強度行動障害者支援のための指導的人材養成プログラムの開発および地域支援体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202417029A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害者支援のための指導的人材養成プログラムの開発および地域支援体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1015
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 潤(北海道大学大学院教育学研究院)
  • 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科)
  • 會田 千重(国立病院機構 肥前精神医療センター 統括診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3年計画の3年目である令和6(2024)年度は、中核的人材養成研修を全都道府県対象に実施し、広域的支援人材(指導的人材)の育成にとって効果的な運営方法、研修内容となっているのか、広域的支援人材に必要な研修内容や地域の体制整備は何か等について明らかにすることを目的とした。
研究方法
令和6(2024)年度は大きく以下4つの調査研究を行った。
① 広域的支援人材の養成を見据えた中核的人材養成研修プログラムの作成に関する研究将来的な広域的支援人材を、中核的人材養成研修のサブ・トレーナーとして位置づけ、強度行動障害者支援のコンサルテーション経験が豊富なトレーナーの助言方法等をOJTの形で学ぶ形式とした運営方法が、サブ・トレーナーや受講者等にどのような効果をもたらしたかを把握するため、複数尺度を用いた研修前後の変化の比較およびアンケート調査、関係団体へのヒアリングを行った。
② 広域的支援人材の研修ニーズに関する研究
将来的な広域的支援人材が、どのような研修を必要とするのかを把握するため、都道府県で広域的支援人材の活動が想定される者に対して参加者、過去に受けたトレーニング内容などのアンケート調査を行った。
③ 地域支援体制の整備に関する研究
広域的支援人材が、活動する際の地域の体制整備状況を把握するため、都道府県と政令指定都市67自治体へ、強度行動障害の状態にある人の受け入れ事業所数、関係団体等との連携状況、自治体事業や研修の実施状況などに関するアンケートを行った。
④ 強度行動障害支援者養成研修の教育分野における活用に関する研究
将来的な教育分野との連携を推進するための諸要因を把握するため、国立のぞみの園が実施した強度行動障害支援者養成研修を受講した教師が所属する8校の管理職10名を対象に、研修派遣理由や効果などのヒアリング調査を行った。
結果と考察
① 広域的支援人材の養成に関する効果としては、受講者、事業所の支援、利用者の行動について改善を示す変化が見られ、アンケート、ヒアリングにおいて、肯定的な意見が多く見られた。一方、今後都道府県での実施を想定した場合に、講師や運営ができる人材の確保が課題となることが考えられた。
② 広域的支援人材の活動を行うためには、中核的人材養成研修内でのOJTに加えて、「実践者同志の交流」「効果的なアセスメントツールの習得」「利用者とのコミュニケーション方法やマネジメントスキルの獲得」などが求められる可能性があることが把握された。中核的人材養成研修以外の研修企画の確保も必要になると考えられた。
③ 現状で、都道府県が、強度行動障害者支援に関する体制整備状況の把握・分析をしているのは12自治体にとどまっていた。今後は、先行して体制整備を進めている都道府県の事例を整理し、全国でそのプロセスを共有できるようにすることが必要になると考えられた。 
④ 教育分野での、強度行動障害に関する支援体制は個別の教員とその周辺の努力にとどまり、組織立てられたものにはなっていないことが把握された。障害福祉分野と同様、学校内の中核的人材養成、外部専門的人材との定期的な連携ができる環境づくり等が必要とされていると考えられた。
結論
本研究を通し、中核的人材養成研修のプログラムの提言、広域的支援人材の養成イメージを明らかにするとともに、地方自治体における次の広域的支援人材の候補者を、中核的人材養成研修を行う過程で見つけ、人材の発掘と育成を全国各地で継続的に行う仕組みを開発することができた。また、地域支援体制の構築に向けた継続的な情報交換を行う仕組み作りに着手した。

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

文献情報

文献番号
202417029B
報告書区分
総合
研究課題名
強度行動障害者支援のための指導的人材養成プログラムの開発および地域支援体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1015
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 潤(北海道大学大学院教育学研究院)
  • 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科)
  • 會田 千重(国立病院機構 肥前精神医療センター 統括診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、強度行動障害の状態にある児者を受け入れ、適切に対応ができる事業所を地方自治体において確実に確保していくために、①座学だけではなく、実際の支援現場で標準的な支援に取り組みながら成功体験を積むことができる研修プログラムの提言、②①の研修を展開する際の指導的な役割を果たす広域的支援人材の養成、③広域的支援人材を活かす地域支援体制構築を促進する方法を明らかにし、実装に取り組むことを目的とした。
研究方法
本研究は、下記2つの視点から実施した。
1.広域的支援人材を見据えた人材養成の仕組み
■1年目(令和4年度)
人材養成の方法について、先行研究および各地域での取り組み状況をヒアリング調査で把握し、次年度の試行に向けた「中核的人材養成研修(モデル研修)」の開催方法、内容について検討委員会等で検討を行った。
■2年目(令和5年度)
「中核的人材養成研修(モデル研修)」を、10自治体(受講者40名)を対象に実施し、効果と課題に関するアンケート調査を行い、改善案の検討を検討委員会等で行った。また、望ましい広域的支援人材の要件について明らかにするため、全国で現に指導的役割を果たしている者17名にヒアリング調査を行った。
■3年目(令和6年度)
改善した「中核的人材養成研修」を、全都道府県(受講者96名)を対象に実施し、効果と課題に関するアンケート調査を行い、親の会、関係団体へのヒアリング結果も踏まえ、検討委員会等で研修プログラムを確定させるため検討を行った。
将来的な広域的支援人材に必要な研修を把握するため、都道府県で広域的支援人材の活動が想定される者に対して、過去に受けたトレーニング内容などのアンケート調査を行った。

2.地域支援体制整備の促進
■1年目(令和4年度)
都道府県、政令市、中核市を対象としたアンケート調査で把握した「中核的人材養成研修(モデル研修)」への参加に関心の高い自治体(14自治体)を対象に、地域支援体制の整備状況についてヒアリング調査を行った。
■2年目(令和5年度)
「中核的人材養成研修(モデル研修)」へ参加したサブ・トレーナー面接記録より地域支援体制整備の課題について整理、分析を行った。
後の地域支援体制構築において連携強化が期待される教育分野のニーズや課題等について、国立のぞみの園が実施した強度行動障害支援者養成研修を受講した教員8名を対象にヒアリング調査を行った。
■3年目(令和6年度)
広域的支援人材が、活動する際の地域の体制整備状況を把握するため、都道府県と政令指定都市67自治体へ、関係団体等との連携状況、自治体事業や研修の実施状況等に関するアンケート調査を行った。
教育分野との連携推進の諸要因を把握するため、国立のぞみの園が実施した強度行動障害支援者養成研修を受講した教師が所属する8校の管理職10名を対象に、研修派遣理由や効果などのヒアリング調査を行った。
結果と考察
1.広域的支援人材を見据えた人材養成の仕組み
本研究により、広域的支援人材に求められる要素や役割、養成イメージを明らかにすることができた。中核的人材養成研修について、受講者、事業所の支援、利用者の行動について改善を示す変化、アンケート、ヒアリングにおいて、肯定的な意見が多く見られ、有用性が高い研修であると考えられた。
中核的人材養成研修内におけるトレーナーからのOJTだけでは学ぶことができない視点もあった。本研究において行った、広域的支援人材の役割・認識の共有や各地域の実践に関する情報交換を行う仕組みを継続しつつ、今後の広域的支援人材を対象とした研修等の企画において、広域的支援人材に期待される役割と照らし合わせ検討していく必要があると考えられた。
2.地域支援体制整備の促進
施設改修やコンサルテーション派遣などの予算を確保している自治体があり、強度行動障害支援者養成研修等の人材養成予算だけではなく、強度行動障害支援における支援体制整備に向けた予算の使用使途が多様になってきていると考えられた。
一方、強度行動障害支援における支援体制整備に向けた取り組みが未実施である自治体も多数あった。人材・財源確保や事業推進にあたっての情報がほしいニーズもあったことから、支援体制整備促進のため他自治体の情報が閲覧できるデータベースの構築を早急に取り組むこと、各地域の支援体制状況について定期的な情報収集と支援体制整備に関わる者への情報発信を継続して取り組んでいく必要があると考えられた。
結論
本研究を通し、中核的人材養成研修のプログラムの提言、広域的支援人材の養成イメージを明らかにするとともに、地方自治体における次の広域的支援人材の候補者を、中核的人材養成研修を行う過程で見つけ、人材の発掘と育成を全国各地で継続的に行う仕組みを開発することができた。また、地域支援体制の構築に向けた継続的な情報交換を行う仕組み作りに着手した。

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202417029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
強度行動障害支援を行う現場に対して外部から助言等を行う広域的支援人材の養成について、この分野によるエキスパートコンセンサスの確認、国内外の先行事例等の分析などを踏まえてOJTの形で行う研修方法を開発した。さらに、ステークホルダーの意見を踏まえたうえで、全都道府県から参加者を集めた研修を開催につなげた。
臨床的観点からの成果
本研究で構築した研修を実施する中で、「(強度行動障害者支援を行う上での)標準的な支援」の概念が整理され、従前から行われていた、経験則による感覚的な支援ではなく、客観的なアセスメントに基づいたチーム支援が国内のどこでも定着していくことができる環境を用意することができた。
ガイドライン等の開発
本研究において、ガイドライン等の開発は行っていないが、開発された人材養成研修のプログラムは、全国各地で今後開催される研修のモデルとなることとなった。
その他行政的観点からの成果
本研究で人材養成方法を検討した強度行動障害者支援における広域的支援人材は、令和6年度の障害福祉サービスの報酬改定で初めて位置付けられている。本研究の成果が普及し、適切に運用されていくことが、障害者虐待や障害福祉現場での労災、離職の減少等につながっていくものと期待されている。
その他のインパクト
本研究では、強度行動障害者支援における広域的支援人材を周囲から支える地域の支援体制の状況も調査し、データベース化の試行を行った。今後の国内外からの、強度行動障害者支援に関する地域支援体制整備への関心は高まると思われることから、研究終了後も充実強化をすることが求められている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
令和7年度学会において発表予定の3件を含む
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
人材養成研修プログラム作成
その他成果(普及・啓発活動)
7件
講演5件・雑誌への寄稿2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202417029Z