文献情報
文献番号
202419017A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的な基準によるエイズ対策の評価と改善のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24HB1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国際医療福祉大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
- 村松 崇(東京医科大学病院臨床検査医学科)
- 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
- 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国連合同エイズ計画(以下UNAIDS)は、エイズに関する国連総会ハイレベル会合に合わせて5か年計画「世界エイズ戦略2021-2026」を採択し、その達成度を評価するための年次調査Global AIDS Monitoring(以下GAM)を行っている。GAMは、①HIV罹患率およびケアカスケード95-95-95達成率等の推計、②その他の疫学指標、③政策に関する質問(National Commitments and Policy Instrument, NCPI)、④エイズ対策のリソース(薬剤と検査)に関する質問、⑤記述報告(Narrative reports)に大別され、幅広い項目が含まれている。政策に関する質問(NCPI)には、政府が回答するPart Aと市民団体が回答するPart Bがあり、後者では政策の立案・実行過程への市民参画の度合いを評価している。95-95-95指標やHIV罹患率は、原則としてUNAIDSが開発したソフトウェアSpectrum®を用いて算出することになっている。これらの前提をふまえ、本研究は、GAM等の国際的基準に沿って日本のHIV対策が適切であるかどうかを客観的に評価する手法を検討することを目的とした。
研究方法
本研究は6つの分担課題から構成される。研究代表者が全体を統括し、日本からのGAM報告に向けた指標選定やデータ収集の課題整理を行った。分担研究では、Spectrum®を用いた罹患率やケアカスケード指標の推計方法、日本の政策と国際指針の整合性比較、感染者数推計の他手法との比較、市民団体による政策評価の実施体制の検討、GAM報告可能な指標の分類と優先度評価などが行われた。
結果と考察
Spectrum®による推計では、日本のHIV罹患率や95-95-95指標における死亡率の前提が大きな影響を与えることが明らかとなった。厚生労働省人口動態統計を用いた解析が、現実の届出数と最も整合的であるとされた。疫学指標の検討では、GAMで定められた70以上の指標のうち、日本からの報告が可能と判断されたのは約25%であり、定義の違いやデータ欠損が課題であった。政策整合性の評価では、現行のエイズ予防指針が国連の政治宣言と一部で不一致であり、とくにトランスジェンダーやセックスワーカー顧客、刑務所環境にある人々が政策の対象から漏れている点が明らかとなった。NCPI Part B(市民団体による政策評価)は、日本では基盤が未整備であり、他国の事例に学ぶ必要性が示された。日本のHIV対策を国際基準で評価するにあたっては、報告可能な指標の限定性やデータの不整合、また市民参画の制度的欠如といった課題が浮き彫りになった。特に疫学モデルの前提(死亡率など)は推計精度に大きな影響を与え、日本の実態に合った設定が不可欠である。また、政策に関する報告では、国と市民社会の協働体制の整備が求められる。指標の網羅性と質を確保するためには、国内の研究・行政・市民団体の協働体制が必要であると考えられた。
結論
GAMに準拠した日本のHIV対策評価は、国際整合性を高め、今後の戦略的改善に資する。しかし、日本の既存データは国際指標と定義が異なる場合が多く、報告体制や協働の仕組みを整える必要がある。今後は、UNAIDSとの協議を継続しつつ、Spectrumによる精緻な推計手法の確立、市民による政策評価の制度化、指標収集体制の強化を図ることで、より包括的かつ国際的に説明可能なHIV対策を推進することが求められる。
公開日・更新日
公開日
2026-10-20
更新日
-