文献情報
文献番号
202417041A
報告書区分
総括
研究課題名
見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 原 直人(国際医療福祉大学 保健医療学部 視機能療法学科)
- 秋山 久尚(聖マリアンナ医科大学 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現行の視覚障害の認定基準(平成30年7月改訂)の検証と、現行の認定法では視覚障害の適切な評価が難しいと指摘されている症状(羞明、眼瞼痙攣、片眼失明者等)を有する者への障害認定と生活支援のあり方について検討することを目的とする。
テーマ1:現行の視覚障害の認定基準の検証と課題の検討(以下 認定基準研究と略)
視機能を単一のスコアで数値化できるFunctional Vision Score(FVS)は高い信頼性、視覚関連QOLとの相関性、患者への理解容易性等の利点を有しているが、FVSの視野成分であるFFSはゴールドマン視野計(GP)を用いる必要がある。2018年の日本の視覚障害認定基改訂では既存のGPに加え、自動視野計(AP)による評価が導入され、両眼開放Estermanテスト(Estermanと記載)の視認点数と10-2プログラムの26dB以下の感度点数が用いられている。今年度はAPを用いたFVSの開発とその妥当性を検討する.
テーマ2:「眼球使用困難症候群」の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究(以下 眼球使用困難症候群研究と略):眼球の機能は十分あるのに、その機能の使用を著しく困難にする様々な要因(羞明、眼痛、混乱視、開瞼失行など)を有する病態では、障害程度を判定するには、現行の視力や視野測定では判定が困難で病態を解明し妥当な判定基準を作成する。
テーマ1:現行の視覚障害の認定基準の検証と課題の検討(以下 認定基準研究と略)
視機能を単一のスコアで数値化できるFunctional Vision Score(FVS)は高い信頼性、視覚関連QOLとの相関性、患者への理解容易性等の利点を有しているが、FVSの視野成分であるFFSはゴールドマン視野計(GP)を用いる必要がある。2018年の日本の視覚障害認定基改訂では既存のGPに加え、自動視野計(AP)による評価が導入され、両眼開放Estermanテスト(Estermanと記載)の視認点数と10-2プログラムの26dB以下の感度点数が用いられている。今年度はAPを用いたFVSの開発とその妥当性を検討する.
テーマ2:「眼球使用困難症候群」の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究(以下 眼球使用困難症候群研究と略):眼球の機能は十分あるのに、その機能の使用を著しく困難にする様々な要因(羞明、眼痛、混乱視、開瞼失行など)を有する病態では、障害程度を判定するには、現行の視力や視野測定では判定が困難で病態を解明し妥当な判定基準を作成する。
研究方法
テーマ1 認定基準研究
1)FVSによるAPを用いた評価手法の開発
APを用いた両眼開放Estermanテストの視認点数とGP-FFSの相関分析、及びAPの両眼開放Estermanテスト結果からAP-FFSを予測する式を作成、GP-FVSとAP-FVSの一致率検証も実施した。
2)片眼のみの失明者の順天堂医院の受診状況調査を1年間にまで拡大し検討した。
テーマ2:眼球使用困難症候群研究
1)多施設研究「眼球使用困難症候群の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究」を実施し、該当患者のエントリーを2024年度より2025年3月までに100例の登録を目標とした。
①主要評価項目(Primary endpoint)
「眼球使用困難症」患者の社会生活困難さの程度と各医学的検出因子(脳波、自律神経検査)による検出度との関係を評価:本疾患患者群の医学的発症機序の解明
②副次評価項目(Secondary endpoint)
「眼球使用困難症」の社会生活困難さの程度と自覚症状に関するアンケート調査との関連性評価
1)アンケート調査(全施設・全例実施)
(1)各症状の観察期間中の臨床的評価
(2)観察期間中に行われた対症療法や処置に対する定性的評価
(3)精神心理的負担の評価
(4)社会生活、日常生活上の不都合や支障(生活のしづらさ)の推移
2)生理学的検査
①自律神経機能検査
心拍変動解析・瞳孔反応により自律神経機能を解析評価
②脳派検査
脳波検査(脳波モニターMWM20)を実施しの波形解析評価
2.「眼球使用困難症候群」と関連する眼痛をきたす疾患の調査および、片頭痛診療から見た治療法の探索を行なった
1)FVSによるAPを用いた評価手法の開発
APを用いた両眼開放Estermanテストの視認点数とGP-FFSの相関分析、及びAPの両眼開放Estermanテスト結果からAP-FFSを予測する式を作成、GP-FVSとAP-FVSの一致率検証も実施した。
2)片眼のみの失明者の順天堂医院の受診状況調査を1年間にまで拡大し検討した。
テーマ2:眼球使用困難症候群研究
1)多施設研究「眼球使用困難症候群の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究」を実施し、該当患者のエントリーを2024年度より2025年3月までに100例の登録を目標とした。
①主要評価項目(Primary endpoint)
「眼球使用困難症」患者の社会生活困難さの程度と各医学的検出因子(脳波、自律神経検査)による検出度との関係を評価:本疾患患者群の医学的発症機序の解明
②副次評価項目(Secondary endpoint)
「眼球使用困難症」の社会生活困難さの程度と自覚症状に関するアンケート調査との関連性評価
1)アンケート調査(全施設・全例実施)
(1)各症状の観察期間中の臨床的評価
(2)観察期間中に行われた対症療法や処置に対する定性的評価
(3)精神心理的負担の評価
(4)社会生活、日常生活上の不都合や支障(生活のしづらさ)の推移
2)生理学的検査
①自律神経機能検査
心拍変動解析・瞳孔反応により自律神経機能を解析評価
②脳派検査
脳波検査(脳波モニターMWM20)を実施しの波形解析評価
2.「眼球使用困難症候群」と関連する眼痛をきたす疾患の調査および、片頭痛診療から見た治療法の探索を行なった
結果と考察
テーマ1 認定基準研究
1. FVSとAPを用いた評価手法の開発
240人を分析対象とした検討で FFSを算出する予測式(FFS = APによる両眼エスターマンテストの視認点数×0.41+37.0)を導き出した。本予測式により算出したFFSから得られたAP-FVSと従来の方法から得られるGP-FVSは強い相関(r=0.77; 95%CI:0.71-0.81)を示した。AP-FVSとGP-FVSの差の平均は-1.03(95%CI:-15.60-13.54)であり、加重κ値は0.85 であった。
2.順天堂医院における片眼失明の頻度調査では2021年10月1日から1年間3623名のうち片眼のみの失明者61例(1.7%)であり最終受診時には41例(1.1%)であった.
テーマ2 眼球使用困難症候群研究
多施設研究において91例の症例の登録がおこなわれ86例の中間的解析では以下の知見がえらえた
1)羞明や眼痛が非常に強く、開瞼困難や社会生活上の著しい制限を訴える症例が多数存在した.
2)女性に多くみられる傾向が明らかとなった.
3)羞明の重症度は遮光レンズの視感透過率とある程度の相関を示した.
3)自律神経の不安定性が一部の症例が認められた.
4)脳波検査においては、光刺激によるてんかん様反応は誘発されなかった.
1. FVSとAPを用いた評価手法の開発
240人を分析対象とした検討で FFSを算出する予測式(FFS = APによる両眼エスターマンテストの視認点数×0.41+37.0)を導き出した。本予測式により算出したFFSから得られたAP-FVSと従来の方法から得られるGP-FVSは強い相関(r=0.77; 95%CI:0.71-0.81)を示した。AP-FVSとGP-FVSの差の平均は-1.03(95%CI:-15.60-13.54)であり、加重κ値は0.85 であった。
2.順天堂医院における片眼失明の頻度調査では2021年10月1日から1年間3623名のうち片眼のみの失明者61例(1.7%)であり最終受診時には41例(1.1%)であった.
テーマ2 眼球使用困難症候群研究
多施設研究において91例の症例の登録がおこなわれ86例の中間的解析では以下の知見がえらえた
1)羞明や眼痛が非常に強く、開瞼困難や社会生活上の著しい制限を訴える症例が多数存在した.
2)女性に多くみられる傾向が明らかとなった.
3)羞明の重症度は遮光レンズの視感透過率とある程度の相関を示した.
3)自律神経の不安定性が一部の症例が認められた.
4)脳波検査においては、光刺激によるてんかん様反応は誘発されなかった.
結論
1. FVSはAPの結果からも予測可能あり、GPの利用が制限されるような状況において、FVS-APは視覚障害の評価方法として信頼できる代替手段となり得る
2. 大学附属病院眼科初診患者の約1%が片眼のみ失明者であることが推定された
3. 「眼球使用困難症候群」91例の症例登録が行われ
多様な臨床情報がえられ研究継続により有用な成果が得られると思われる
2. 大学附属病院眼科初診患者の約1%が片眼のみ失明者であることが推定された
3. 「眼球使用困難症候群」91例の症例登録が行われ
多様な臨床情報がえられ研究継続により有用な成果が得られると思われる
公開日・更新日
公開日
2025-07-04
更新日
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