経済統合及び人口減少下における雇用戦略と社会保障の連携及び家族政策の可能性に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
201001016A
報告書区分
総括
研究課題名
経済統合及び人口減少下における雇用戦略と社会保障の連携及び家族政策の可能性に関する国際比較研究
課題番号
H21-政策・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
井口 泰(関西学院大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野 敦子(京都産業大学 経済学部)
  • 志甫 啓(関西学院大学 国際学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、東アジアを中心とする経済統合と人口減少下における雇用戦略と社会保障政策の連携の方策及び将来における総合的な家族政策の可能性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
 本研究では、①関係するデータの収集及び入力・蓄積、②マクロ又はミクロデータの解析、③政府統計の二次的利用を基礎とする推計フレームの開発、④研究者、政策担当者などのヒアリング調査、⑤日本や各国の法令及び政策動向の分析や、⑥日欧を中心とする各種の国際比較などを実施している。
結果と考察
 東アジアの経済統合など国際経済的な変動や、国内における若年層を中心とする人口減少が大きな背景となって、雇用の非正規化や不安定化が生じるなかで、地域労働市場における需給ミスマッチの多様化と複雑化が進んでいる。そして、不安定化する雇用は、親や配偶者との同居など家族構造にも、無視できない影響を与え、若年層の家族形成を困難にしている。
 わが国の場合、経済や労働市場の変動が、若年層の家族形成に与える影響を緩和する仕組に乏しく、労働市場の変化が人口動態に深刻な影響を与える可能性がある。 
結論
 第1に、労働市場の需給ミスマッチの多様化と複雑化をもたらしている原因は、国内の人口減少のみならず、国際経済的な要因を含んでいる。需給ミスマッチの深刻化を認識して、実態を緻密に解明し、政策対応を強化しなければならない。
 第2に、労働市場の需給ミスマッチの拡大は、若年層の家族形成にマイナスの影響を及ぼしている。経済の変動や労働市場の変動が家族形成に与える影響のチャンネルを遮断する問題は、従来の少子化対策の発想では解決しない。そこでは、雇用の非正規化の進行を抑制するとともに、正規雇用でも非正規雇用でも、家族形成に悪い影響が生じない新たな家族政策を具体化する必要がある。
 第3に、労働市場の需給ミスマッチに、雇用、所得保障、住宅、福祉などの行政施策を戦略的に組み合わせて対処できるよう、国・自治体が一体になった新たな行政組織を法令、人員、予算の裏付けを伴って設立すべきである。
 その際、生活保護制度そのものを改革して、失業給付と生活保護の中間に位置する給付制度を確立し、地域・自治体レベルの支援体制と併せて構想しなければならない。
 第4に、地域労働需給のミスマッチ緩和や地域経済の支援、東アジア全体の人材開発と移動という視点を含めて、外国人労働者と家族に対する社会統合政策を推進するため、第3に述べた地域における国・自治体の取組の一環として、制度的インフラを整備する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201001016Z