文献情報
文献番号
202417011A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療福祉分野におけるトラウマインフォームドケア活用促進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1019
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
- 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
- 臼田 謙太郎(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
- 亀岡 智美(兵庫県こころのケアセンター)
- 大岡 由佳(武庫川女子大学 心理・社会福祉学部)
- 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
- 細田・アーバン 珠希(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、精神保健医療福祉分野のTICが活用可能な領域におけるTICの研修プログラムを開発し、その効果を実証的に検討し、さらにTICの活用推進の方策を検討し、さらなるTICの普及に資することを目的とする。令和6年度は、①精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出、②児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討、③母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討を行った。
研究方法
1.精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出
精神保健福祉センター長等を対象に1回2時間のワークショップを2回開催し、阻害・促進要因を収集し、その結果を整理し実装戦略を立案した。
また、日本で2023年から看護師国家試験の出題基準にTICが含まれたことを踏まえて、看護学生を対象としたTICプログラムの開発を目指した。
関連するエビデンスの創出として、精神科看護師におけるTIC研修プログラムの有効性の検討、およびTIC研修プログラムの身体制限最小化に対する有効性の検討について、論文化を目指した。
2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
研究代表者らが開発した児相職員向けの研修動画の効果を検討する非ランダム化比較試験を2023年度に実施しており、2024年度はその結果をまとめた。
3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
日本助産師会やNPO関係者へのヒアリング等を踏まえ、必要性が高いと考えられた助産師を対象とした研修動画を開発し、都内の総合周産期医療センターの協力を得てランダム化比較試験(RCT)を実施した。
また、妊産婦を対象としたTICという観点からは、助産師だけでなくパートナーの関与も期待されることから、妊産婦のパートナーを対象としたTICプログラムの開発を目指した。
精神保健福祉センター長等を対象に1回2時間のワークショップを2回開催し、阻害・促進要因を収集し、その結果を整理し実装戦略を立案した。
また、日本で2023年から看護師国家試験の出題基準にTICが含まれたことを踏まえて、看護学生を対象としたTICプログラムの開発を目指した。
関連するエビデンスの創出として、精神科看護師におけるTIC研修プログラムの有効性の検討、およびTIC研修プログラムの身体制限最小化に対する有効性の検討について、論文化を目指した。
2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
研究代表者らが開発した児相職員向けの研修動画の効果を検討する非ランダム化比較試験を2023年度に実施しており、2024年度はその結果をまとめた。
3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
日本助産師会やNPO関係者へのヒアリング等を踏まえ、必要性が高いと考えられた助産師を対象とした研修動画を開発し、都内の総合周産期医療センターの協力を得てランダム化比較試験(RCT)を実施した。
また、妊産婦を対象としたTICという観点からは、助産師だけでなくパートナーの関与も期待されることから、妊産婦のパートナーを対象としたTICプログラムの開発を目指した。
結果と考察
1.精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出
全国の精神保健福祉センターから、オンラインで14名(うちセンター長6名)、対面で8名(うちセンター長5名)がワークショップに参加し、TICの阻害要因・促進要因を検討した(詳細は佐々木分担研究報告書を参照)。
また、複数の看護系教員や看護学生へのインタビューを経て、看護学生を対象としたTIC動画研修を開発した。
関連するエビデンスの創出に関して、精神科看護師においてTIC動画研修プログラムのTICに対する態度、心理的安全性、バーンアウトへの有効性を示唆した論文および行動制限最小化に対する有効性を示唆した論文を出版した。
なお、本研究班で作成した動画や研修資材を閲覧できるホームページは、2024年度1年間に新規ユーザー8,933人、ベージビュー数36,982件を記録した(2021年4月から2025年3月までの累計では新規ユーザー数24,984人、ページビュー数101,269件)。
2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
研究協力が得られた東京都の児童相談所の職員に調査を依頼し、介入群に40名、対照群に33名を割り付け、介入群のうち27名(67.5%)が全4回の動画を視聴した。ベースライン調査回答者のうち、必要な調査項目に欠損がなかった68人(介入群37人、対照群31人)を対象として解析を行ったところ、統計学的に有意な結果は得られなかったが、介入3か月後のTICに関する態度、チームの心理的安全性に関しては中程度の効果量が認められた。
3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
2023年度に開発した助産師を対象とした動画研修プログラムの効果を検討するためのRCTを行った。都内の周産期医療機関の助産師に研究協力を依頼し、介入群と対照群に無作為に割り当て、介入群には動画研修を提供した。介入開始から3か月後、介入群(N=21)は対照群(N=21)と比較して、TICに対する態度、職場の心理的安全性、およびバーンアウトの対人関係の遮断において、統計学的に有意に改善を示した。
また、両親学級を運営している団体や父親等へのインタビューを経て、妊産婦のパートナーを対象としたTIC動画研修を開発した。
全国の精神保健福祉センターから、オンラインで14名(うちセンター長6名)、対面で8名(うちセンター長5名)がワークショップに参加し、TICの阻害要因・促進要因を検討した(詳細は佐々木分担研究報告書を参照)。
また、複数の看護系教員や看護学生へのインタビューを経て、看護学生を対象としたTIC動画研修を開発した。
関連するエビデンスの創出に関して、精神科看護師においてTIC動画研修プログラムのTICに対する態度、心理的安全性、バーンアウトへの有効性を示唆した論文および行動制限最小化に対する有効性を示唆した論文を出版した。
なお、本研究班で作成した動画や研修資材を閲覧できるホームページは、2024年度1年間に新規ユーザー8,933人、ベージビュー数36,982件を記録した(2021年4月から2025年3月までの累計では新規ユーザー数24,984人、ページビュー数101,269件)。
2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
研究協力が得られた東京都の児童相談所の職員に調査を依頼し、介入群に40名、対照群に33名を割り付け、介入群のうち27名(67.5%)が全4回の動画を視聴した。ベースライン調査回答者のうち、必要な調査項目に欠損がなかった68人(介入群37人、対照群31人)を対象として解析を行ったところ、統計学的に有意な結果は得られなかったが、介入3か月後のTICに関する態度、チームの心理的安全性に関しては中程度の効果量が認められた。
3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
2023年度に開発した助産師を対象とした動画研修プログラムの効果を検討するためのRCTを行った。都内の周産期医療機関の助産師に研究協力を依頼し、介入群と対照群に無作為に割り当て、介入群には動画研修を提供した。介入開始から3か月後、介入群(N=21)は対照群(N=21)と比較して、TICに対する態度、職場の心理的安全性、およびバーンアウトの対人関係の遮断において、統計学的に有意に改善を示した。
また、両親学級を運営している団体や父親等へのインタビューを経て、妊産婦のパートナーを対象としたTIC動画研修を開発した。
結論
精神科看護師を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を示唆する論文を出版し、児童相談所職員、助産師を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を示唆した。また看護学生、妊産婦のパートナーを対象とした動画研修プログラムのパイロット版も開発した。TICに関するエビデンスを創出するとともにホームページ・研修等での啓発を行い、本研究班が日本におけるTICの普及に一定の役割を果たしていると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-06-26
更新日
-