文献情報
文献番号
202420003A
報告書区分
総括
研究課題名
ネットワーク社会における地域の特性に応じた肝疾患診療連携体制構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24HC1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(国立大学法人 金沢大学 医薬保健学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 井戸 章雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 磯田 広史(佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
- 井出 達也(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
- 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
- 寺井 崇二(新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野)
- 芥田 憲夫(虎の門病院肝臓内科)
- 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 竹内 泰江(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎対策には居住地域による取り組みの違いがみられ、より良い肝炎医療を提供するためには、地域の特性に応じた対策を構築する必要がある。本研究では、研究代表者らの先行研究で必要性と有用性が示されたICT等を駆使して、地域の特性を生かした肝炎患者の診療連携体制を確立する方法論やモデルケースを創出することを目指した。
研究方法
本研究には、肝炎診療連携へのICT等の応用を開始している愛媛、佐賀、石川及び県土が広い、島嶼部を有する、人口密集地を有するなどICT等の応用が喫緊の課題である鹿児島、福岡、新潟、及び大都市圏である東京都の拠点病院の研究分担者が、各都県毎に様々な方式で肝炎診療連携にICT等を活用した。さらに疫学班と連携し、各都道府県の肝炎診療連携体制の現状や問題点を様々なパラメーターを用いて比較分析した。また均てん化班と連携し、拠点病院や専門医療機関を対象に肝炎病診連携指標の算出やICT等の肝炎診療連携への活用状況を調査した。
結果と考察
石川県は、いしかわ診療情報共有ネットワーク、佐賀県はピカピカリンク、福岡県(久留米地域)はアザレアネット、愛媛県はHiMEネット、新潟県(佐渡島)はさどひまわりネット、東京都はMINT System、といった地域医療情報ネットワーク(以下、地連NW)の肝炎診療連携への応用を行った。石川県では、フォローアップ事業を従来の紙ベースを廃止し、地連ネットを活用したWEBベースに移行することで、フォローアップ事業の効率化を図れることを示した。佐賀県では、Zoomを用いて拠点病院の医師が遠隔地の医療機関の腹部エコー検査をリアルタイムで支援する取り組みを開始した。このようにオンライン会議システムを利用することで、拠点病院の肝臓専門医が拠点病院から出張することなく、遠隔地の肝炎ウイルス患者行い、良質な肝炎診療を提供できた。愛媛県では、C型肝炎患者に対する経口抗ウイルス療法を受ける患者を対象にHiMEネットのSNSアプリを用いた薬薬連携を行った。これにより処方医と薬剤師間で迅速な情報共有が可能になった。また他院から拠点病院の診療予約をWEB上で取得できるようにすることで診療連携の促進を図った。一方、福岡県筑後地区では、地連ネットの活用実績が非常に低かったが、今年度は、地連ネットへの加入要件を文章同意から口頭同意に変更した。これにより、積極的な利用促進が期待できる。新潟県佐渡島では、地連ネットを活用し島民のHCV感染率や治療導入状況、予後の解析を行った。さらに地連ネットを利用した地域連携パスを構築し、これを運用することで島内の肝炎診療連携の効率化を図る。今回初めて東京都の拠点病医院である虎の門病院が、虎の門病院と地連ネットを構築している医療機関を対象に地連NWの活用状況や認知度を調査した。その結果、現状では、地連NWの認知度時が低く、肝炎分野も含めてまだまだ十分に活用されていないことが分かった。鹿児島県には利用可能な地連ネットが存在しなかったため、島嶼部において世帯加入率の高いケーブルテレビを用いた啓発活動を開催した。また奄美大島で携帯情報端末やZoomなどの利用可能なICTを駆使したウイルス肝炎に対する啓発活動や住民検診での肝炎検査推進を行った。またインターネットを活用したWEB広場を開設し、肝炎医療コーディネーターの活動支援を行った。肝炎情報センター竹内班員は、拠点病院を対象とした経年的な地連NWに関する調査を行い、地連NWの導入率は上昇したものの、肝炎診療連携への活用は進んでいない事を明らかにした。広島大学秋田班員は、各種パラメーターから都道府県毎の肝炎対策をレーダーチャートで視覚化した。また肝炎ウイルス検査結果のスマートフォンアプリへの登録を行うため、協力可能なアプリ会社を選定した。さらに、石川県における調査から母子保健における肝炎ウイルス検査結果のマイナポータルへの開示が進んでいない事を明らかにした。
結論
本研究を通じて、ICT等を肝炎診療に応用する事で、地域がかかえる様々な課題を解決できることが明らかになった。しかし、地連NWなど活用可能なICT等が存在しない、認知度が低い、地連NWの普及率が低いといった課題も明らかになった。今後、ICT等を活用することで肝炎診療における様々な課題を解決できることを情報発信すると共に、国や県によるICT環境の整備や認知度の向上を通じた活用促進も必要と考えられた。また次年度以降、スマートフォンアプリを活用した肝炎ウイルス検査結果の記録・携帯、母子保健における肝炎ウイルス検査結果のマイナポータルへの開示を進める。
公開日・更新日
公開日
2025-11-26
更新日
-