HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202419003A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
上村 悠(国立国際医療研究センター ACC)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
  • 下村 昭彦(国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
27,687,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
『血友病HIV患者に発生する悪性腫瘍の早期発見、および、最適な治療法を提供する』HIVおよび血友病に対する治療の進歩により、血友病HIV感染者の予後は、劇的に改善された。一方、患者の高齢化に伴う問題が表面化し、非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) も大きな課題となっている。このような背景を受け、申請者らは、肝細胞癌を含む NADM に対するスクリーニング方法に関する先行研究を行ってきた。その結果、血友病HIV感染者の非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) の有病率5.2 %、罹患率 2.2 / 100人年と非常に高率であり、肝細胞癌だけでなく、多様な NADM を発症することが明らかとなった。すなわち、血友病HIV患者における悪性腫瘍の早期発見が重要であり、癌スクリーニング方法を確立してきた。当研究班では、『NADM に対する最適な治療法の創出』するため、HIV治療、放射線治療、内視鏡治療、抗癌剤治療の専門家による研究班を形成し、以下の4項目について、分担者が研究を行い、全員が協力して課題解決に挑んだ。
分担1. 血友病HIV感染者の癌スクリーニングと癌の早期発見に関する研究 (渡辺/上村主任)
分担2. 肝細胞癌に対する重粒子線治療に関する研究 (大野分担)
分担3. NADMに対する内視鏡治療に関する研究 (永田分担)
分担4. NADM に対する化学療法と分子標的薬に関する研究 (下村分担)
研究方法
分担1(渡辺/上村):初年度後半にあたる2022年10月26日より被験者登録を開始し、合計73名の登録を完了した。最終年度終了までに、2回のスクリーニング検査を実施した。長期 HIV 感染が発癌に与える影響を評価する目的で、登録被験者の潜伏 HIV ウイルス細胞を droplet digital PCR (ddPCR) で定量的に評価し、潜伏感染ウイルス量と NADM 発症有無の相関を解析した。分担2(大野):本試験では、2025年3月までに6例を登録した。分担3(永田):血友病患者の安全かつ最適な内視鏡検査方法を確立するため、世界で初めて多数例の血友病患者(124例、血友病A:101例、B:23例)の内視鏡検査の術前・術後の詳細な臨床データをまとめた。分担4(下村):2011年から2022年までに国立国際医療研究センターでがんと診断されたHIV患者の臨床情報を収集した。
結果と考察
分担1(渡辺/上村):血友病 HIV 感染者での新規 NADM 罹患率は、1.51/100人年で非常に高頻度で NADM 発症することが示された。69名分の潜伏感染ウイルス量を測定し、44例(血管障害有: 22例、無:22例)についてddPCRによるプロウイルスの性状解析と病態との比較を行ったところ、特に5’欠損型のHIVリザーバー細胞との関連が示唆されるデータを得た。悪性腫瘍についても解析を進めたところ、5’欠損型のHIVリザーバー細胞との関連が示されたものの、血管障害とは異なるプロウイルス領域を持つ欠損型HIVリザーバー細胞が関与している可能性が示唆された。分担2(大野):血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌に対する重粒子線治療は安全で局所効果も良好であるが、肝内再発に対する戦略が必要と考えられた。分担3(永田):下部内視鏡検査は97件(1.9件/人)であり、消化管出血合併症は4.1%と判明した。精査のための生検処置(45件)と前癌病変・早期癌病変の治療(45件)が大半を占め、上部と比較し下部では癌精査や治療のための処置率が高い。そのため検査後の出血率が高かった可能性がある。また、上部・下部内視鏡処置に伴う重篤な偶発症(消化管穿孔、循環動態悪化、感染症など)は1例も認めなかった。分担4(下村):HIV 感染を有する患者であっても、抗HIV薬内服で免疫状態が安定していれば、標準抗癌剤治療は安全に行えることが、明確となった。本結果を論文として公表した。PLWHと非HIV感染者でNADMの病態が異なるかを検討する研究計画を開始した。
結論
血友病HIV患者に発症する非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) の早期発見と非侵襲的治療法の研究と診療体制整備のための研究を行った。これまで行ってきた癌スクリーニング検査を継続するとともに、全国の診療施設で参照可能な癌スクリーニングの手引の発行、群馬大学における摘出不能肝細胞癌に対する重粒子線治療の大阪地区や九州地区での実施拡充などにより、これまでの研究成果を全国へ展開する研究を進めた。本研究班では、新たに、血友病患者における内視鏡治療や抗がん剤治療の安全性や有効性について検証を実施し、解析結果を報告する予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
202419003B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
上村 悠(国立国際医療研究センター ACC)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 悠(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター ACC)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
  • 下村 昭彦(国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
『血友病HIV患者に発生する悪性腫瘍の早期発見、および、最適な治療法を提供する』HIVおよび血友病に対する治療の進歩により、血友病HIV感染者の予後は、劇的に改善された。一方、患者の高齢化に伴う問題が表面化し、非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) も大きな課題となっている。このような背景を受け、申請者らは、肝細胞癌を含む NADM に対するスクリーニング方法に関する先行研究を行ってきた。その結果、血友病HIV感染者の非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) の有病率5.2 %、罹患率 2.2 / 100人年と非常に高率であり、肝細胞癌だけでなく、多様な NADM を発症することが明らかとなった。すなわち、血友病HIV患者における悪性腫瘍の早期発見が重要であり、癌スクリーニング方法を確立してきた。当研究班では、『NADM に対する最適な治療法の創出』するため、HIV治療、放射線治療、内視鏡治療、抗癌剤治療の専門家による研究班を形成し、以下の4項目について、分担者が研究を行い、全員が協力して課題解決に挑んだ。
分担1. 血友病HIV感染者の癌スクリーニングと癌の早期発見に関する研究 (渡辺/上村主任)
分担2. 肝細胞癌に対する重粒子線治療に関する研究 (大野分担)
分担3. NADMに対する内視鏡治療に関する研究 (永田分担)
分担4. NADM に対する化学療法と分子標的薬に関する研究 (下村分担)
研究方法
分担1(渡辺/上村):初年度後半にあたる2022年10月26日より被験者登録を開始し、合計73名の登録を完了した。最終年度終了までに、2回のスクリーニング検査を実施した。長期 HIV 感染が発癌に与える影響を評価する目的で、登録被験者の潜伏 HIV ウイルス細胞を droplet digital PCR (ddPCR) で定量的に評価し、潜伏感染ウイルス量と NADM 発症有無の相関を解析した。分担2(大野):本試験では、2025年3月までに6例を登録した。分担3(永田):血友病患者の安全かつ最適な内視鏡検査方法を確立するため、世界で初めて多数例の血友病患者(124例、血友病A:101例、B:23例)の内視鏡検査の術前・術後の詳細な臨床データをまとめた。分担4(下村):2011年から2022年までに国立国際医療研究センターでがんと診断されたHIV患者の臨床情報を収集した。
結果と考察
分担1(渡辺/上村):血友病 HIV 感染者での新規 NADM 罹患率は、1.51/100人年で非常に高頻度で NADM 発症することが示された。69名分の潜伏感染ウイルス量を測定し、44例(血管障害有: 22例、無:22例)についてddPCRによるプロウイルスの性状解析と病態との比較を行ったところ、特に5’欠損型のHIVリザーバー細胞との関連が示唆されるデータを得た。悪性腫瘍についても解析を進めたところ、5’欠損型のHIVリザーバー細胞との関連が示されたものの、血管障害とは異なるプロウイルス領域を持つ欠損型HIVリザーバー細胞が関与している可能性が示唆された。分担2(大野):血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌に対する重粒子線治療は安全で局所効果も良好であるが、肝内再発に対する戦略が必要と考えられた。分担3(永田):下部内視鏡検査は97件(1.9件/人)であり、消化管出血合併症は4.1%と判明した。精査のための生検処置(45件)と前癌病変・早期癌病変の治療(45件)が大半を占め、上部と比較し下部では癌精査や治療のための処置率が高い。そのため検査後の出血率が高かった可能性がある。また、上部・下部内視鏡処置に伴う重篤な偶発症(消化管穿孔、循環動態悪化、感染症など)は1例も認めなかった。分担4(下村):HIV 感染を有する患者であっても、抗HIV薬内服で免疫状態が安定していれば、標準抗癌剤治療は安全に行えることが、明確となった。本結果を論文として公表した。PLWHと非HIV感染者でNADMの病態が異なるかを検討する研究計画を開始した。
結論
血友病HIV患者に発症する非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) の早期発見と非侵襲的治療法の研究と診療体制整備のための研究を行った。これまで行ってきた癌スクリーニング検査を継続するとともに、全国の診療施設で参照可能な癌スクリーニングの手引の発行、群馬大学における摘出不能肝細胞癌に対する重粒子線治療の大阪地区や九州地区での実施拡充などにより、これまでの研究成果を全国へ展開する研究を進めた。血友病患者における内視鏡治療や抗がん剤治療の安全性や有効性について検証を実施した。解析結果を報告する予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202419003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
第一期から今回の第三期までのがんスクリーニングで、新規NADMを9例(罹患率1.51/100人年)、再発例を含むと計17例診断(罹患率2.84/100人年)しており、HIV感染血友病例が高頻度で NADMを発症することを示した。悪性腫瘍例についてddPCRによるプロウイルスの性状解析と病態との比較を行ったところ、5’欠損型のHIVリザーバー細胞が関与する可能性が示唆された。HIV患者における癌の発生状況ならびに予後を、ADMとNADMに分類し比較し、英文報告を行った。
臨床的観点からの成果
血友病/HIV/HCV重感染患者6例の診療経験より、肝臓癌に対する重粒子線治療の安全性、良好な局所効果を確認した。血友病例における消化管内視鏡検査の解析では、下部内視鏡検査97件のうち、消化管出血は4.1%と判明した。精査のための生検処置(45件)と前癌病変・早期癌病変の治療(45件)が大半を占め、下部では癌精査や治療が多いために出血率が高かった可能性が示唆された。がんと診断されたHIV患者の解析では、抗HIV薬内服で免疫状態が安定していれば、標準抗癌剤治療は安全に行えることを明確にした。
ガイドライン等の開発
『血友病HIV/HCV感染者に対する癌スクリーニングの手引き』を作成し、ホームページに公開し、QRコードで全国の医療施設からアクセス可能とした。今後、研究班で得られる最新のデータを元に、順次改訂予定である。HIV感染血友病患者における上下部内視鏡について、内視鏡学会のガイドラインを統合・考慮し、「血友病患者における内視鏡マネージメント案」(図1)を提案した。
その他行政的観点からの成果
エイズブロック拠点病院では、がんスクリーニングを開始している施設もあり、本研究で得られた知見が全国の救済医療へと貢献している。血友病/HIV/HCV共感染者が全国で、重粒子線治療を受けることができる様に、大阪地区、九州地区で医療を受けることができる体制を整えた。収集された結果は、毎年2回開催されるエイズ動向委員会や他の研究班の成果の検証にも活用され、我が国のHIV感染症/AIDS対策の推進に貢献している。
その他のインパクト
今後はがんスクリーニングの対象者を拡大し、関東甲信越ブロックのHIV感染血友病患者を対象とし、全国の救済医療へ貢献する。非HIV患者とHIV患者における癌の予後に違いの評価・検討を行う予定で、研究施設のネットワークを構築した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
46件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドライン作成。『血友病 HIV/HCV 感染者に対する癌スクリーニングの手引き』を作成。ホームページに公開するとともに、QRコードにて全国の医療施設からアクセス可能とした。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ACCウエブサイトによる啓発。『血友病 HIV/HCV 感染者に対する癌スクリーニングの手引き』を作成。ホームページに公開するとともに、QRコードにて全国の医療施設からアクセス可能とした。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ando K., Shimomura A., Watanabe K., et al.
Impact of HIV status on prognosis of malignancies among people living with HIV in Japan
Cancer , 130 (18) , 3180-3187  (2024)
10.1002/cncr.35351

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202419003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,992,000円
(2)補助金確定額
28,610,000円
差引額 [(1)-(2)]
7,382,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 40,691円
人件費・謝金 9,979,672円
旅費 5,023,009円
その他 5,261,912円
間接経費 8,305,000円
合計 28,610,284円

備考

備考
千円未満の額284円は自己資金。

公開日・更新日

公開日
2026-06-25
更新日
-