文献情報
文献番号
202421005A
報告書区分
総括
研究課題名
切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬剤師間の情報連携の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
溝神 文博(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
- 亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部)
- 水野 智博(藤田医科大学 医学部)
- 藤原 久登(昭和大学藤が丘病院 薬剤部)
- 島崎 良知(東京都健康長寿医療センター 薬剤科)
- 小島 太郎(東京大学大学院医学系研究科)
- 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域でのポリファーマシー対策において薬局では情報が少なく、病院との情報共有が重要である。退院時薬剤情報連携加算として情報提供に対する加算も認められたが、本加算は2021年で退院時薬剤情報管理指導料全体の3.8%と十分に情報提供されているとは言い難い。また、薬局からの処方見直し情報としてトレーシングレポートがあるが、この言葉は薬剤師間での用語であり、医師や多職種で全く認識されていないことが処方検討に少なからず影響を与えている。さらに病院薬剤部と薬局間の情報共有がほぼFAXであり電子的なやりとりが行われている施設はほとんどなく情報提供・活用の阻害となっている。
シームレスなポリファーマシー対策を実現するため、CGAを含む情報連携ツールの開発、用語検討およびその情報共有の仕組みを構築することを目的する。
シームレスなポリファーマシー対策を実現するため、CGAを含む情報連携ツールの開発、用語検討およびその情報共有の仕組みを構築することを目的する。
研究方法
1. 薬剤師間の情報連携ツールに関する網羅的調査(2023年度)
2. 薬剤師間および多職種との情報連携に関する実態把握(2023年度)
3. 薬剤師間の情報連携ツール案の開発(2023年度〜2024年度)
4. 薬剤師間の電子的情報連携の検討(2023年度〜2024年度)
5. 情報連携ツールの試験導入および効果検証(2024年度)
6. ツールの使用に関するガイド作成・周知(2024年度)
2. 薬剤師間および多職種との情報連携に関する実態把握(2023年度)
3. 薬剤師間の情報連携ツール案の開発(2023年度〜2024年度)
4. 薬剤師間の電子的情報連携の検討(2023年度〜2024年度)
5. 情報連携ツールの試験導入および効果検証(2024年度)
6. ツールの使用に関するガイド作成・周知(2024年度)
結果と考察
① 薬剤師間の情報連携ツール案の開発
従来の「薬剤管理サマリー」に代わり、より包括的な「薬物療法情報提供書」を開発した。本書は薬剤の管理にとどまらず、CGAを基に、認知機能、ADL、要介護度、栄養状態、生活環境、服薬管理体制など10項目を含み、多職種間の情報共有を促進する構成とした。急性期〜慢性期・在宅までの療養環境に応じて重点項目を変える設計で、処方変更の経過や中止薬の再開要否なども明示する。文書はPDF・Excel・FileMakerGo等の電子媒体で作成し、迅速な連携を目指す。情報源として「おくすり問診票」を活用し、薬剤師単独でなく医師、看護師、リハ職、栄養士など多職種の情報を集約する構造とした。
② 薬剤師間の電子的情報連携の検討
電子情報連携を見据え、556名(平均年齢60.0±13.5歳、男性59.7%)のデータを分析した。副作用歴34.9%、アレルギー歴40.6%、55.8%がOTCやサプリメントを使用し、61.3%がかかりつけ薬局を持つ。内服薬の平均数は7.6±5.0剤で、6剤以上の多剤併用者は59.9%。調剤は一包化14.7%、服薬管理にボックス等を使用する者は35.8%であった。薬剤調整希望者は127名(22.8%)で、うち40.9%が薬剤数の減少を希望し、特に多剤併用群では49.5%にのぼった。自覚症状は64.6%が有し、最も多かったのは浮動性めまい(20.3%)、他に口渇・便秘・眠気・もの忘れ等が確認され、薬物療法の見直しが必要な実態が明らかとなった。
③ 情報連携ツールの試験導入および効果検証、ツールの使用に関するガイド作成・周知
「薬物療法情報提供書」の作成ガイドとして、「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」を策定し、CGA項目(ADL、認知機能、栄養、社会的背景など)や処方変更の記録・情報共有の要点を明示した。各フェーズ(高度急性期〜慢性期)での記載項目の重点化や、服薬管理体制、多職種連携の具体的記述を含む。作成例や記載例も提示し、実用性を高めた。社会実装に向け、FileMaker Goで使用可能なアプリケーションを開発し、スマートフォンやタブレット上での記録・共有が可能となった。
従来の「薬剤管理サマリー」に代わり、より包括的な「薬物療法情報提供書」を開発した。本書は薬剤の管理にとどまらず、CGAを基に、認知機能、ADL、要介護度、栄養状態、生活環境、服薬管理体制など10項目を含み、多職種間の情報共有を促進する構成とした。急性期〜慢性期・在宅までの療養環境に応じて重点項目を変える設計で、処方変更の経過や中止薬の再開要否なども明示する。文書はPDF・Excel・FileMakerGo等の電子媒体で作成し、迅速な連携を目指す。情報源として「おくすり問診票」を活用し、薬剤師単独でなく医師、看護師、リハ職、栄養士など多職種の情報を集約する構造とした。
② 薬剤師間の電子的情報連携の検討
電子情報連携を見据え、556名(平均年齢60.0±13.5歳、男性59.7%)のデータを分析した。副作用歴34.9%、アレルギー歴40.6%、55.8%がOTCやサプリメントを使用し、61.3%がかかりつけ薬局を持つ。内服薬の平均数は7.6±5.0剤で、6剤以上の多剤併用者は59.9%。調剤は一包化14.7%、服薬管理にボックス等を使用する者は35.8%であった。薬剤調整希望者は127名(22.8%)で、うち40.9%が薬剤数の減少を希望し、特に多剤併用群では49.5%にのぼった。自覚症状は64.6%が有し、最も多かったのは浮動性めまい(20.3%)、他に口渇・便秘・眠気・もの忘れ等が確認され、薬物療法の見直しが必要な実態が明らかとなった。
③ 情報連携ツールの試験導入および効果検証、ツールの使用に関するガイド作成・周知
「薬物療法情報提供書」の作成ガイドとして、「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」を策定し、CGA項目(ADL、認知機能、栄養、社会的背景など)や処方変更の記録・情報共有の要点を明示した。各フェーズ(高度急性期〜慢性期)での記載項目の重点化や、服薬管理体制、多職種連携の具体的記述を含む。作成例や記載例も提示し、実用性を高めた。社会実装に向け、FileMaker Goで使用可能なアプリケーションを開発し、スマートフォンやタブレット上での記録・共有が可能となった。
結論
本研究では、「薬物療法情報提供書」および、作成・運用の手引きとして「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」を策定し、多職種連携や療養環境に応じた留意点を明示した。ガイドは、インターネット上で無料ダウンロードできるよう配慮を行った。
今後は、本情報提供書とガイドを医療現場へ普及させ、薬剤師を中心とした多職種連携を見据えたポリファーマシー対策の標準的ツールとして全国的に展開していく予定である。
今後は、本情報提供書とガイドを医療現場へ普及させ、薬剤師を中心とした多職種連携を見据えたポリファーマシー対策の標準的ツールとして全国的に展開していく予定である。
公開日・更新日
公開日
2025-06-12
更新日
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