国際共同基盤研究に応用する抗酸菌感染症研究の整備

文献情報

文献番号
201004002A
報告書区分
総括
研究課題名
国際共同基盤研究に応用する抗酸菌感染症研究の整備
課題番号
H22-国医・指定-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 正彦(国立感染症研究所 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 光山 正雄(京都大学大学院 医学研究科)
  • 吉開 泰信(九州大学生体防御研究所 感染ネットワーク研究センター)
  • 後藤 正道(国立療養所星塚敬愛園)
  • 谷口 初美(産業医科大学)
  • 後藤 義孝(宮崎大学 農学部)
  • 瀧井 猛将(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
  • 大原 直也(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 岩本 朋忠(神戸市環境保健研究所 微生物部)
  • 福富 康夫(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 岡田 全司(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 小出 幸夫(浜松医科大学)
  • 鈴木 定彦(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 長谷 篤(大阪市立環境科学研究所)
  • 竹田 潔(大阪大学大学院 医学研究科)
  • 慶長 直人(国立国際医療研究センター)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 田村 敏生(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 松本 智成(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 臨床研究部)
  • 松本 壮吉(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 杉田 昌彦(京都大学ウイルス研究所 がんウイルス研究部門)
  • 宮本 友司(国立感染症研究所 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,889,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病原性抗酸菌感染症の制御を目的として、ゲノム解析技術・分子細菌学及び分子免疫学的手法を駆使して、学術的基礎的研究と診断・予防・治療法開発への応用を図る実用的臨床的研究を組み合わせた包括的な基盤研究を行う。
研究方法
細菌学研究では、病原性遺伝子のノックアウト株の作製及びその因子の非病原性抗酸菌への遺伝子導入を行い、病原性因子の病像形成への役割を検討する。免疫学的研究では、免疫応答の根幹あるいは補助的役割を担う遺伝子を欠損させたノックアウトマウス並びに遺伝子導入したトランスジェーニックマウスを用いて、抗酸菌に対する免疫応答を測定する。臨床分離株は、新しい遺伝子解析装置を用いた解析をする。
結果と考察
結核菌の病原性を担うと想定されているESAT-6及びCFP-10のマクロファージの機能に及ぼす影響を解析したところ、CFP-10を恒常的に発現するマクロファージではBCG感受性が増大し、病原性因子であることが立証された。ESAT-6発現細胞では感受性増大は観察されず、ESAT-6とCFP-10の機能に差異があった。日本におけるM. aviumの遺伝的多様性を比較検討した。本邦で分離される菌株は欧州諸国とは異なり、ブタ分離株とは相同性は低く、浴室環境分離株との相同性が高かった。本邦では特異な遺伝的背景を有し特異的な生態と伝播様式が存在すると考えられた。ハンセン病のワクチンの開発目的としてリコンビナントBCGを作出した。アンモニアの産生を抑制し、BCGのライソゾームへの移行を促進可能なリコンビナントBCGに、らい菌の主要抗原MMP-IIとHSP70を連結した融合遺伝子を導入すると、非常に強くT細胞を活性化して、らい菌の生体内増殖を強く抑制した。結核菌殺傷蛋白Granulysinは、IL-6と相乗作用を有しつつキラーT細胞を活性化して、結核菌感染マウスに対して結核治療効果を発揮して結核菌数を減少させた。アジア地域の医療及び研究レベルの向上を目的として、結核菌-HIV-1重複感染者の免疫動態を把握するための技術と、ハンセン病の早期発見非侵襲的診断技術の技術移転を図った。これらの研究は、結核・ハンセン病の新しい診断・予防・治療法の開発に大きく貢献し、早期に臨床の場へ還元されることと期待される。
結論
アジア諸国の抗酸菌感染症の診断・予防・治療技術の向上を通じた抗酸菌制御に大きく貢献することが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201004002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ハンセン病のワクチン開発を目的として、リコンビナントBCGを作製した。ウレアーゼをコードする遺伝子を除去しファゴゾームの酸性化を促進するリコンビナントBCGにらい菌の主要抗原MMP-IIとBCGのHSP70を連結した融合遺伝子を導入すると、非常に強くT細胞を活性化し、らい菌の生体内増殖を抑制した。結核菌殺傷蛋白グラニュライシンは、IL-6と相乗的に働き、キラーT細胞を活性化し結核菌感染マウスに対し治療効果を示した。
臨床的観点からの成果
日本におけるM. aviumの遺伝的多様性を比較検討した。本邦で分離される菌株は欧州諸国からの報告とは異なり、ブタ分離株とは相同性は低く、浴室環境分離株との相同性が高かった。このことから本邦では土着のM. avium subsp. hominissuisの存在が強く示唆され、特異な遺伝的背景を有し特異的な生態と伝播様式が存在すると考えられた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
アジア地域の医療及び研究レベルの向上を目的として、結核菌とHIV-1が重複感染した患者の免疫動態を把握するための技術と、ハンセン病の早期発見非侵襲的診断技術の技術移転を行った。本研究成果は国際学会で発表された。
その他のインパクト
マスコミ等で取り上げられたことはなかった。本年度の日米合同会議はアメリカ合衆国ケンブリッジ市で行われたため、日本人向けの公開会議にはならなかった。しかし、アメリカ人の若い研究者には大きなインパクトを与えた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
81件
学会発表(国際学会等)
40件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
D. Hayashi, T. Takii, T. Mukai,他
Biochemical characteristics among Mycobacterium bovis BCG substrains
FEMS Microbiol. Lett. , 306 , 103-109  (2010)
原著論文2
Y. Miyamoto, T. Mukai, T. Naka,et.al
Novel rhamnosyltransferase involved in biosynthesis of serovar 4-specific glycopeptidolipid from Mycobacterium avium complex
J. Bacteriol. , 192 , 5700-5708  (2010)
原著論文3
T. Mukai, Y. Maeda, T. Tamura,et.al
Enhanced activation of T lymphocytes by urease-deficient recombinant Bacillus Calmette- Guérin producing heat shock protein 70-major membrane protein-II fusion protein
J.Immunol , 185 , 6234-6243  (2010)
原著論文4
A. Yahagi,M. Umemura,T. Tamura,et.al
Suppressed induction of mycobacterial antigen- specific Th1-type CD4+ T cells in the lung after pulmonary mycobacterial infection
Int. Immunol. , 22 , 307-318  (2010)
原著論文5
S. Komine-Aizawa,T. Yamazaki,T. Yamazaki,et.al
Influence of advanced age on Mycobacterium bovis BCG vaccination in guinea pigs aerogenically infected with Mycobacterium tuberculosis
Clin. Vaccine Immunol. , 17 , 1500-1506  (2010)
原著論文6
G. Eweda,D. Suzuki, T. Nagata,et.al
Identification of murine T-cell epitopes on low-molecular-mass secreted proteins (CFP11, CFP17, and TB18.5) of Mycobacterium tuberculosis
Vaaccine , 28 , 4616-4625  (2010)
原著論文7
S. Seto,S. Matsumoto, K. Tsujimura,et.al
Differential recruitment of CD63 and Rab7-interacting-lysosomal- protein to phagosomescontaining Mycobacterium tuberculosis in macrophages
Microbiol. Immunol. , 54 , 170-174  (2010)
原著論文8
L.-X. Wang,T. Nagata, K. Tsujimura,et.al
Identification of HLA-DR4- restricted T-cell epitope on MPT51 protein, a major secretory protein derived from Mycobacterium tuberculosis usingMPT51 overlapping peptides screening and DNA vaccination
Vaccine , 28 , 2026-2031  (2010)
原著論文9
D. Suzuki,T. Nagata, G. Eweda,et.al
Characterization of murine T-cell epitopes on mycobacterial DNA-binding protein 1 (MDP1) using DNA vaccination
Vaccine , 28 , 2020-2025  (2010)
原著論文10
T. Ito, T. Takii,M. Maruyama, et.al
Effectiveness of BCG vaccination to aged mice
Immun. Ageing , 7 , 12-12  (2010)
原著論文11
M. Matsuyama, Y. Miura, T. Kiwamoto,et.al
A case of familial pulmonary Mycobacterium avium complex disease
Internal. Med. , 49 , 949-953  (2010)
原著論文12
C.Ridruechai,S.Mahasirimongkol,J. Promjai,et.al
Association analysis of candidate regions on chromosome 5q31 for tuberculosis
Genes Immun. , 11 , 416-422  (2010)
原著論文13
E. Abadia, U. Zhang, T. Dos Vultos,et.al
Resolving lineage assignation on Mycobacterium tuberculosis clinical isolates classified by spoligotyping with a new high-throughput 3R SNPs based method
Infect. Genet. Evol. , 10 , 1066-1074  (2010)
原著論文14
C. Nakajima, Z. Rahim, Y. Fukushima,et.al
Identification of Mycobacterium tuberculosis Clinical Isolates in Bangladesh by a Species Distinguishable Multiplex PCR
BMC Infect. Dis. , 10 , 118-118  (2010)
原著論文15
T. Fukasawa, N. Oda, Y. Wada,et.al
A novel method for the purification of DNA by capturing nucleic acid and magnesium complexes on non-woven fabric filters under alkaline conditions for the gene diagnosis of tuberculosis by loop-mediated isothermal amplification (LAMP)
Jpn. J. Infect. Dis. , 63 , 246-250  (2010)
原著論文16
M. Matsuoka, Y. Suzuki, I. E. Garcia,et.al
Possible mode of emerging drug resistant leprosy cases revealed in Mexican samples’ analysis
Jpn. J. Infect. Dis. , 63 , 412-416  (2010)
原著論文17
S. Sakai, I. Kawamura, T. Okazaki,et.al
PD-1-PD-L1 pathway impairs Th1 immune response in the late stage of infection with Mycobacterium bovis bacillus Calmette-Guerin
Int. Immunol. , 22 , 915-925  (2010)
原著論文18
H. Morii, M. Ogawa, K. Fukuda,et.al
A revised biosynthetic pathway for phosphatidylinositol in mycobacteria
J. Biochem. , 148 , 593-602  (2010)
原著論文19
Y. Ozeki, I. ugawara,T. Udagawa,et.al
Transient role of CD4+CD25+ regulatory T cells in mycobacterial infection in mice
Int. Immunol. , 22 , 179-189  (2010)
原著論文20
C. E. Sena, T. Fukuda, K. Miyanagi,et.al
Controlled expression of branch-forming mannosyltransferase is critical for mycobacterial lipoarabinomannan biosynthesis
J. Biol. Chem. , 285 , 13326-13336  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201004002Z