文献情報
文献番号
202417017A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科医療機関における専門性の高い看護師の活動実態の把握及びその効果の解明のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1008
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 隆博(東海大学 医学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、全国の精神科医療機関に勤務する、精神看護専門看護師と精神科認定看護師(以下「専門性の高い看護師」)の活動実態を把握するとともに、専門性の高い看護師による活動効果を定量的・定性的調査により明らかにする。また、専門性の高い看護師の効果的な活動の事例集を作成し、全国の精神科医療機関に周知することを目的とする。1年目(令和6年度)は、専門性の高い看護師の配置状況と活動実態の把握を目的とした。
研究方法
本調査は、2024年12月20日から2025年1月20日まで、Webアンケート形式で実施した。調査対象は、精神病床のある医療機関に勤務する精神看護専門看護師(CNS)194名と精神科認定看護師(CEPN)694名、合わせて888名。
CNSへは日本看護協会のメーリングリストを通じて、EPNへは日本精神科看護協会から提供された名簿に基づき郵送で調査を依頼した。
倫理面では、東海大学医学部臨床研究審査委員会で承認を得ており、Webアンケート画面の同意ボタン押下をもって調査協力の同意を得る方式を採用した。回答は自由意思とし、非同意ボタンを押せばいつでも参加を取りやめることができるようにした。
調査項目は、基本属性17項目、診療報酬算定状況1項目、活動内容(施設内)55項目、 活動内容(施設外)1項目の 計74項目とした。
CNSへは日本看護協会のメーリングリストを通じて、EPNへは日本精神科看護協会から提供された名簿に基づき郵送で調査を依頼した。
倫理面では、東海大学医学部臨床研究審査委員会で承認を得ており、Webアンケート画面の同意ボタン押下をもって調査協力の同意を得る方式を採用した。回答は自由意思とし、非同意ボタンを押せばいつでも参加を取りやめることができるようにした。
調査項目は、基本属性17項目、診療報酬算定状況1項目、活動内容(施設内)55項目、 活動内容(施設外)1項目の 計74項目とした。
結果と考察
回答期間内に472名より回答があった(回答率53.2%)。精神看護専門看護師(CNS)72名と精神科認定看護師(CEPN)397名、計469名の回答を有効回答として分析した。
所属施設について、CNSは「特定機能病院」が27.8%とCEPN(11.1%)より高く、「精神病床のみを有する病院」はCEPNが70.8%とCNS(45.8%)より高かった。設置主体は両者ともに「民間病院」が約6割、「国公立病院」が約3~4割を占めた。病床数では、CNSは「500床以上」が最多(29.2%)、CEPNは「200~299床」が最多(24.4%)であった。資格手当はCNSで36.1%、CEPNで31.5%に「あり」と回答された。
職位は両者ともに「中間管理職」が約半数を占める。主な所属先は、CNSが「病棟部門」と「病棟以外の部署・部門」がほぼ同数(48.8%対51.4%)であったのに対し、CEPNは「病棟部門」が67.3%と多かった。CNSの病棟以外では看護部門、CEPNの病棟以外では外来診療部門が多かった。実務経験年数は、CNSは「10~19年」が43.1%と最多、CEPNは「20~29年」が44.3%と最多であった。
CNS・CEPNとしての活動体制では、診療報酬上の加算を算定している割合はCNSが40.3%、CEPNが22.4%であった。両者ともに「精神科リエゾンチーム加算」の算定が最も多い。所属先以外での活動はCNSが84.7%、CEPNが68.0%と高かった。CNSは「定期的な活動ができる体制である」(48.6%)が最多、CEPNは「求めに応じて随時活動できる体制である」(49.9%)が最多であった。活動頻度では、CNSの37.7%が「毎日の活動時間が認められている」と回答した一方、CEPNの36.8%が「特に活動時間は認められていない」と回答した。
実践活動では、「自傷行為がある患者」や「他害行為がある患者」など、困難な精神症状を抱える患者への直接ケアおよび看護職からの相談や教育・指導の実施率が両者ともに高かった。特に「他害行為がある患者」への看護職からの相談・教育・指導は71.0%と高かった。他職種からの相談や教育・指導は全体的に実施率が低かったが、「地域生活に支援を要する患者」では一定数の関与が認められた。
役割に基づく活動状況において、看護実践では、CNSは「複雑な精神の健康問題を抱える患者への看護実践」、CEPNは「身体合併症患者に対するフィジカルアセスメントと身体的ケアの看護実践」の頻度が高かった。指導では、両者ともに「看護職個人に対する精神科看護の技術の向上を目的とする教育的支援」の頻度が高かった。相談では、CNSは「複雑な精神の健康問題を抱える患者へのケア・看護に関する看護職からの相談」、CEPNは「患者との関わりの中で生じるスタッフ自身の葛藤や悩みに関する相談」の頻度が高かった。
組織的活動では、「地域移行・地域定着に向けた支援」「虐待未然防止に関する活動」「行動制限最小化に関する活動」に両者ともに積極的に関与している実態が示された。特に「行動制限最小化に関する活動」は月1回程度の頻度が最も高く、CEPNが委員長を務めるケースも認められた。
所属施設について、CNSは「特定機能病院」が27.8%とCEPN(11.1%)より高く、「精神病床のみを有する病院」はCEPNが70.8%とCNS(45.8%)より高かった。設置主体は両者ともに「民間病院」が約6割、「国公立病院」が約3~4割を占めた。病床数では、CNSは「500床以上」が最多(29.2%)、CEPNは「200~299床」が最多(24.4%)であった。資格手当はCNSで36.1%、CEPNで31.5%に「あり」と回答された。
職位は両者ともに「中間管理職」が約半数を占める。主な所属先は、CNSが「病棟部門」と「病棟以外の部署・部門」がほぼ同数(48.8%対51.4%)であったのに対し、CEPNは「病棟部門」が67.3%と多かった。CNSの病棟以外では看護部門、CEPNの病棟以外では外来診療部門が多かった。実務経験年数は、CNSは「10~19年」が43.1%と最多、CEPNは「20~29年」が44.3%と最多であった。
CNS・CEPNとしての活動体制では、診療報酬上の加算を算定している割合はCNSが40.3%、CEPNが22.4%であった。両者ともに「精神科リエゾンチーム加算」の算定が最も多い。所属先以外での活動はCNSが84.7%、CEPNが68.0%と高かった。CNSは「定期的な活動ができる体制である」(48.6%)が最多、CEPNは「求めに応じて随時活動できる体制である」(49.9%)が最多であった。活動頻度では、CNSの37.7%が「毎日の活動時間が認められている」と回答した一方、CEPNの36.8%が「特に活動時間は認められていない」と回答した。
実践活動では、「自傷行為がある患者」や「他害行為がある患者」など、困難な精神症状を抱える患者への直接ケアおよび看護職からの相談や教育・指導の実施率が両者ともに高かった。特に「他害行為がある患者」への看護職からの相談・教育・指導は71.0%と高かった。他職種からの相談や教育・指導は全体的に実施率が低かったが、「地域生活に支援を要する患者」では一定数の関与が認められた。
役割に基づく活動状況において、看護実践では、CNSは「複雑な精神の健康問題を抱える患者への看護実践」、CEPNは「身体合併症患者に対するフィジカルアセスメントと身体的ケアの看護実践」の頻度が高かった。指導では、両者ともに「看護職個人に対する精神科看護の技術の向上を目的とする教育的支援」の頻度が高かった。相談では、CNSは「複雑な精神の健康問題を抱える患者へのケア・看護に関する看護職からの相談」、CEPNは「患者との関わりの中で生じるスタッフ自身の葛藤や悩みに関する相談」の頻度が高かった。
組織的活動では、「地域移行・地域定着に向けた支援」「虐待未然防止に関する活動」「行動制限最小化に関する活動」に両者ともに積極的に関与している実態が示された。特に「行動制限最小化に関する活動」は月1回程度の頻度が最も高く、CEPNが委員長を務めるケースも認められた。
結論
専門性の高い看護師の活動推進には、組織的な支援体制が関与していることが明らかとなった。そのことから組織的な役割明確化、活動時間の確保、経済的評価の改善が不可欠であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2025-07-01
更新日
-