発達障害への地域支援に資する継続的な情報収集・活用方法・体制整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202417015A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害への地域支援に資する継続的な情報収集・活用方法・体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 篠山 大明(信州大学医学部)
  • 土屋 賢治(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 山脇 かおり(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部 発達障害情報・支援センター)
  • 笹森 洋樹(学校法人 常葉大学  教育学部)
  • 大島 郁葉(千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター)
  • 柏 淳(東京科学大学 保健管理センター)
  • 廣田 智也(弘前大学 神経精神医学講座)
  • 浅尾 高行(信州大学)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、わが国で発達障害に関する情報を収集し、データベースを構築、活用するための体制整備に向けた具体的な方向性を示し、運用につなげることである。
研究方法
 以下の10テーマに分けて調査・研究を行った。
1.発達障害の福祉に関する情報収集と活用(分担:本田秀夫)
2.匿名医療保険等関連情報を用いたデータベース構築(分担:篠山大明)
3.発達障害の疫学・生物学的研究に関する情報収集と活用方法(分担:土屋賢治)
4.発達障害情報・支援センターにおける情報データベースの構築(分担:山脇かおり)
5.教育分野における発達障害の継続的な情報収集・活用・体制整備の現状と課題(分担:笹森洋樹)
6.データベース構築のための発達障害の非薬理学的および心理社会的な介入研究の情報収集(分担:大島郁葉)
7.成人期の発達障害の支援に関する情報収集と活用方法(分担:柏淳)
8.海外における発達障害データベース(分担:廣田智也)
9.臨床データ等を活用した情報システム構築(分担:浅尾高行)
10.発達障害当事者から見た発達障害の情報に対するニーズ(分担:小林真理子)
結果と考察
1.全国の発達障害者支援センターのウェブサイトでは、相談支援や発達支援といった基本的かつ日常的なセンターの利用に関わる情報提供は比較的充実していた。一方で、福祉サービスに関する基礎知識や研究資料に関する情報などは提供率が比較的低かった。

2.ナショナルデータベースの特別抽出データ利用申請を実施し、無条件で承諾を得た。

3.近年の新たな話題として①胎児期・新生児期の低濃度パー/ポリフルオロ化合物(PFASs)曝露、②無痛分娩(出生時の硬膜外麻酔曝露)、③乳幼児期のデジタル曝露(長いスクリーンタイム)の3つの生物学的要因が発達障害のリスク要因として10を超える原著論文に取り上げられていた。しかし、現時点では確かにリスクを高めるとは考えにくいことが分かった。

4.令和6年度の1年間におけるユーザーの閲覧状況の傾向としては、ホームページでは各障害の定義や法令、制度・施策、発達障害者支援センター等の支援機関に関する情報を、ナビポータルでは情報検索ツールや研修コンテンツ等に関する情報が多く検索されていた。ユーザーアンケートでは、具体的な相談先や支援手法を求めてアクセスしたユーザーの満足度が低く、掲載情報の整理と表示方法の工夫および拡充を要することも窺えた。

5.教員等や保護者の気づきや理解は高まってきたと考えられる一方で、適切な支援のための情報収集、活用、校内の体制整備については喫緊の課題である。外部の専門機関等、地域資源の活用も十分とはいえず、教育委員会や学校が地域の医療・福祉等の関係機関と有機的なつながりを構築する必要がある。

6.自閉スペクトラム症に対する効果が一貫している介入法は少ないことが示唆された。また、先行研究は海外の主に未就学児を対象としたものに偏っており、児童・思春期や成人期に対する効果研究や日本人を対象とした効果研究は数が限られることが明らかになった。

7.成人期においても、国のポータルサイトとしては「発達障害ナビポータル」がメインサイトとなっている。このサイトでは、各事項についての総論的な説明は秀逸だが、地域における具体的な支援機関の情報については限定的であり、現状は各地域に委ねられており、情報格差が激しい。

8.米国CDC内の部門長と連絡を取り、CDCにおける発達障害関連部門について、また発達障害データベースについてヒアリングを行った。

9.発達障害を主たる専門とする外来における診療情報調査を行い、データベース入力負担を少なくする登録方法として手書き問診票のOCR読み取りによるデータベース化を検討した。手書きチェックボックスの正解認識率は100%を達成した。また手書き数字の認識でも画像認識AIを用いた場合、正解率100%が認められた。

10.40名の当事者にグループによるインタビューを行い、逐語録を作成し、AIによる要約と合議制による質的分析を併用して、当事者の情報ニーズに関して整理した。
結論
 発達障害に関する入門的・総論的知識や、国内外の研究や法制度の動向などは、発達障害情報・支援センターのウェブサイトや発達障害ナビポータルにすでに掲載され、一定のアクセスが得られている。一方、地域の支援情報については各自治体の発達障害者支援センターのウェブサイトで掲載されているものの、情報量および情報の内容には地域差がある。
 医療、研究の動向、教育、心理社会的支援、成人の発達障害に関する情報などは、科学的手法によって信頼に足る情報をウェブサイトに収載するシステムを構築していく必要がある。CDCなど海外の先行事例はシステム構築の参考になることが期待される。支援者側の視点だけでなく、当事者の情報ニーズを把握することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202417015Z