ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルによる所得保障施策の評価・分析に関する研究

文献情報

文献番号
201001023A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルによる所得保障施策の評価・分析に関する研究
課題番号
H22-政策・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 誠一(一橋大学 経済研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高山 憲之(一橋大学 経済研究所)
  • 小塩 隆士(一橋大学 経済研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを用い、日本社会の将来における世帯構造、所得、税・社会保険料負担などについて、世帯・個人単位での政策シミュレーションを実施する。そのシミュレーション結果を基に、想定される様々な社会保障制度や税制改革案について、現時点だけでなく、中長期、そして21世紀末までの超長期の各時点における所得分布などに及ぼす効果を定量的に評価し、長期の時間軸を考慮した視点から、望ましい社会保障政策や税制の改革について検討を行う。
研究方法
 既存のモデル(INAHSIM)に機能追加を行い、政策シミュレーションを実施し、分配面からの評価を行う。政策評価の対象とする所得保障施策は、年金制度改革を中心に、給付付き税額控除制度の導入や子ども手当の導入についても検討を加える。
 基本的な政策評価は、制度改革によって、貧困率をどれだけ改善されるか、追加費用はどれくらい必要かという点に加え、負担と給付との関係から公平性が確保できるかについても検証する。
結果と考察
 年金制度改革案について政策シミュレーションを試みた結果、民主党案を想定した全国民共通の所得比例年金と最低保障年金は、制度移行に時間がかかり、当分の間は、貧困高齢者の改善効果が見込めないこと、超長期では大きな改善効果が見込めるものの、巨額の追加財源が必要となることが明らかになった。また、基礎年金の一部を税方式とする改革案は、貧困高齢者を直ちに削減するとともに、追加財源が最小限に抑えられることがわかった。
 ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルは、個票データのレベルで将来推計を行う手法であり、各種の社会政策が将来の所得分布に及ぼす定量的な影響評価など、特に分配面から政策評価をするために有効なツールであり、本研究でもその効果が実証された。
結論
 ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルは、所得保障施策の評価・分析に極めて有効なツールであることが明らかになった。ただし、政策シミュレーションに当たっては、モデルの開発のみならず、初期値人口データの作成と検証、様々な個々人の行動を表す遷移確率の想定が必要不可欠であり、多くの分野の研究者の共同研究が重要である。
 本年度の研究では、年金制度改革によって、個々人の行動に基本的に変化がないという想定の下でシミュレーションを実施したが、次年度では、制度変更による人々の行動変化を内生化した上で、今後の労働供給の変化や年金財政への影響をダイナミック・マイクロシミュレーションモデルに基づいて分析することなどが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201001023Z