文献情報
文献番号
202419009A
報告書区分
総括
研究課題名
職域におけるHIV感染症に関する知識の普及啓発の促進に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科 / エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(帝京平成大学 薬学部)
- 増田 将史(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
- 石丸 知宏(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
- 今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
- 堀 愛(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、「HIV感染症およびその併存疾患、関連医療費の実態把握のための研究」班の一環として日本における抗HIV療法の治療成績を分析し、職域を中心にHIV感染症/AIDSに関する正確な知識の普及啓発、検査機会整備、差別・偏見に関する事例収集を通じてPLHIVのQOL向上を目指す。職域は国民の約7割が被用者保険に加入する重要な啓発場である一方、エイズは職場でタブー視され差別・偏見が根強い現状があるため、産業保健業務従事者との連携を通じて課題解決を試みる。具体的には、①職域での知識普及啓発②検査機会整備③差別・偏見事例の収集解析を柱として展開する。
研究方法
本研究は以下の5つの方法で多角的データを収集・解析した。
(1)インターネット調査:一般成人7020名を対象に3時点で実施。啓発資料閲覧群2つ(公益財団法人エイズ予防財団資料群、NPO法人ぷれいす東京資料群)と対照群に無作為割付。知識普及度および啓発効果を評価。
(2)企業従業員アンケート調査:HIV検査機会のある2社を含む計9社でオンライン調査。内容はインターネット調査と同様で比較解析可能。
(3)産業医へのヒアリング・アンケート:11名の経験豊富な産業医に半構造化インタビューを実施し質的解析。東京都産業保健健康診断機関連絡協議会所属産業医にもアンケート配布。
(4)社内110番ダイヤル相談内容分析:2013~2023年の相談記録からHIV/AIDS関連相談を抽出し分析。
(5)PLHIV調査:名古屋医療センター通院者を対象にアンケート調査を実施し同意者には半構造化面接で差別・不利益事例を収集。
(倫理面への配慮)プライバシー保護と人権尊重を最優先に、各調査で倫理審査を適切に実施し、職域におけるHIV検査は「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を遵守。
(1)インターネット調査:一般成人7020名を対象に3時点で実施。啓発資料閲覧群2つ(公益財団法人エイズ予防財団資料群、NPO法人ぷれいす東京資料群)と対照群に無作為割付。知識普及度および啓発効果を評価。
(2)企業従業員アンケート調査:HIV検査機会のある2社を含む計9社でオンライン調査。内容はインターネット調査と同様で比較解析可能。
(3)産業医へのヒアリング・アンケート:11名の経験豊富な産業医に半構造化インタビューを実施し質的解析。東京都産業保健健康診断機関連絡協議会所属産業医にもアンケート配布。
(4)社内110番ダイヤル相談内容分析:2013~2023年の相談記録からHIV/AIDS関連相談を抽出し分析。
(5)PLHIV調査:名古屋医療センター通院者を対象にアンケート調査を実施し同意者には半構造化面接で差別・不利益事例を収集。
(倫理面への配慮)プライバシー保護と人権尊重を最優先に、各調査で倫理審査を適切に実施し、職域におけるHIV検査は「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を遵守。
結果と考察
(1)インターネット調査:対象者の約半数がHIV/AIDSを「死に至る病」と誤認し、21.9%は蚊媒介と誤解。啓発資料閲覧率は約8割だが閲覧時間短く知識向上効果は限定的。HIV感染者への不安や差別感情も残存。
(2)企業アンケート:3345件の有効回答。啓発機会のあった企業従業員は知識水準が相対的に高い傾向。
(3)産業医調査:健診機関主導の検査オプション提供が現実的だが、ガイドライン誤解やコスト、プライバシー懸念、業務負担が実施障壁。職場の差別意識や情報管理の困難も明示。東京都内健診機関では22機関中9機関がHIV検査実施。
(4)社内相談分析:通院両立の摩擦や配置制限、HIV陽性者扱いへの不安など具体的課題を確認。
(5)PLHIV調査:回答者324名中29%が職場でステータス開示経験。差別的言動や昇進・雇用機会制限の報告あり。半構造化面接では無断病名開示や不当配置転換等の人権侵害事例も複数。
総じて、国民全体のHIV/AIDS知識は不十分で職場での差別・偏見は根強く、単なる資料配布による啓発効果は限定的であること産業保健業務従事者との連携による持続的介入が不可欠であることが示された。
2018年の内閣府調査と比較して大幅な改善はなく、正確な知識普及は依然不十分。単回の啓発資料配布では知識定着に乏しく、継続的・多角的介入の必要性が示唆された。企業従業員調査は職域啓発の効果を示唆し、学校教育との連携も重要課題。産業医調査では健診機関主体の検査提供が望まれる一方、プライバシー、費用、ガイドライン誤解などが障壁に。東京都健診機関調査からは検査促進には個人情報管理体制や行政方針の明確化が不可欠。
社内相談やPLHIV面接からは職場差別が具体的に確認され、無断病名開示や不当な異動がQOLを著しく損ねている。中小企業では啓発が難しく簡潔な情報提供が求められる。健康経営、D&I、医療DX、地域連携など他領域と連携した多面的施策の有効性も示された。
本研究は、産業保健の専門性を活かした包括的介入の重要性を示す実証的知見を提供し今後の政策や社会実装の基盤として評価できる。
(2)企業アンケート:3345件の有効回答。啓発機会のあった企業従業員は知識水準が相対的に高い傾向。
(3)産業医調査:健診機関主導の検査オプション提供が現実的だが、ガイドライン誤解やコスト、プライバシー懸念、業務負担が実施障壁。職場の差別意識や情報管理の困難も明示。東京都内健診機関では22機関中9機関がHIV検査実施。
(4)社内相談分析:通院両立の摩擦や配置制限、HIV陽性者扱いへの不安など具体的課題を確認。
(5)PLHIV調査:回答者324名中29%が職場でステータス開示経験。差別的言動や昇進・雇用機会制限の報告あり。半構造化面接では無断病名開示や不当配置転換等の人権侵害事例も複数。
総じて、国民全体のHIV/AIDS知識は不十分で職場での差別・偏見は根強く、単なる資料配布による啓発効果は限定的であること産業保健業務従事者との連携による持続的介入が不可欠であることが示された。
2018年の内閣府調査と比較して大幅な改善はなく、正確な知識普及は依然不十分。単回の啓発資料配布では知識定着に乏しく、継続的・多角的介入の必要性が示唆された。企業従業員調査は職域啓発の効果を示唆し、学校教育との連携も重要課題。産業医調査では健診機関主体の検査提供が望まれる一方、プライバシー、費用、ガイドライン誤解などが障壁に。東京都健診機関調査からは検査促進には個人情報管理体制や行政方針の明確化が不可欠。
社内相談やPLHIV面接からは職場差別が具体的に確認され、無断病名開示や不当な異動がQOLを著しく損ねている。中小企業では啓発が難しく簡潔な情報提供が求められる。健康経営、D&I、医療DX、地域連携など他領域と連携した多面的施策の有効性も示された。
本研究は、産業保健の専門性を活かした包括的介入の重要性を示す実証的知見を提供し今後の政策や社会実装の基盤として評価できる。
結論
本研究により、現行エイズ予防指針改正後も国民全体のHIV感染症/AIDSに関する正確な知識普及は十分に進んでいないことが明らかとなった。啓発資料の単独配布は限定的効果にとどまり多層的かつ継続的な情報提供が必要である。
職域においても理解不足と差別・偏見による不利益事例が依然として存在し、PLHIVの就労機会制限やキャリア形成障壁、メンタルヘルスへの悪影響が指摘された。
産業保健業務従事者には正確な知識普及の意義への理解が一定程度あり、連携した包括的啓発施策の社会的基盤が整いつつある。これらはスティグマ解消、検査機会拡充、PLHIVの社会参画促進に重要な契機となる可能性を秘めている。
今後は産業保健、教育、地域医療の多領域連携を強化し、職域での正確な知識普及を推進して差別・偏見解消と社会的包摂を実現すべきである。
職域においても理解不足と差別・偏見による不利益事例が依然として存在し、PLHIVの就労機会制限やキャリア形成障壁、メンタルヘルスへの悪影響が指摘された。
産業保健業務従事者には正確な知識普及の意義への理解が一定程度あり、連携した包括的啓発施策の社会的基盤が整いつつある。これらはスティグマ解消、検査機会拡充、PLHIVの社会参画促進に重要な契機となる可能性を秘めている。
今後は産業保健、教育、地域医療の多領域連携を強化し、職域での正確な知識普及を推進して差別・偏見解消と社会的包摂を実現すべきである。
公開日・更新日
公開日
2026-10-20
更新日
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