指標等を活用した地域の実情に応じた肝炎対策均てん化の促進に資する研究

文献情報

文献番号
202420006A
報告書区分
総括
研究課題名
指標等を活用した地域の実情に応じた肝炎対策均てん化の促進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HC2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 玉城 信治(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 肝炎・免疫研究センター)
  • 瀬戸山 博子(熊本大学生命科学研究部 消化器内科)
  • 竹内 泰江(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター )
  • 西井 正造(公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究センター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
23,678,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班で作成・運用した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)実施・解析し、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エデュテインメント資材を開発・運用する。
研究方法
肝炎医療指標、病診連携指標は拠点病院(72施設)と専門医療機関(20都道府県、100施設)を対象に実施した。自治体に関しては、厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し指標値を算出、評価した。拠点病院事業指標については各指標の経年推移を解析し、R5年度から啓発事業指標を調査した。2024年15,000人を対象に国民調査を実施し、「未受検」判定となっている既受検者の割合を算出することで、国民の検査経験率を算出した。脂肪肝の疾患概念改訂に基づき、肝線維化進展に関する心代謝要因の影響を解析した。「肝炎すごろく」の改訂第3版の啓発効果を評価し、新たな啓発資材(クロスワード)を試作した。
結果と考察
肝炎医療指標、自治体事業指標、拠点病院事業指標
全体的には均てん化された肝炎医療が提供されていた。重要指標の88.2%で目標値を達成した。肝硬変診療に関する指標は過去調査でも一貫して低値を維持していた。専門医療機関においても多くのウイルス肝炎患者が治療を受けていた。診療連携指標は肝炎患者の紹介率、逆紹介率は、前年度から増加した。ICTの肝疾患診療連携における利用率は10%増加した。自治体事業指標は肝がん罹患率と死亡率は、経時的に低下傾向を示した。肝炎ウイルス検査実施市町村の割合は、R3年度以降は、R元年のレベルに復していた。健康増進事業よる肝炎ウイルス検査の受検率は、H29年度との比較でも減少傾向を示し、R4年度は前年度に比べて有意に低下した。肝炎医療コーディネーター数は、拠点病院、専門医療機関、市町村、保健所いずれも増加傾向であった。拠点病院事業指標では、啓発活動、研修事業においてWEBを活用した形式で実施数・参加者数ともに回復傾向であった。肝疾患相談・支援センターのHPが設置されているが、施設毎に掲載内容は異なっているため、HP指標を調査し拠点病院に結果を報告した。
国民調査(2024)の解析
2024年度には、全対象者15,000人に対して調査を行い、4,416人より有効回答を得た(回収率29.4%)。認識受検率は、HBV検査が18.4%、HCV検査が14.5%であり、前回調査(2020年度)と比較して大きな変動は認められなかった。一方、非認識受検を補正した検査受検経験率は、HBVで88.2%、HCVで79.2%となり、2020年度から上昇していた。これにより、日本では国民の8〜9割が既に肝炎ウイルス検査を受けていることが示された。検査後の対応については、本調査で自己申告のあった陽性者72人は全員医療機関受診に至っていると考えられた。
肝硬変移行率評価指標
MASLD診断に用いられる心代謝関連因子のMASLD病態進展への関与をNation-wideデータベースを用いて検討した。因子を1〜5個持つ症例における心血管イベントリスクを検討すると、数の増加に従って心血管イベントリスクは増加した。一方肝関連イベントに関しては数の増加とリスクの増加には関連を認めなかった。MASLD診療においては、心代謝関連因子によるリスク評価は困難であり、肝線維化など肝疾患特異的なリスク因子の測定が必要と考えられた。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
「肝炎すごろく第3版」のユーザビリティ調査を実施した。全拠点病院の啓発担当者、肝炎情報センターのHPで問い合わせいただいた方、製薬企業や医療機関、日本科学未来館などと連携して計138件の調査票を回収した。改訂版使用者は535名(非医療従事者287名)であった。肝炎クイズの正答率は、資材使用後には有意に得点上昇していた。改訂版ではHBワクチンの定期接種開始時期に係る設問、肝発がんの可能性がある肝疾患についての設問の正答率が向上していた。ウイルス性肝炎の感染経路に係る設問は事前で約6割、事後で約8割の正答率が得られており、正しい知識の普及が進んでいると考えられた。
結論
指標結果を各施設、都道府県の担当者で共有し、課題を明らかにすることで、医療・政策の均てん化が推進される。

公開日・更新日

公開日
2025-11-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-11-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202420006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,780,000円
(2)補助金確定額
30,780,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,339,587円
人件費・謝金 4,795,918円
旅費 352,925円
その他 14,189,570円
間接経費 7,102,000円
合計 30,780,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-11-26
更新日
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