マラリア感染細胞表面のタンパク質一分子計測と異常ヘモグロビンのマラリア耐性メカニズムの解明

文献情報

文献番号
201003010A
報告書区分
総括
研究課題名
マラリア感染細胞表面のタンパク質一分子計測と異常ヘモグロビンのマラリア耐性メカニズムの解明
課題番号
H21-地球規模・若手-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
有江 隆之(大阪府立大学 工学研究科 電子物理工学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性疾患であるヘモグロビン異常がマラリアに耐性を示すことは広く知られているが、そのメカニズムは明らかではない。本研究では原子間力顕微鏡およびカーボンナノチューブ片持ち梁を用い、感染赤血球表面上のマラリア由来の突起状構造が、血管内壁細胞へ接着するプロセスを一分子レベルで可視化するための要素技術を開発し、耐性メカニズムを明らかにする。
研究方法
当該年度は原子間力顕微鏡による分子間相互作用計測に加え、ナノチューブ片持ち梁を用い、相互作用力計測中に蛍光標識により分子を可視化することができる、光学顕微鏡と組み合わた手法を確立した。片持ち梁状にシリコン基板に固定されたナノチューブ先端を開端し、クロスリンカーによりタンパク質結合サイトを作成した。ナノチューブ表面は化学的に非常に安定であり、開端部位に特異的に数分子を捕捉することが可能である。用いたCD36は血管内壁細胞表面に分布し、感染赤血球が突起状構造を介して接着するためのレセプターとしての役割をもつタンパク質である。CD36をナノチューブ先端の結合サイトに結合させ、光学顕微鏡下でナノチューブ片持ち梁を繰り返し移動させ、その撓み量から結合力を見積もった。
結果と考察
まずナノチューブ片持ち梁を用いた測定系の力分解能を見積もったところ、およそ7pNであった。これはシステムの最適化によりさらなる向上が可能である。次にクロスリンカーの働きを確認するため、ナノチューブ表面を酸化後、蛍光標識を行ったところ、クロスリンカーによりタンパク質が特異的に結合することが確認できた。先端のみ酸化したナノチューブ片持ち梁を用いた相互作用力計測から、結合力は150pNと見積もられた。これは分子間/分子内のイオン結合などの弱い結合力であると思われる。
結論
ナノチューブ片持ち梁を用いた分子間相互作用力計測技術を開発した。本手法および原子間力顕微鏡を用いてマラリア感染赤血球の血管内壁への接着プロセスを明らかにし、ヘモグロビンによるマラリア耐性メカニズムを解明する。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201003010Z