iTestingチャネルによるHIV検査体制の構築と確立のための研究

文献情報

文献番号
202419001A
報告書区分
総括
研究課題名
iTestingチャネルによるHIV検査体制の構築と確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 椎野 禎一郎(国際医療研究センター 臨床研究センター・データサイエンス部)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 野口 靖之(愛知医科大学 医学部 産婦人科学教室)
  • 吉田 理加(愛知県立大学 外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、HIVスクリーニング検査の結果通知方法の改定(2021年)やコロナ禍による検査数減少という背景のもと、日本国内でAIDS発症時に初診断される割合が依然として高いことを踏まえ、柔軟かつ多様なHIV検査体制の構築を目的とした。従来の検査啓発が届きにくい層にも届くよう、匿名性・利便性を重視した新たな検査モデル「iTesting」を導入・評価し、広く受検機会の提供を図ることを目指した。
研究方法
愛知県・名古屋市を対象に、疫学・アウトリーチ・検査診療の3グループが連携し研究を実施。
1. 疫学グループは、pol領域の遺伝子解析により地域伝播クラスタ(dTC)の特定と動向分析を行った。
2. アウトリーチグループは、受検者アンケートを通じて層別の検査行動を解析、多言語資材やSNS・動画などを活用した広報活動を展開した。
3. 検査診療グループは、複数の医療機関との連携による検査導線の整備と、動画による受検支援、マニュアル作成などを行った。いずれも匿名検査で、倫理審査を経て実施された。
結果と考察
iTesting@Nagoyaでは1年間で1059人、@Aichi&NMCでは691人が受検。HIV陽性率は0.57〜0.69%、陽性未確認率は0%で、匿名性と利便性が高く評価された。分子疫学的解析では、B-TC3やB-TC98などの地域クラスターが確認され、特にB-TC98ではコロナ禍以前の系統の再燃が示唆された。アンケート解析からは、GBM層にはアプリ広告、non-GBM層には行政広告が効果的であるとされ、性感染症に関するスティグマを配慮した広報方法が重要とされた。翻訳や動画も活用され、効果的な多言語アウトリーチが実現した。
結論
本研究は、HIV検査機会の多様化と拡充によって、検査未経験者や検査から遠ざかっていた層へのアクセスを改善し、柔軟な検査体制の構築が可能であることを示した。分子疫学的手法により地域特有のクラスター動態を明らかにし、リスク集団への迅速な介入が可能となった。多言語対応やSNSによる広報も実績を挙げ、検査体制整備のためのマニュアルはWebサイトに公開された。これらの成果は、今後の感染症危機への備えにも資する重要な知見である。

公開日・更新日

公開日
2026-10-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-20
更新日
-

文献情報

文献番号
202419001B
報告書区分
総合
研究課題名
iTestingチャネルによるHIV検査体制の構築と確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 椎野 禎一郎(国際医療研究センター 臨床研究センター・データサイエンス部)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 野口 靖之(愛知医科大学 医学部 産婦人科学教室)
  • 吉田 理加(愛知県立大学 外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、COVID-19パンデミックにより従来のHIV検査体制が大きな制限を受ける中、公衆衛生危機下においても継続可能で、かつ受検者・医療従事者双方にとって利便性の高いHIV検査の提供体制を構築することを目的とした。日本では、HIV診断時にAIDSを発症しているケースが依然として多く、検査へのアクセスに課題がある。2021年3月には、スクリーニング検査の結果告知を外部委託可能とする制度改定もあり、従来型に加えて新しい検査様式の導入が可能になった。この背景を踏まえ、本研究ではiTestingモデルという新たな検査提供チャネルを導入し、匿名性・利便性・多様性を兼ね備えた検査体制の実践と評価を行った。また、検査結果の確実な通知、公正なフォローアップ、多言語対応を含む包括的な啓発体制の整備も目的に含め、多彩な背景を持つ受検者への接触機会の拡大を図った。
研究方法
本研究の対象地域は愛知県・名古屋市とし、iTesting@Nagoya(イベント型)、iTesting@Aichi&NMC(医療機関内常設型)、の2種の検査チャネルを構築した。検査はすべて匿名で行い、受検者と検査従事者を対象としたアンケートを通じてPDCAサイクルを回しながら体制の改善を重ねた。疫学的側面では、名古屋医療センターで薬剤耐性検査を受けた患者のpol領域の遺伝子配列を解析し、国内伝播クラスタ(dTC)を同定・分析した。アウトリーチ活動では、GBMおよびnon-GBMを対象にしたアンケート解析、検査啓発用の多言語資料・動画の作成、多言語ウェブサイトの整備、SNS広告を実施。さらに、翻訳精度を担保するため、機械翻訳と逆翻訳を組み合わせた多言語情報提供体制を確立した。検査・診療グループではクリニックでの導線・業務体制に関する調査を行い、導入の課題と可能性を検証した。
結果と考察
3年間でiTesting@Nagoyaでは2,795名、iTesting@Aichi&NMCでは1,926名が受検し、いずれも陽性未確認率0%を達成し、結果通知の確実性が確保された。疫学的解析では、東海地方におけるHIV感染者の多くがサブタイプBのクラスタに属し、特にB-TC2、3、63、98などで地域的な再流行が見られた。B-TC76では、外国人や女性に偏りが見られ、新たなリスク集団の存在が示唆された。受検者アンケートでは、GBMでは外国籍・非正規雇用・イベント検査や郵送検査の利用が多く、検査経験が豊富である一方、若年層では検査未経験者が多く、費用や利便性が受検行動に大きく影響していた。non-GBMでも29歳以下で検査未経験者が多かった。広報面では、GBMは出会い系アプリ、non-GBMは名古屋市のウェブサイトからの情報接触が主流であった。クリニックでの検査体制構築は、検体処理や安全管理上の課題から実現が難しく、一部見直しを要する結果となった。
研究で導入されたiTestingモデルは、検査未経験者や若年層など従来の施策では接触困難だった層への新たなアクセス経路を提供するものであり、検査ハードルの低減に寄与した。とくに匿名・高利便性という特性により、受検者にとって安心して検査を受けられる環境が整備され、結果として陽性未確認率0%という高完了率につながった。また、医療従事者側にとっても、複数回従事することで経験値が蓄積され、現場対応力が強化された。加えて、検査体制の運用・改善を通じて得られた知見はホームページ等にまとめられ、他地域への展開の素地となる資源が整備された。一方で、クリニックでの導入には実施体制・安全管理体制・契約上の課題が残り、実装の難しさも明らかとなった。今後は、地域の医療機関ごとの事情に応じて導入方法を柔軟に設計し、支援体制を整える必要がある。また、多言語アウトリーチ体制の整備により、外国人層への接触も一定の成果が見られ、言語的・文化的バリアを超える仕組みの意義が確認された。
結論
本研究は、COVID-19のような社会的混乱下においてもHIV検査体制を維持・発展させることが可能であることを実証した。iTestingモデルは匿名性と利便性を兼ね備え、検査完了率の向上と受検者の心理的負担軽減に成功した。従来の施策で接触が難しかった若年層・外国籍住民・非正規雇用者層にもリーチできたことは、今後のHIV対策における重要な進展である。また、医療従事者の経験値蓄積や対応力強化、多言語アウトリーチの実践は、地域医療の能力強化にも資する成果であった。一方で、クリニックへの導入には実務上の障壁が残り、今後の改善課題として対応が求められる。今後はこれらのノウハウを積極的に公開・共有しつつ、地域の実情に応じたHIV検査体制の設計と支援を進め、持続可能な感染症対策としての機能を強化していくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-10-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202419001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、HIV感染者の分子疫学的解析を通じて地域における伝播クラスターの構造と動態を明らかにし、新たなリスク集団(女性・外国人)の存在を同定した。また、セクシュアリティや就労形態に基づく検査行動の差異を明示し、検査施策のターゲティングに資する知見を得た。さらに、多言語翻訳に逆翻訳と前編集を導入する方法論的工夫も、学術的に新規性のある取り組みと評価される。
臨床的観点からの成果
名古屋医療センターを中心とするiTestingモデルは、陽性未確認率0%という高い受診完了率を実現し、検査から診断・医療アクセスまでの連携を確保する仕組みとして有効性が示された。匿名・無料・即時結果確認などの要素が臨床現場での負担軽減や対応力向上に寄与し、実務的に継続可能な検査体制モデルとして評価された。従事者の経験蓄積による運営効率の向上も臨床的利点である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
行政と連携したiTesting@Nagoya・@Aichi&NMCの展開は、公的資源を活用しながら柔軟で持続可能な検査体制を構築した好例である。多言語広報やウェブ予約、マニュアル整備により、自治体主導の感染症対策の高度化に貢献した。とくに若年層や外国籍住民へのアウトリーチは行政の健康格差是正施策と整合し、他自治体への展開支援可能なモデルとして意義がある。
その他のインパクト
検査未経験者や社会的周縁層への検査アクセスが向上したことで、社会的包摂と健康の公平性の観点からも意義ある成果が得られた。啓発動画やSNSを活用した多言語コミュニケーションは、新たな情報提供手段として市民参加型の保健活動を推進した。また、研究成果やマニュアルは他地域・他疾患対策への応用可能性を持ち、今後の災害・パンデミック時の検査体制整備にも資する。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
21件
講演20件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Y. Yokomaku, T. Noda, M. Imahashi, Y. Nishioka, et al.
Antiretroviral therapies and status of people living with HIV in Japan: An update from hospital survey and national database
PLoS One , 20 (1) , e0317655-  (2025)
10.1371/journal.pone.0317655
原著論文2
K. Mizuki, T. Ishimaru, M. Imahashi, et al.
Workplace factors associated with willingness to undergo human immunodeficiency virus testing during workplace health checkups
Environ Health Prev Med  (2023)

公開日・更新日

公開日
2026-10-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
202419001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
17,633,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,867,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,202,994円
人件費・謝金 1,861,126円
旅費 1,037,958円
その他 4,031,108円
間接経費 4,500,000円
合計 17,633,186円

備考

備考
1000円未満切り捨てのため

公開日・更新日

公開日
2026-10-21
更新日
-