文献情報
文献番号
202421006A
報告書区分
総括
研究課題名
DPCとタイムスタディを用いた臓器専門医のプライマリ・ケア診療可視化に基づく医師偏在指標の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
上原 孝紀(千葉大学医学部附属病院 総合診療科)
研究分担者(所属機関)
- 小林 美亜(山梨大学大学院総合研究部医学域 臨床医学系(附属病院 病院経営管理部))
- 塚田 弥生(哲翁 弥生)(日本医科大学 医学部)
- 中部 貴央(東京大学 医学部附属病院)
- 大平 善之(聖マリアンナ医科大学 総合診療内科学)
- 太田 光泰(横浜市立大学 医学部 医学教育学・総合診療医学)
- 和足 孝之(京都大学 医学部附属病院 総合臨床教育・研修センター)
- 横川 大樹(千葉大学医学部附属病院 総合診療科)
- 大坪 徹也(秋田大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,018,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
【目的】
本研究の目的は、令和6年度から開始された第8次(前期)医師確保計画の進捗状況およびその効果をモニタリング・評価し、医師の地域偏在・診療科偏在の是正に資する実証的エビデンスを蓄積することである。具体的には以下の5点を目指す。
1, 2. 大学病院における日本型ホスピタリストの主治医機能対応可能性の可視化(単施設および42の国立大学病院を対象)
3. 臓器別専門医が担う業務構造の定量的把握(タイムスタディ)
4. 義務年限医師の地域貢献実態の明確化
5. 医師届出票を用いた地域別・診療科々の医師偏在構造の分析
6. 診療科別地域偏在に関する全国規模の医師意識調査の実施
本研究の目的は、令和6年度から開始された第8次(前期)医師確保計画の進捗状況およびその効果をモニタリング・評価し、医師の地域偏在・診療科偏在の是正に資する実証的エビデンスを蓄積することである。具体的には以下の5点を目指す。
1, 2. 大学病院における日本型ホスピタリストの主治医機能対応可能性の可視化(単施設および42の国立大学病院を対象)
3. 臓器別専門医が担う業務構造の定量的把握(タイムスタディ)
4. 義務年限医師の地域貢献実態の明確化
5. 医師届出票を用いた地域別・診療科々の医師偏在構造の分析
6. 診療科別地域偏在に関する全国規模の医師意識調査の実施
研究方法
本年度は、以下の5つの分担研究を実施した。
1. DPCデータを用いた日本型ホスピタリストの主治医機能代替可能性の可視化(千葉大学病院単施設分析)
千葉大学病院を対象に、総合診療医3名による症例評価とDPCコードに基づく分類を行い、日本型ホスピタリストが主治医機能を代替可能と判断される入院患者の構造的実態を分析した。
2. 全国42国立大学病院における多施設DPCデータ解析
上記の符号付けモデルを全国42の国立大学病院のDPCデータに適用し、地域や大学の特性ごとの診療構造を比較・分析した。
3. 電子タグを用いた医師の院内行動分析
千葉大学医学部附属病院において、医師の年代・職位・専門領域別に病棟、カンファレンス、処置室など院内各エリアでの1分単位の滞在時間を記録し、領域横断的業務を含む業務内容の実態を可視化した。
4. 義務年限を有する医師の地域勤務実態分析(全国悉皆横断調査)
全都道府県の医師確保対策担当部署を通じて、義務年限を有する医師の勤務実績を調査し、都道府県別の勤務状況および医師の背景因子との関連について多変量解析を行った。
5. 令和4年度医師届出票による地域・診療科偏在構造の把握
医師届出票に記載された343,275名の全医師データを用い、都道府県および二次医療圏単位での医師配置傾向や専門医数との関係性分析した。
1. DPCデータを用いた日本型ホスピタリストの主治医機能代替可能性の可視化(千葉大学病院単施設分析)
千葉大学病院を対象に、総合診療医3名による症例評価とDPCコードに基づく分類を行い、日本型ホスピタリストが主治医機能を代替可能と判断される入院患者の構造的実態を分析した。
2. 全国42国立大学病院における多施設DPCデータ解析
上記の符号付けモデルを全国42の国立大学病院のDPCデータに適用し、地域や大学の特性ごとの診療構造を比較・分析した。
3. 電子タグを用いた医師の院内行動分析
千葉大学医学部附属病院において、医師の年代・職位・専門領域別に病棟、カンファレンス、処置室など院内各エリアでの1分単位の滞在時間を記録し、領域横断的業務を含む業務内容の実態を可視化した。
4. 義務年限を有する医師の地域勤務実態分析(全国悉皆横断調査)
全都道府県の医師確保対策担当部署を通じて、義務年限を有する医師の勤務実績を調査し、都道府県別の勤務状況および医師の背景因子との関連について多変量解析を行った。
5. 令和4年度医師届出票による地域・診療科偏在構造の把握
医師届出票に記載された343,275名の全医師データを用い、都道府県および二次医療圏単位での医師配置傾向や専門医数との関係性分析した。
結果と考察
研究1・2:日本型ホスピタリストが主治医機能を担えると評価された症例は、千葉大学病院で47.5%、国立大学病院全体でも46.7%に上った。内科系・非手術症例に対応可能性が高く、大学の属性や立地に関わらず共通傾向が認められた。
研究3:院内滞在時間のうち、病棟やカンファレンスルーム等、領域横断的業務への時間配分が多く、特に若手医師でその傾向が顕著であった。
研究4:義務年限を有する医師は、年間平均5か月程度医師不足地域に勤務しており、その傾向は自治医大卒業生や内科・総合診療科などに強く見られた。
研究5:届出医師の配置には都道府県および二次医療圏レベルで有意な偏在が存在し、地域枠等の従事要件に関する記載制度や専門医制度との乖離も明らかとなった。
研究3:院内滞在時間のうち、病棟やカンファレンスルーム等、領域横断的業務への時間配分が多く、特に若手医師でその傾向が顕著であった。
研究4:義務年限を有する医師は、年間平均5か月程度医師不足地域に勤務しており、その傾向は自治医大卒業生や内科・総合診療科などに強く見られた。
研究5:届出医師の配置には都道府県および二次医療圏レベルで有意な偏在が存在し、地域枠等の従事要件に関する記載制度や専門医制度との乖離も明らかとなった。
結論
本研究により、大学病院すなわち高度急性期医療機関においても、日本型ホスピタリストが主治医機能を代替しうる入院患者が全体の約半数に及ぶことが明らかとなり、領域横断的な診療に関するタスクシフト・タスクシェアの現実的な可能性が示された。とりわけ、高齢者や慢性疾患を有する患者など、高度急性期医療の枠組みでは捉えきれない医療ニーズに対して、効率的かつ総合的・継続的な入院管理を担う人材およびチームの必要性が浮き彫りとなった。
さらに、電子タグによる行動分析により、臓器別専門領域に所属する若手医師が病棟業務やチーム医療に多くの時間を費やしている実態が明らかとなり、現行の医療体制において臓器別専門医が領域横断的業務を広く担っている状況が可視化された。これらの結果は、日本型ホスピタリストの定義と運用、そして医師間の業務負担の最適化が、持続可能な医療提供体制の構築に不可欠であることを示唆している。
また、義務年限を有する医師の勤務実態調査を通じて、地域枠・自治医科大学制度が医師不足地域の医療提供体制に一定の貢献を果たしている一方で、制度単独では地域偏在の根本的解決には至っておらず、今後の縦断的研究や包括的政策の必要性が示された。
加えて、医師届出票の分析からは、地域枠や従事要件に関する届出の不整合や、専門医制度の移行期における登録上の課題が明らかとなり、政策的・制度的な運用改善の必要性が認識された。
今後、令和7年度に予定されている全国規模の意識調査を通じて、医師自身の診療科選択や地域勤務に対する意識構造を明らかにし、医師の配置と専門性の最適化に資する実効性のある政策提言に向けた基盤を、さらに強化していく必要がある。
さらに、電子タグによる行動分析により、臓器別専門領域に所属する若手医師が病棟業務やチーム医療に多くの時間を費やしている実態が明らかとなり、現行の医療体制において臓器別専門医が領域横断的業務を広く担っている状況が可視化された。これらの結果は、日本型ホスピタリストの定義と運用、そして医師間の業務負担の最適化が、持続可能な医療提供体制の構築に不可欠であることを示唆している。
また、義務年限を有する医師の勤務実態調査を通じて、地域枠・自治医科大学制度が医師不足地域の医療提供体制に一定の貢献を果たしている一方で、制度単独では地域偏在の根本的解決には至っておらず、今後の縦断的研究や包括的政策の必要性が示された。
加えて、医師届出票の分析からは、地域枠や従事要件に関する届出の不整合や、専門医制度の移行期における登録上の課題が明らかとなり、政策的・制度的な運用改善の必要性が認識された。
今後、令和7年度に予定されている全国規模の意識調査を通じて、医師自身の診療科選択や地域勤務に対する意識構造を明らかにし、医師の配置と専門性の最適化に資する実効性のある政策提言に向けた基盤を、さらに強化していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2026-03-19
更新日
-