文献情報
文献番号
202417027A
報告書区分
総括
研究課題名
言語聴覚士等による人工内耳・補聴器装用者等に対する遠隔医療の体制整備のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
高野 賢一(北海道公立大学法人札幌医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
離島や国土の面積が広く交通網が脆弱な地域では、専門医療機関へのアクセスが問題となり、遠隔地在住者の通院負担に関する格差、地域毎の医療格差、医療資源・専門家の偏在等が見られてきた。また、新型コロナウイルス感染症に代表される感染症パンデミック、大型地震、台風等の自然災害時にも活用できる遠隔医療(医療ネットワーク)の開発が課題となっていた。
遠隔医療の先進地である欧米諸国では、耳鼻咽喉科領域におけるさまざまな疾患で医療機関へ通院する患者に遠隔医療が整備普及されつつあり、聴覚障害者(人工内耳・補聴器装用者)に対する医療に関しても、医師、言語聴覚士等による遠隔診療の高い有用性と安全性が報告されてきている。現在、国内における聴覚障害に対する遠隔医療は、北海道、長崎県等の一部地域で試行的に実施されているのみで、多施設共同研究による聴覚障害に対する遠隔医療の有用性、安全性の検証は喫緊の重要課題の一つであった。研究代表者(R6年度から交替)らは限定的ではあるものの、そのシステム構築に着手し、人工内耳医療への遠隔医療の導入と実施を進めてきた(Takano K et al. Am J Audiol 2021)。
本研究では、我が国における聴覚障害に対する遠隔医療を推進し、上記の諸課題解決を図るために、各地域での遠隔医療の施行的運用を行い、その有用性および安全性に関して検証し、同遠隔医療体制の基礎システム構築ならびに指針等を成果物として示しつつ、普遍的医療として保険収載、保険点数化について一定の見識を得ることを目的とした。
遠隔医療の先進地である欧米諸国では、耳鼻咽喉科領域におけるさまざまな疾患で医療機関へ通院する患者に遠隔医療が整備普及されつつあり、聴覚障害者(人工内耳・補聴器装用者)に対する医療に関しても、医師、言語聴覚士等による遠隔診療の高い有用性と安全性が報告されてきている。現在、国内における聴覚障害に対する遠隔医療は、北海道、長崎県等の一部地域で試行的に実施されているのみで、多施設共同研究による聴覚障害に対する遠隔医療の有用性、安全性の検証は喫緊の重要課題の一つであった。研究代表者(R6年度から交替)らは限定的ではあるものの、そのシステム構築に着手し、人工内耳医療への遠隔医療の導入と実施を進めてきた(Takano K et al. Am J Audiol 2021)。
本研究では、我が国における聴覚障害に対する遠隔医療を推進し、上記の諸課題解決を図るために、各地域での遠隔医療の施行的運用を行い、その有用性および安全性に関して検証し、同遠隔医療体制の基礎システム構築ならびに指針等を成果物として示しつつ、普遍的医療として保険収載、保険点数化について一定の見識を得ることを目的とした。
研究方法
令和4年度は5施設で人工内耳装用者への遠隔医療システムの構築と安全性評価を実施し、補聴器装用者については認定補聴器専門店と連携してデータ採取方法とマニュアルを整備した。令和5年度には4施設を追加し、施行的データ収集とともに、遠隔と対面医療の有効性・安全性・費用対効果の比較検証を進め、満足度やQOLの評価指標を設定。解析はABBAデザインによる被験者内反復測定法を用いた。令和6年度には、前研究代表者の所属機関における倫理審査体制の不備から代表者を交替し、再審査後にデータ収集を再開。前年度までのデータは無効となったため、速やかな再収集を行い、補聴器装用者のデータも引き続き専門店協力のもと進めた。
結果と考察
人工内耳装用開始から12ヶ月以上経過した6歳以上の患者38例を対象に、対面医療と自宅での遠隔医療の比較を行った。聴取能検査や患者・保護者による聞こえの評価(SSQ12、SSPQ)、診療満足度において、両者間に有意差は見られなかった。一方で、遠隔医療では診療に要する時間や移動距離、費用が有意に少なく、患者の負担軽減につながる結果が得られた。医療従事者の準備・診療時間は両群間で差はなく、遠隔医療は実施回数を重ねることで効率化が進むことも示された。
結論
本研究により、聴覚障害に対する遠隔医療システムの臨床導入が可能であることが示された。人工内耳では自宅と医療機関に専用端末を設置し、Bluetooth接続により遠隔マッピングを実施。補聴器では、専門店端末と患者のスマートフォンを接続し、遠隔でフィッティングを行う。人的・経済的負担も受け入れ可能な範囲であり、対面医療と同等の安全性・有効性と患者負担軽減が確認された。今後、適切な聴覚医療提供の機会拡大やノンユーザーの減少が期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-08-05
更新日
-