HIV感染血友病患者の救急対応の課題解決のための研究

文献情報

文献番号
202419005A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染血友病患者の救急対応の課題解決のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
日笠 聡(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病やvon Willebrand病(VWD)等の止血機能異常症は、治療薬の進歩により予後が改善し、平均寿命が健常者と同等になりつつある。このため、様々な生活習慣病・加齢疾患を合併する頻度は増加しており、これに伴って心疾患、脳血管疾患、外傷といった救急搬送を必要とする合併症を発症する患者も増加している。
 止血機能異常症は、通常出血症状以外の症状に乏しいため、日常的な治療は診療所や小規模の病院で加療されている患者も多いが、これらの施設では重篤な合併症の治療は不可能である。一方、搬送先の救急医療機関において、止血機能異常症の出血治療や手術・処置時の出血予防に必要な凝固因子製剤を常備し、使用できる施設は非常に限られる。
 本研究は、止血機能異常症の救急診療の各段階(救急隊・救急医療機関・血友病診療拠点病院・止血治療製剤メーカー・医薬品卸売業者)の現状を調査し、改善策を講じるための基礎資料を作成するとともに、緊急時患者カードのより有効な利用方法を患者や医療機関に向けて提案することを目的とする。
研究方法
1. 緊急時の薬剤供給についての医薬品卸売業者の取り組み調査
止血機能異常症に用いる治療薬剤を扱う44の卸業者に対して、薬剤の在庫状況、緊急時の薬剤供給の方法や工夫について、アンケート調査を実施した。
2. 「止血機能異常症のある患者の救急対応ガイド」の改訂と配布
「止血機能異常症のある患者の救急対応ガイド」については、最新情報を元に改訂第3版を作成し、全国の救急医療機関、血友病診療施設、血液内科(に配布した。
3. WEBサイト「止血ドットコム」の改訂・案内
WEBサイト「止血ドットコム」については、フライヤーを作成し、各種学会において配布し、周知を促した。さらに上記「止血機能異常症のある患者の救急対応ガイド」と同様の改訂し、公開した。
4. 緊急時患者カードの改訂・配布方法の変更
カードに「止血ドットコム」にリンクするQRコードを追記し、これをスマートフォンやタブレットで読み込めば、治療方法が参照できるように改訂した。
 また、これまでのカードでは通院医療機関を2箇所まで記入することが可能であったが、これをかかりつけ医療機関を1箇所、救急対応医療機関を1箇所記入する形式に改訂した。
本年度からは、より確実に患者に配布するため、成人患者に対しては、患者の大部分が申請している先天性血液凝固因子障害等調査研究事業(成人)の更新手続きの書類に緊急時患者カードを同封して配布する方法に変更した。
結果と考察
1. 緊急時の薬剤供給についての医薬品卸売業者の取り組み調査
 今回の調査は製薬会社が製剤を納入している卸業者に限定して調査したため、何らかの製剤の在庫がある卸業者が大部分であったが、これらの卸業者でも在庫している製剤の種類や規格は限定的で、一部の製剤の一部の規格だけが各卸業者に在庫されていることが明らかとなった。
2. 「止血機能異常症のある患者の救急対応ガイド」の改訂と配布
 最新情報を元に改訂第3版を作成し、日本血液学会専門研修認定施設および専門研修教育施設合計704箇所と救急科専門医指定施設550箇所、および血友病拠点病院・中核病院 112カ所、合計1366箇所に送付した。
3. WEBサイト「止血ドットコム」(https://shiketsu-guide.com/)の改訂・案内
 WEBサイト「止血ドットコム」については、フライヤーを作成し、日本臨床救急医学会、日本血栓止血学会、日本救急医学会において配布し、周知を促した。2024年度には合計10,228回の閲覧数があり、閲覧者は延べ4,034人であった。
4. 緊急時患者カードの改訂・配布方法の変更
 改訂したカードとともに、緊急時患者カードの発見率を向上させるための工夫を記載した患者および主治医向けのレターを同封して配布した。
 これらのカードとレターはは全国の自治体76箇所に対して8679部を送付し、製薬メーカー、患者団体などにも約3000部を配布した。
結論
血友病やvon Willebrand病等の止血治療に用いる製剤については、必要時には可能な限り迅速に(数時間以内)に供給されなければならないが、病院に在庫がない製剤を、卸業者から数時間以内に供給できる体制を整えることは非常に困難であると考えられる。
したがって、止血のために特殊な薬剤が必要な血友病やvon Willebrand病患者は、可能な限り、製剤の在庫がある血友病診療拠点病院に搬送してもらうことが重要と考えらる。
そのためには、緊急時患者カードを救急隊が発見しやすい保険証、免許証や携帯電話、お薬手帳・ヘルプカードなどとあわせて常時携帯すること、血友病診療拠点病院を一度は受診し、カルテを作成しておき、年に一度は受診して患者情報を更新しておくことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

文献情報

文献番号
202419005B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染血友病患者の救急対応の課題解決のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
日笠 聡(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
止血機能異常症の治療には凝固因子製剤等が必要な場合があるが、救急医療機関に搬送された際にこれらの製剤が使用できなかったり、治療経験のある医師がいないことも多く、適切な治療ができなかった事例が報告されている。
 本研究は、これらの患者の救急搬送の各段階における現状を調査した上で問題点を抽出し、改善策を提案することを目的とする。
研究方法
1.  止血機能異常症患者の救急診療における課題を明確化するためのアンケート調査
止血機能異常症の救急診療体制の現状と問題点について、全国の救急隊、救急医療機関、血友病診療施設、凝固因子製剤メーカー、医薬品卸売業者に対しアンケート調査を実施した。
2. 「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」の作成と配布
代表的な止血機能異常症5疾患を対象とし、救急医療機関を受診した際の初期対応についての診療ガイドを作成・配布した。
3.  WEBサイト「止血ドットコム」(https://shiketsu-guide.com/)の改訂・案内
「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」をWEB化したサイト「止血ドットコム」を作成・公開した。
4. 「緊急時患者カード」の改訂と配布
「緊急時患者カード」については、令和5年度と6年度にそれぞれ改訂を加え、令和6年度からは直接患者に配布する方法に変更した。
結果と考察
1.  止血機能異常症患者の救急診療における課題を明確化するためのアンケート調査
 救急隊へのアンケート調査では、緊急時患者カード等の存在によって搬送先病院が変わる可能性があることが示唆された。
 救急医療機関では、止血機能異常症患者の診療経験がある施設は1/3あるいはそれ以下で、治療に必要な薬剤を在庫している施設は1/3以下であった。 
 医薬品卸売業者における製剤の在庫状況も病院と同様であり、日常的に受注・販売の取引がある製剤のみしか在庫がない。
 血友病診療施設では、自施設に受診歴(カルテ)があれば、休日・夜間も問い合わせ、転院、転送が可能であるが、ない場合は対応が困難となる。
2. 「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」の作成と配布
血友病、von Willebrand病、免疫性血小板減少症、血栓性血小板減少性紫斑病、後天性血友病Aについて、受診時の初期対応についての診療ガイドを作成し、全国の血液内科704箇所と救急医療施設550箇所、および血友病拠点病院112カ所、合計1366箇所に送付した。
3.  WEBサイト「止血ドットコム」(https://shiketsu-guide.com/)の改訂・案内
 「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」をWEB化したサイト「止血ドットコム」を令和6年3月8日に公開した。
 令和6年4月~7年3月末までの閲覧回数は10,228回、閲覧者は延べ4,034人であった。
4. 「緊急時患者カード」の改訂と配布
 令和3年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)で作成した「緊急時患者カード」を改訂し、「止血ドットコム」を簡便に閲覧できる二次元バーコードを追記した。
さらに、先天性血液凝固因子障害等調査研究事業の医療費助成の更新書類や受給者証に「緊急時患者カード」を同封して配布する方法へと変更した。
そして、これに同封する患者および主治医向けのレターに、①本カードを常時携帯すること、②緊急時に救急隊が確認する免許証や保険証などと合わせて携帯すると発見率が向上すること、③通常の救急医療機関には止血機能異常症の治療製剤はほとんど在庫されていないこと、④緊急時にすぐに治療製剤を用いた治療ができるのは主に血友病診療拠点病院であること、⑤血友病診療拠点病院であっても過去の受診歴(カルテ)がない場合には急な受け入れが困難であること、⑥緊急時の初療が適切に行われるためには、かかりつけ医と連携のある血友病診療拠点病院を年に一度は受診し、カルテに記録を残しておくことが重要であること、などを記載し、患者自身に理解を図るとともに緊急時への備えについて啓発を行った。
結論
止血機能異常症患者の救急体制をより効率的にするためには、治療薬の在庫がある血友病診療拠点病院への受診(カルテ作成)を促すこと、緊急時にはその医療機関へ直接搬送されるシステムを構築することを優先すべきと考えられる。
 さらに、救急医療機関における止血機能異常症診療に対する理解度を上げること、救急医療機関と止血機能異常症診療の経験豊富な施設との連携を深めることなども必要と考えられる。
 そこで本研究班では、「緊急時患者カード」の配布と、「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」「止血ドットコム」の作成・配布・公開を進めている。
これらの活動を継続することによって、止血機能異常症の救急診療体制は、一部の施設において徐々に改善されていくと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202419005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 研究成果
 血友病拠点病院ではない救急医療機関の大部分においては、止血機能異常症の診療経験のある医師がおらず、止血治療に用いる薬剤の在庫もないため、搬送された患者の大部分は、必要な製剤による治療が受けられない。したがって、緊急時には血友病拠点病院へ搬送される体制を構築する必要があることが明らかとなった。
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 我が国の止血機能異常症患者の救急体制の課題が明らかとなり、対策を講じる基礎資料が作成できた。
臨床的観点からの成果
(1) 研究成果
 「緊急時患者カード」の作成と配布方法の見直しにより、より多くの患者に緊急時患者カードを直接配布した。本カードにより患者の診断名や治療薬だけではなく、その使用方法(用法・用量)についても手軽に検索できるシステムを構築した。、
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 我が国の止血機能異常症患者の救急体制の課題について、患者自身に理解を図るとともに、
緊急時への備えについて啓発を行った。
ガイドライン等の開発
 血友病、von Willebrand病(VWD)、免疫性血小板減少症(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、後天性血友病A(AHA)の5疾患を対象とし、救急医療機関を受信した際の初期対応についての診療ガイド「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」を作成し、以後毎年改訂版を発行した。本診療ガイドは、全国の血液内科、救急科専門医指定施設、血友病拠点病院・中核病院、の合計1366箇所に送付した。
その他行政的観点からの成果
 「緊急時患者カード」および「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」の配布、WEBサイト「止血ドットコム」の公開、患者への啓発活動などにより、止血機能異常症の救急診療体制は、若干改善される可能性はあるが、多くの課題は未解決のままである。今後も様々な課題解決への取り組みを継続していくことが必要不可欠と考えられる。
その他のインパクト
 「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」をWEB化したサイト「止血ドットコム」を令和6年3月8日に公開した。
 令和6年3月中の閲覧回数は682回で閲覧者数は延べ244人、令和6年4月1日~令和7年3月31日までの閲覧回数は10,228回、閲覧者は延べ4,034人であった。

発表件数

原著論文(和文)
1件
日本血栓 止血学会誌
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
日本血栓止血学会2題、臨床救急医学会2題、日本救急医学会2題、日本エイズ学会1題
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
新事業の契機1件、ガイドライン作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
16件
講演15件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
日笠 聡
【血友病患者のQOL向上を目指して】止血機能異常症の救急対応の課題解決のための研究
日本血栓止血学会誌 , 35 (1) , 25-32  (2024)
10.2491/jjsth.35.25

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202419005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,660,000円
(2)補助金確定額
10,657,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 361,844円
旅費 162,581円
その他 7,672,699円
間接経費 2,460,000円
合計 10,657,124円

備考

備考
千円未満の額124円は自己資金。

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-