0.45%(域内推定全出生数2410人)、都府県境を越える場合には平均0.38%(同2112人)と推計された。遠隔妊産婦を対象にした妊産婦の移動の支援のあり方について施策を検討する上での判断材料になることが期待される。
その他のインパクト
特許や実用新案の登録などはなし。全国の妊産婦の交通アクセスの状況については、現在論文を作成しており、令和7年中に発表となる見込みである。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
村元勤 齊藤良玄
全国分娩取扱施設の現状調査と周産期医療圏での分布, 周産期医療を取り巻く課題について
長野市民病院医学雑誌 , 9 , 1-3  (2024)

公開日・更新日

公開日
2025-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,834,000円
(2)補助金確定額
2,834,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 122,393円
人件費・謝金 0円
旅費 57,110円
その他 2,445,157円
間接経費 210,000円
合計 2,834,660円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-06-03
更新日
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