文献情報
文献番号
201001026A
報告書区分
総括
研究課題名
所得水準と健康水準の関係の実態解明とそれを踏まえた医療・介護保障制度・所得保障制度のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-政策・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
- 中村 さやか(横浜市立大学 国際総合科学部)
- 野田 寿恵(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
- 近藤 尚己(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
- 府川 哲夫(田園調布学園大学 人間福祉学部社会福祉学科)
- 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は個人属性を踏まえた所得と健康の関係を明らかにすることにより、所得保障のあり方を踏まえた医療保障制度のあり方を具体的に示すことである。健康の低下による所得や医療費負担能力の喪失は医療保障制度と所得保障制度にまたがる重要な課題である。しかし、所得と健康の因果関係の方向性はデータの制約もあり必ずしも明らかではない。そこで、ミクロデータを用いて、所得と健康の関係を制度の効果を捉えつつ明らかにする。
研究方法
本研究は大別して3種類のデータを用いて実証分析を行う。1)公的統計、2)市町村での調査、3)個人に対するヒアリング・アンケート調査、である。本研究は既存の公的統計調査を活用する1)が主体となるものであるが、公的統計調査はその限界も当然存在する。このため、2)、3)の方法によりそれを補完する。
結果と考察
本年度得られた結果を抜粋すると、1)65歳未満の年齢階級別医療費が制度別に大きく異なり、その効果が国民健康保険制度においては医療費の11%に到達すること、2)その医療費構造の違いは、精神および行動の障害、腎尿路生殖器系の疾患によると考えられたこと、3)研究班で実施した「健康と引退に関する調査」により三大疾病(循環器疾患)の罹患が中高年男性の就業を阻害し早期に引退する可能性があること、それによる所得低下が一年で600万円に達する可能性があること、4)低所得世帯の子どもは受診開始や健康水準が低い可能性が示唆されたこと、5)また、受診開始以後において、高所得世帯の子どもは長期間受診を継続する傾向もみられたこと、である。
上記の結果は、就業者について、健康毀損による就業不能が所得低下をもたらし、さらに就業状態の変化により当事者が医療保険制度を異動することを通じて、医療保険制度別の罹患率や医療費に影響を与えている可能性が示唆していると考えられた。また、子どもについては、親世代の所得水準が受診行動に影響を与えていることを示唆していると考えられた。
上記の結果は、就業者について、健康毀損による就業不能が所得低下をもたらし、さらに就業状態の変化により当事者が医療保険制度を異動することを通じて、医療保険制度別の罹患率や医療費に影響を与えている可能性が示唆していると考えられた。また、子どもについては、親世代の所得水準が受診行動に影響を与えていることを示唆していると考えられた。
結論
就業者について健康から所得への因果関係が、子どもの医療機関受診について親の所得の影響が観察された。次年度に、1)医療費使用と就業状態、加入保険制度の異動の関係についてより詳細に検討すること、2)親の所得水準別に乳幼児医療費助成制度の効果を検討すること、3)医療保険制度の若年加入者について、医療費リスク調整の必要性を検討すること、が必要であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-06-02
更新日
-