文献情報
文献番号
202421008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 柏木 聖代(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
- 黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
- 森岡 典子(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科ヘルスサービスリサーチ看護学)
- 浜田 将太(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
- 八木 怜奈(田口 怜奈)(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター)
- 城戸 崇裕(筑波大学 附属病院小児科)
- 孫 瑜(ソン ユ)(筑波大学 医学医療系)
- 羽成 恭子(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,233,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の在宅医療の需要が増加する中、地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築が重要となる。本研究班では、第8次医療計画の見直しに向けた在宅医療の課題や指標例等を検討するための基礎資料を得ることを目的とし、令和6年度は以下の3つの課題に対して8件の研究を行った。
研究方法
各課題の研究テーマを示す(詳細な方法は省略する)。
【課題1・地域別の課題の検討】
研究1 地域別の自宅への訪問診療利用者の特徴に関する検討:NDB・介護DB突合データを用いた分析
【課題 2・指標等を用いた実態の把握】
研究2 要介護高齢者の在宅医療利用別の要介護者・家族介護者の特徴および主観的アウトカム:自治体の医療介護レセプトデータと質問紙調査の突合データを用いた検討
研究3 入院・施設入所患者の退院・退所後の移行先と自宅退院患者の再入院:自治体の医療・介護レセプトデータを活用した分析
研究4 高齢要介護認定者の在宅医療における訪問サービス利用者の経時的・地域横断的分析
研究5 医療用麻薬や中心静脈栄養製剤を処方されている在宅医療受療者における訪問薬剤管理指導等についての検討:県の医療・介護保険レセプト突合データを用いた分析
【課題 3・様々な在宅医療に関する情報収集】
研究6 訪問診療を実施している医師を対象とした小児への在宅医療についてのアンケート調査:成人と小児の在宅医療の違いに着目した分析
研究7 諸外国における安楽死・医師による自殺幇助に関する現状およびアジアにおける人生の最終段階における意思決定支援の取り組み
研究8 COVID-19パンデミック前後における自宅への新規訪問診療導入者とその転帰:NDBデータを用いた検討
【課題1・地域別の課題の検討】
研究1 地域別の自宅への訪問診療利用者の特徴に関する検討:NDB・介護DB突合データを用いた分析
【課題 2・指標等を用いた実態の把握】
研究2 要介護高齢者の在宅医療利用別の要介護者・家族介護者の特徴および主観的アウトカム:自治体の医療介護レセプトデータと質問紙調査の突合データを用いた検討
研究3 入院・施設入所患者の退院・退所後の移行先と自宅退院患者の再入院:自治体の医療・介護レセプトデータを活用した分析
研究4 高齢要介護認定者の在宅医療における訪問サービス利用者の経時的・地域横断的分析
研究5 医療用麻薬や中心静脈栄養製剤を処方されている在宅医療受療者における訪問薬剤管理指導等についての検討:県の医療・介護保険レセプト突合データを用いた分析
【課題 3・様々な在宅医療に関する情報収集】
研究6 訪問診療を実施している医師を対象とした小児への在宅医療についてのアンケート調査:成人と小児の在宅医療の違いに着目した分析
研究7 諸外国における安楽死・医師による自殺幇助に関する現状およびアジアにおける人生の最終段階における意思決定支援の取り組み
研究8 COVID-19パンデミック前後における自宅への新規訪問診療導入者とその転帰:NDBデータを用いた検討
結果と考察
【課題1・地域別の課題の検討】
自宅への訪問診療を受ける患者の特徴として、内科疾患や整形外科疾患の病名があった割合は西日本地域で多い一方、東北地方では脳血管疾患や要介護4-5の患者割合、訪問看護の利用割合が高かった。半年以内の入院率は西日本地域で高い一方、在宅死率は東日本地域で高い傾向が見られた。これらのアウトカムは病床数と相関があり、病床数が多い地域では入院率が高く、死亡率が低い傾向があった。このような地域による特徴の違いを認識し、地域の課題に合わせた在宅医療提供体制を構築することの重要性が示唆された。
【課題2・指標等を用いた実態の把握】
研究2では訪問診療を利用する患者の家族介護者は介護時間が長く、QOLや幸福度も低いことが示されたことから、この群には特に留意するとともに、家族介護者の主観的アウトカムも重要な指標になると考えられた。
研究3では病院から自宅退院後に再入院をした患者のうち、退院後30日以内の入院は13.4%であったことが示された。今後詳細分析を行う予定であるが、「退院後30日以内の再入院」は退院支援の指標として有用である可能性が示された。
研究4では、つくば市の訪問診療と訪問看護の利用者割合の経時的推移は全体と地区別の中央値の推移で違いが見られたことから、指標として評価する際には、全体だけでなく、地区別の確認が重要であることが示唆された。
研究5では茨城県で麻薬やTPN製剤や処方されている在宅医療受療者のうち訪問薬剤管理指導等の算定があったのは麻薬:349人(22.9%)、TPN製剤:92人(41.3%)であった。本結果から、これらを指標として用いる際には、県レベルで分析する必要があると考えられた。
【課題 3・様々な在宅医療に関する情報収集】
研究6では機能強化型在宅療養支援診療所への勤務、小児科専門医資格、入院先の確保困難がないこと、ACPの実践、重症心身障害児施設での診療経験といった項目が小児在宅医療が「うまくいっている」医師の主観と関連していたことから、入院先の確保体制やACPの推進が重要であると考えられた。
研究7からは各国の安楽死の法整備の背景には、医療技術の発展、患者の権利意識の向上などが存在していることが示された。
研究8では自宅への訪問診療導入後3か月以内の入院割合は減少した一方で在宅看取り割合は増加傾向であったが、その変化は特にがん患者で大きかったことが示された。特異的な状況では、患者層によって療養場所のニーズの変化が異なる可能性を認識し、医療資源を効果的に配分する必要があると考えられた。
自宅への訪問診療を受ける患者の特徴として、内科疾患や整形外科疾患の病名があった割合は西日本地域で多い一方、東北地方では脳血管疾患や要介護4-5の患者割合、訪問看護の利用割合が高かった。半年以内の入院率は西日本地域で高い一方、在宅死率は東日本地域で高い傾向が見られた。これらのアウトカムは病床数と相関があり、病床数が多い地域では入院率が高く、死亡率が低い傾向があった。このような地域による特徴の違いを認識し、地域の課題に合わせた在宅医療提供体制を構築することの重要性が示唆された。
【課題2・指標等を用いた実態の把握】
研究2では訪問診療を利用する患者の家族介護者は介護時間が長く、QOLや幸福度も低いことが示されたことから、この群には特に留意するとともに、家族介護者の主観的アウトカムも重要な指標になると考えられた。
研究3では病院から自宅退院後に再入院をした患者のうち、退院後30日以内の入院は13.4%であったことが示された。今後詳細分析を行う予定であるが、「退院後30日以内の再入院」は退院支援の指標として有用である可能性が示された。
研究4では、つくば市の訪問診療と訪問看護の利用者割合の経時的推移は全体と地区別の中央値の推移で違いが見られたことから、指標として評価する際には、全体だけでなく、地区別の確認が重要であることが示唆された。
研究5では茨城県で麻薬やTPN製剤や処方されている在宅医療受療者のうち訪問薬剤管理指導等の算定があったのは麻薬:349人(22.9%)、TPN製剤:92人(41.3%)であった。本結果から、これらを指標として用いる際には、県レベルで分析する必要があると考えられた。
【課題 3・様々な在宅医療に関する情報収集】
研究6では機能強化型在宅療養支援診療所への勤務、小児科専門医資格、入院先の確保困難がないこと、ACPの実践、重症心身障害児施設での診療経験といった項目が小児在宅医療が「うまくいっている」医師の主観と関連していたことから、入院先の確保体制やACPの推進が重要であると考えられた。
研究7からは各国の安楽死の法整備の背景には、医療技術の発展、患者の権利意識の向上などが存在していることが示された。
研究8では自宅への訪問診療導入後3か月以内の入院割合は減少した一方で在宅看取り割合は増加傾向であったが、その変化は特にがん患者で大きかったことが示された。特異的な状況では、患者層によって療養場所のニーズの変化が異なる可能性を認識し、医療資源を効果的に配分する必要があると考えられた。
結論
課題1においては訪問診療受療者の特徴やアウトカムの地域差が明らかとなり、医療資源との関連が示唆された。課題2、3では様々な対象や状況における訪問系サービスの実態が示され、指標を扱う際の規模や注意点も明らかとなった。さらに課題3の小児在宅医療や諸外国のACP等の情報収集からは、今後の我が国の在宅医療が目指すべき方向性を検討できた。これらの結果は地域の特性や状況に応じた在宅医療提供体制を構築するための基礎資料になり得ると考える。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
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