将来の医療需要を踏まえた外来及び在宅医療の提供体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202421003A
報告書区分
総括
研究課題名
将来の医療需要を踏まえた外来及び在宅医療の提供体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 佐藤 拓也(東京大学医学部附属病院 救急・集中治療科)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,549,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動  研究分担者 明神大也   奈良県立医科大学(令和6年4月1日~令和6年9月15日)  →浜松医科大学(令和6年9月16日以降) 研究分担者から研究協力者への変更  研究分担者 町田宗仁 (令和6年7月5日)  

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、NDBやKDBといったレセプトデータ、介護DB、外来機能報告などを活用して、地域ごとの医療需要を推計し、効率的で効果的な入院外医療提供体制を検討することである。具体的に、高齢者人口の増加を見据えた在宅医療と介護保険サービスの整備において、COVID-19流行前後のリハビリテーション提供量の推移を分析し、将来予測を行う。また、奈良県をモデルに二次医療圏別での在宅患者アクセシビリティを調査する。外来医療に関しては、外来機能報告データを基に、紹介受診重点医療機関の関係を可視化し、機械学習モデルを構築する。さらに、過去二年度の調査による高齢患者の在宅医療移行の取り組みを、対象外施設にも適用できるかアンケート調査を実施し、入院外医療の機能分化と連携の方向性について政策提言を行う。
研究方法
① 在宅医療・介護保険サービス提供の実態と将来需要の検討(在宅医療班)
2018~2022年のNDBオープンデータを用いてリハビリテーション提供量を分析し、住民基本台帳の人口データと将来推計人口データを用いて2025~2050年のリハビリテーション需要を予測した。また、2019年度の奈良県KDBデータで、後期高齢者医療制度加入者の在宅患者の地理的アクセシビリティをArcGISを用いて算出した。
② 外来医療の実態と将来需要の検討(外来医療計画班)
外来機能報告と病床機能報告のデータを統合し、LightGBMを用いて紹介受診重点医療機関を予測するモデルを構築した。また、CT、MRI、PETの画像検査実施日と初診・再診日を集計し外来機能報告の定義の検証をおこなった。重点外来患者数については将来推計を実施した。
③ 効率的・効果的な入院外医療の提供体制の検討(入院外医療の提供体制班)
在宅療養支援病院を対象にアンケートを実施して、入院から在宅医療への移行の現状を調査した。
結果と考察
① 在宅医療班
COVID-19流行により外来リハビリの提供量が減少した。特に影響を受けたのは運動器リハビリで、脳血管や廃用症候群リハビリも減少していた。この減少は2022年度にはCOVID-19流行前の水準にほぼ戻った。訪問診療のアクセシビリティには地域差があり、過疎医療圏では16km以上の移動が多かった。COVID-19によりリハビリ提供に短期的な影響が出たが、長期的な供給回復が見られた。過疎地域ではサービスのアクセシビリティ改善が必要である。
② 外来医療計画班
機械学習モデルによって、大多数の紹介受診重点医療機関が予測可能であることが分かったが、約14%は地域的な事情により異なるパターンを示した。検査(CT、MRI、PET)は多くが外来日以外に行われ、直後の再診と関連している。重点外来は高齢化の影響で総数として減少傾向にあるが、受療率の高い年齢層ではしばらく維持される見込みである。
③ 入院外医療の提供体制班
調査する施設の約7割は在宅復帰支援を行っており、職種間の連携が重要であることが確認された。半数以上の施設で退院後の療養意向を早期に患者家族に尋ね、在宅医療担当医師の募集では民間の人材派遣が多用されている。多くの医療機関が往診及び実地研修の機会を希求していた。
結論
在宅医療班: COVID-19の影響により過去にリハビリ提供量の変化があり、地理的なアクセシビリティにも課題がある。今後、過疎地域での改善が必要である。
外来医療計画班: 外来機能報告データに基づく予測モデルは有効であり、CT、MRI、PET検査の実施状況も示唆に富む。重点外来は高齢化を加味した持続可能な医療提供に着目する必要がある。
医療提供体制班: 高齢患者の在宅移行を円滑に進めるには、職種間の連携強化と在宅医療への理解が不可欠である。実践を通じた医師の育成が求められる。
本研究により、今後の医療政策がより効率的で質の高い体制を築くための基礎資料となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
202421003B
報告書区分
総合
研究課題名
将来の医療需要を踏まえた外来及び在宅医療の提供体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 佐藤 拓也(東京大学医学部附属病院 救急・集中治療科)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 柿沼 倫弘(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動  研究分担者 明神大也   奈良県立医科大学(令和6年4月1日~令和6年9月15日)  →浜松医科大学(令和6年9月16日以降) 研究分担者から研究協力者への変更  研究分担者 町田宗仁 (令和6年7月5日)  

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、在宅医療と外来医療においてNDB・KDB等のレセプトデータや介護DB、外来機能報告等を用いて、各地域における医療需要を推計し、効率的かつ効果的な入院外医療の提供体制について検討を行うことを目的とする。
研究方法
本研究班は3つの分担班に分けて研究を進め、班会議を2回開催し、研究の進捗状況の管理、調整を行いながら進めた。
結果と考察
① 在宅医療・介護保険サービス提供の実態と将来需要の検討(在宅医療班)
高齢社会において欠かすことのできない重要なサービスであるリハビリテーションの実態把握のため、奈良県KDBやNDBを用いて分析を行った結果、2019年における奈良県の在宅医療実患者数は15,042人で、90歳以上の割合が最も多かった。在宅患者数は2040年まで1.75倍に増加する見込みであった。医療圏別では、南和医療圏を除き増加傾向にあるが、市町村によって減少する地域も見られた。
リハビリテーションの提供は、医療資源とアクセシビリティに影響を受け、患者数に基づくアクセシビリティ分析が近しい結果を示していた。2020年度の外来リハビリ料は減少した。過疎医療圏での移動距離の改善が必要であることが分かった。リハビリ提供量が過少な地域では、専門職の確保が必要である。患者数を基にした分析が有効であることが示唆された。

② 外来医療の実態と将来需要の検討(外来医療計画班)
NDBデータを用いた外来通院の受療行動分析により、「各患者の総受診回数に占める、最も受診した医療機関での受診回数の平均割合」は、60%-90%の間で分布していた。15歳未満と70歳から85歳人口は、男女ともに割合が低かった。また、20歳から75歳までの平均割合は、男性が女性より高かった。90歳以上の平均割合は、他の年齢階級と比較して、男女ともに上昇した。また、地域ごとに、最も受診する医療機関の規模に違いがあり、地方部では最も受診する医療機関が病院である割合が比較的高かった。
外来機能報告の結果を用いた分析では、紹介受診重点外来の占める割合が再診の25%という条件が、初診の40%という条件よりも満たさない医療機関が多いこと、その紹介受診重点外来を項目別に分析するとCTやMRIをはじめとする高額等の医療機器・設備を使用する外来が占める割合が大きいことが分かった。各種紹介受診重点外来の実施割合が紹介受診重点医療機関となるか否かに強く関わっており、機械学習モデルの作成により大多数の紹介受診重点医療機関を予測することが可能であった。外来機能報告ではCTやMRI等において、初診・再診と同日に実施されたもののみが集計されている。集計されていないそれらの診療行為の規模について確認したところ、15-30%程度が定義上集計されていないことが分かった。重点医療機関は、基準未満の箇所が多く、地域役割を考慮した慎重な設定が必要である。都道府県によって設定状況に大きな差があると考えられる。

③ 効率的・効果的な入院外医療の提供体制の検討(入院外医療の提供体制班)
療養病床等での入院医療から在宅医療への移行を進めている現場の取組について、都市部の事例3件、過疎地等農山漁村地域の事例4件を取材した結果、急性期病棟と同様に療養病棟においても、入院直後から、疾病の治療見込みや退院可能性時期について、関係するスタッフで療養計画を議論し作成する病院は、積極的に退院に結びつけている様子が伺えた。
在宅療養支援病院(在支病)とその関連する医療福祉施設に対して、入院医療から在宅医療への移行の取組の状況について、ヒアリングを通じて情報収集したところ、
「入院された高齢者の患者さんが、早期退院して、在宅医療に円滑移行できるための取り組み」については、入院直後からの多職種連携による退院後の生活イメージを共有、再入院がすぐ出来る体制とした退院、「在宅療養支援病院の届出のための人員配置等の苦労」について、医師を配置するので精一杯、「どのような『素養を持つ人材』が同病院にいることが望ましいか。」について、総合診療を担う医師、患者さんを引継ぐ側の事情が分かる人、「『素養を持つ人材』を養成するための研修とは」」について、医師は往診業務が出来るための研修、などの回答を得た。令和6年度には、アンケート調査を行い、その結果から療養病床から在宅医療へのスムーズな移行を図るための取り組みが進行中で、関係者による退院計画が積極的に行われていた。退院支援の多職種連携が進められ、在宅療養支援のための人材研修が検討されていることも明らかとなった。

結論
本研究は、各都道府県が策定・実施する医療計画や地域医療構想の実務的な資料として機能することが期待され、特に入院外医療(在宅医療+外来医療)について進めていくべき機能分化・連携の方向性やその方法を示す成果となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202421003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
在宅医療と外来医療においてNDB・KDB等のレセプトデータ、外来機能報告等を用いて医療需要を推計できる環境を作り出すことに成功した。これによりNDB・KDB等のレセプトデータの学術的利用価値は格段に向上した。
臨床的観点からの成果
令和4年度から開始された外来機能報告制度の報告データを用いて、病院、診療所、地域医療支援病院、特定機能病院などの観点から重点外来や重点医療機関を含む外来医療の実態を把握した。これにより今まであまり把握されてこなかった外来での医療がどのように行われているかが分かる様になった。
ガイドライン等の開発
地域医療構想策定ガイドラインにおいては退院患者が行き場のない状態を回避しつつ、入院医療から在宅医療への移行を地域で推進することを促していることから、その内容について「在宅療養支援病院(在支病)」と、その連携施設などに絞り、療養病床等入院医療から在宅医療への移行の取組の実態を把握し、その検証を行った。
その他行政的観点からの成果
医療法に定めている5疾病6事業の各都道府県が定めることになる医療計画の指標の作成と全国への提示を行った。
特に在宅医療の分析や指標作成はこの研究班の主な成果となっている。
その他のインパクト
医療法に定めている5疾病6事業の各都道府県が定めることになる医療計画の指標の作成と全国への提示を行った。
特に在宅医療の分析や指標作成はこの研究班の主な成果となっている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421003Z