文献情報
文献番号
202421007A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
福生 泰久(公益社団法人日本精神科病院協会 DPAT事務局)
研究分担者(所属機関)
- 太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
- 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,124,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2013 年に、災害発生直後より精神科医療ニーズに対応できるチーム(災害派遣精神医療チーム:DPAT)が発足し、2023 年4月現在、先遣隊は46 都道府県106 医療機関が、各自治体が整備する都道府県DPAT 隊員も2021 年末時点で、3,654 人まで整備されている。しかし、被災自治体やDPAT 派遣元の自治体、ほかの支援チームからの客観的な評価は十分であるとは言い難い。また、全国のDPAT 体制整備は進んできているが、自治体毎に差が認められる現状もある。さらに、今後想定される南海トラフ地震を考慮すると、現在のDPAT 体制は脆弱であると言わざるを得ない。
本研究班では、DPAT 体制整備が乏しい都道府県の対策として、近隣ブロック体制整備について検討を行い、南海トラフ地震を想定した訓練において課題を抽出しつつ、過去の災害時のデータ解析等を行った。さらに他の支援チームへの調査等を行うことで、新たなDPAT の課題や機能、お
よびその効果を検証し、DPAT 事務局が主催する研修に反映されるよう、提案を行うことを目的とする。
本研究班では、DPAT 体制整備が乏しい都道府県の対策として、近隣ブロック体制整備について検討を行い、南海トラフ地震を想定した訓練において課題を抽出しつつ、過去の災害時のデータ解析等を行った。さらに他の支援チームへの調査等を行うことで、新たなDPAT の課題や機能、お
よびその効果を検証し、DPAT 事務局が主催する研修に反映されるよう、提案を行うことを目的とする。
研究方法
今年度研究期間内では以下の研究を実施した。
・南海トラフ地震の災害メンタルヘルスケアニーズ推定のため、世界の災害時精神支援活動報告を調査し、AI を活用した機械学習向けのデータベースを作成・改善した。
・令和6 年能登半島地震のDPAT 活動記録を収集し、熊本地震・北海道胆振東部地震の記録と比較分析して必要な精神支援を推測した。
・熊本県・石川県の関係機関にヒアリング調査を実施し、その結果を質的に分析した。
・令和5・6 年度DMAT 地方ブロック訓練幹事都道府県のDPAT 担当課を対象とした、アンケート調査を実施した。
・令和5 年度の調査に協力いただいた自治体に追加インタビュー調査を実施した。
・令和5 年度大規模地震時活動訓練の結果をもとに、令和6 年度も被災自治体・DPAT 隊員を対象に調査した。
・日赤こころのケア指導者向けのアンケートを作成・送付し、研究班で回答を解析した。
・南海トラフ地震の災害メンタルヘルスケアニーズ推定のため、世界の災害時精神支援活動報告を調査し、AI を活用した機械学習向けのデータベースを作成・改善した。
・令和6 年能登半島地震のDPAT 活動記録を収集し、熊本地震・北海道胆振東部地震の記録と比較分析して必要な精神支援を推測した。
・熊本県・石川県の関係機関にヒアリング調査を実施し、その結果を質的に分析した。
・令和5・6 年度DMAT 地方ブロック訓練幹事都道府県のDPAT 担当課を対象とした、アンケート調査を実施した。
・令和5 年度の調査に協力いただいた自治体に追加インタビュー調査を実施した。
・令和5 年度大規模地震時活動訓練の結果をもとに、令和6 年度も被災自治体・DPAT 隊員を対象に調査した。
・日赤こころのケア指導者向けのアンケートを作成・送付し、研究班で回答を解析した。
結果と考察
1.DPAT 間の連携体制の強化
DPAT 間の更なる連携強化のため、DMAT のブロック訓練に参加自治体に対し、アンケート調査を行った。その結果、DMAT ブロック訓練の実施主体の近隣自治体へ参加を促すことをしている自治体はわずか1自治体にとどまった。参加することのメリットとして、関係部署との連携がスムーズになったという声が多数ある一方で、予算がなく、訓練に制限がかかっているとの声が多くあり、DMAT 同様DPAT にも国庫補助が必要であるとの声が、全自治体からあがった。
2.他の支援チームとの連携体制の強化
日本赤十字社こころのケア指導者へのアンケートから、日赤こころのケア班との連携については、一定の評価は得られつつも、課題や求められる活動内容について意見をいただいた。さらに、支援者支援時に関して産業医によるチーム(DOHAT)と連携において、具体的な連携体制案を提示していただいた。
3.南海トラフ地震における課題の抽出と対策の提案
令和6年度大規模地震時医療活動訓練について、被災想定自治体および研究協力者と連携し、訓練内容を検討し、本訓練に参加した自治体担当者、DPAT 隊員に対してアンケート調査を実施した。DPAT 調整本部、およびDPAT 活動拠点本部に必要な人員の算出と、病院避難時等における必要DPAT 隊数の算出を行った。さらに、能登半島地震を対象としてDPAT 診療記録の分析および、世界の災害時精神支援活動報告を渉猟し、各災害の種類・規模と被災地域のメンタルヘルス症状のデータベースへの追加・精査、被災国を日本に絞り災害時のデータ解析を行った。その結果、DPAT 活動における中長期的なメンタルヘルス支援の必要性や、高齢化が進んでいる地域では、災害後における認知症の対応、南海トラフ地震におけるトラウマ関連症状の
有病者をおおよそ示すことが出来た。
DPAT 間の更なる連携強化のため、DMAT のブロック訓練に参加自治体に対し、アンケート調査を行った。その結果、DMAT ブロック訓練の実施主体の近隣自治体へ参加を促すことをしている自治体はわずか1自治体にとどまった。参加することのメリットとして、関係部署との連携がスムーズになったという声が多数ある一方で、予算がなく、訓練に制限がかかっているとの声が多くあり、DMAT 同様DPAT にも国庫補助が必要であるとの声が、全自治体からあがった。
2.他の支援チームとの連携体制の強化
日本赤十字社こころのケア指導者へのアンケートから、日赤こころのケア班との連携については、一定の評価は得られつつも、課題や求められる活動内容について意見をいただいた。さらに、支援者支援時に関して産業医によるチーム(DOHAT)と連携において、具体的な連携体制案を提示していただいた。
3.南海トラフ地震における課題の抽出と対策の提案
令和6年度大規模地震時医療活動訓練について、被災想定自治体および研究協力者と連携し、訓練内容を検討し、本訓練に参加した自治体担当者、DPAT 隊員に対してアンケート調査を実施した。DPAT 調整本部、およびDPAT 活動拠点本部に必要な人員の算出と、病院避難時等における必要DPAT 隊数の算出を行った。さらに、能登半島地震を対象としてDPAT 診療記録の分析および、世界の災害時精神支援活動報告を渉猟し、各災害の種類・規模と被災地域のメンタルヘルス症状のデータベースへの追加・精査、被災国を日本に絞り災害時のデータ解析を行った。その結果、DPAT 活動における中長期的なメンタルヘルス支援の必要性や、高齢化が進んでいる地域では、災害後における認知症の対応、南海トラフ地震におけるトラウマ関連症状の
有病者をおおよそ示すことが出来た。
結論
本研究によって、隣県とのDMAT ブロック訓練の現状と課題の検討及び他の支援チームから見たDPAT の評価及び連携に関するニーズについて検討された。DMAT や日赤こころのケア班からは、既存の活動内容での評価であったが、支援者支援体制におけるDPAT の役割等については、踏み込んだ内容について議論が展開された。また、大規模地震時医療活動訓練時での調査及び、過去の災害時支援から
得られたデータ解析から、激甚災害時におけるDPAT 必要隊数の概数のほか、災害時に対応すべき精神的な症状、疾病群も推定された。最終年度は、これらの結果を精査しつつ、具体的に必要な対策についても含め、議論していきたい。
得られたデータ解析から、激甚災害時におけるDPAT 必要隊数の概数のほか、災害時に対応すべき精神的な症状、疾病群も推定された。最終年度は、これらの結果を精査しつつ、具体的に必要な対策についても含め、議論していきたい。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
-