公的医療及び社会の立場からのワクチンの費用対効果の評価法及び分析方法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202418013A
報告書区分
総括
研究課題名
公的医療及び社会の立場からのワクチンの費用対効果の評価法及び分析方法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HA1007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 中(東京大学 大学院薬学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
  • 森脇 健介(立命館大学)
  • 小林 美亜(山梨大学大学院総合研究部医学域 臨床医学系(附属病院 病院経営管理部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本におけるワクチンの費用対効果評価の手法を体系的に整備することを目的として実施された。具体的には、今後定期接種化が見込まれるワクチンに関して、国内外の経済評価ガイドラインの比較や費用対効果に関する文献レビュー、独自のモデリング分析、さらに生成AIの応用可能性の検証を行い、日本の制度整備に資する知見の蓄積を目指した。
研究方法
第一に諸外国の経済評価ガイドラインを対象に、医薬品全般とワクチンに特化したガイドラインを収集・比較し、分析視点、費用項目、モデル構造、感度分析などの観点から共通点と相違点を明らかにした。第二に、成人用肺炎球菌ワクチン(PPSV23、PCV15、PCV20)に関する18件の費用対効果研究を体系的にレビューし、対象年齢や間接効果、割引率、研究資金提供の有無といった要素が分析結果に与える影響を検討した。第三に、帯状疱疹ワクチン(生ワクチン、組換えワクチン)について、自然歴に基づくマルコフモデルを用い、50歳以上の日本人高齢者を対象に接種戦略を比較した。第四に、生成AI(ChatGPT)を用いて、高齢者向けRSVワクチンの費用効果モデルを構築し、その有用性と限界を実証的に検討した。
結果と考察
経済評価ガイドラインにおいては、QALYに基づく費用効用分析や感度分析の実施など基本構造は共通している一方、社会的視点の重視や割引率の設定、ワクチン特有のモデル(感染動態、免疫指標等)の扱いには各国で大きな違いがあった。成人用肺炎球菌ワクチンでは、PCV20が高い費用対効果を示す一方、研究の多くが製薬企業から資金提供を受けており、評価への影響が懸念された。帯状疱疹ワクチンでは、組換えワクチンが比較的若年の高齢者層において費用対効果が高く、一方で75歳以上では生ワクチンの方が経済的に優れるケースも見られた。生成AIの活用については、構造設計やパラメータ抽出などにおいて効率化が可能であることが示されたが、モデルの妥当性を担保するには専門家による検証が不可欠であることが明らかとなった。
結論
今後の日本におけるワクチン費用対効果評価においては、感染症の特性を踏まえた評価手法の整備、社会的視点を含む多元的な分析、対象年齢別の柔軟な戦略立案、そして生成AIの適切な活用とリスク管理が重要な課題であると結論づけられた。今後の制度構築においては、科学的妥当性と実務的有用性を両立した枠組みの整備が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-09-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202418013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,745,000円
(2)補助金確定額
4,745,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 838,057円
人件費・謝金 781,083円
旅費 193,411円
その他 1,837,449円
間接経費 1,095,000円
合計 4,745,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-09-08
更新日
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