低所得者に対する相談援助機能の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201001012A
報告書区分
総括
研究課題名
低所得者に対する相談援助機能の強化に関する研究
課題番号
H21-政策・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森川 美絵(国立保健医療科学院 福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部卓(首都大学東京 都市教養学部)
  • 和気康太(明治学院大学 社会学部)
  • 阪東美智子(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 新保美香(明治学院大学 社会学部)
  • 根本久仁子(聖隷クリストファー大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
貧困低所得対策は、2009年度より「第2のセーフティネット」が制度化され、社会福祉協議会(以下、「社協」)の生活福祉資金貸付の統合再編(総合支援資金等)、住宅手当、ハローワークの訓練・融資制度等による貧困予防・自立支援機能の発揮が期待されている。一方、それらの制度資源を活用した相談援助活動については、方法論やモデルが普及していない。以上より、本研究は、「第2のセーフティネット」として展開される低所得者への相談援助の現状把握と機能強化にむけた手法の提示を目的とした。研究期間は2年である。
研究方法
23年度は、1)総合支援資金貸付における相談支援の位置づけの確認、2)初期相談票データ(n=143)の分析による貸付相談者の状態像の把握・分類と必要な相談対応の検討、3)先進的な貸付相談機関へのヒアリング、相談援助実践を可視化するツール(マニュアルや記録様式)の分析を通じた貸付相談のポイントの検討、4)これらをふまえた相談援助活動の構成要素(案)の整理、5)上記要素の実践を促す業務支援ツールの開発を実施した。
結果と考察
相談者のうち貸付に至らないケースには、健康や債務に関する課題を含めた要保護に近接する生活困窮度の高い層が、相当程度みられた。貸付を通じた相談援助の中核的要素として「貸付相談の窓口・担当部署における、貸付を相談援助の(目的ではなく)手段とした、貸付制度の要否判定にとどまらない生活課題の把握・対応方針の検討、関係資源へのつなぎ」が抽出された。下位要素は、①相談者の状態をふまえた相談支援、②貸付を通じた相談関係の構築、貸付という手段の特徴をふまえたかかわり、③相談関係の継続、④相談プロセスと実績の可視化、⑤個別相談支援から把握された課題へのシステム的対応の企画開発、の5つに整理された。業務支援ツールとして、「貸付相談の機会を生かし、将来につなげる『最後の5分間』」という観点から、「相談内容確認シート」を開発した。
 
結論
総合支援資金は、雇用政策と生活保護の谷間に陥った人々に対し、相談及び経済支援の受け皿として一定の機能を発揮している。それらが貧困低所得層への地域での社会福祉実践として展開されるためには、本研究が示した相談援助の要素・項目に留意した実践が求められる。業務支援ツールは、その一助となるべく、現場でのさらなる検証充実の上での活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
201001012B
報告書区分
総合
研究課題名
低所得者に対する相談援助機能の強化に関する研究
課題番号
H21-政策・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森川 美絵(国立保健医療科学院 福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 卓(首都大学東京 都市教養学部)
  • 和気 康太(明治学院大学 社会学部)
  • 阪東 美智子(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 新保 美香(明治学院大学 社会学部)
  • 根本 久仁子(聖隷クリストファー大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
貧困低所得対策は、2009年度より「第2のセーフティネット」が制度化され、社会福祉協議会(社協)の生活福祉資金貸付の統合再編(総合支援資金等)、住宅手当、ハローワークの訓練・融資制度等による貧困予防・自立支援機能の発揮が期待されている。一方、それらの制度資源を活用した相談援助活動については、方法論やモデルが普及していない。以上より、本研究は、「第2のセーフティネット」とりわけ総合支援資金貸付を通じた相談援助の現状把握と機能強化にむけた手法の提示を目的とした。研究期間は2年である。
研究方法
一年次は、低所得者対策の制度的枠組みの検討、「新たなセーフティネット」を媒介した相談援助の全国的な実施概況の把握、生活困窮者を包摂した地域福祉の先進的取組みのヒアリングを行なった。二年次は、貸付相談者の状態像と相談対応の実証分析、先進的貸付相談機関へのヒアリング、相談援助のマニュアルや記録様式の内容分析を実施した。これらをふまえ、相談援助活動の構成要素(案)を整理し、業務支援ツールとして上記要素に含まれる項目の実践を促す業務支援ツールの開発を試みた。
結果と考察
一年次の結果からは、相談機関(社会福祉協議会)の不十分な職員体制とあわせ、相談関係の構築、アセスメントや支援計画の作成を通じた具体的な働きかけ等、制度で想定された相談援助機能が十分発揮されていないことが明らかになった。二年次の結果では、相談対象者(P社協n=143)のうち、貸付に至らないケースには、健康や債務に関する課題を含めた要保護に近接する生活困窮度の高い層が、相当程度みられた。貸付を通じた相談援助の構成要素として、中核的要素「貸付相談の窓口・担当部署における、貸付を相談援助の(目的ではなく)手段とした、貸付制度の要否判定にとどまらない生活課題の把握・対応方針の検討、関係資源へのつなぎ」、5つの下位要素、各要素の主要項目が提示された。業務支援ツールとして「相談内容確認シート」を開発した。
結論
総合支援資金は、雇用政策を通じた労働者の生活保障と生活保護との制度の谷間に陥った人々に対し、相談および経済支援の受け皿として一定の機能を発揮している。その相談援助が、貧困低所得層への地域での社会福祉実践として展開されるためには、本研究が示した相談援助の要素・項目に留意した実践が求められる。業務支援ツールは、現場でのさらなる検証充実の上で、その活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、新たなセーフティネットとしての生活福祉資金貸付を通じた相談支援の全国の実施状況および詳細な相談個票分析に関する本邦初の成果である。貧困低所得層への地域での社会福祉実践という観点から、新たなセーフティネットの一翼を担う生活福祉資金貸付制度を媒介した相談援助活動の現状と充実にむけた課題を明らかにし、脆弱な生活・経済基盤にある低所得者に対する適切な福祉資源へのアクセス促進、低所得層の地域支援ネットワークへの包摂にむけた施策の根拠資料を提供した。
臨床的観点からの成果
本研究で抽出整理した、生活福祉資金貸付(総合支援資金)を通じた相談援助の中核要素・下位要素・具体的項目は、生活福祉資金貸付実施機関の相談窓口職員の研修への活用など、人材個々の実務機能の向上への直接的な貢献が、期待できる。また、「ご相談内容確認シート」の開発は、抽出された相談援助の要素・項目に留意した実践を日々の相談業務のなかで展開しやすくする実務支援ツールである。
ガイドライン等の開発
本研究で抽出整理した、生活福祉資金貸付(総合支援資金)を通じた相談援助の中核要素・下位要素・具体的項目は、実務者個人・手段・組織としての相談支援活動の評価(確認・ふり返り・自己分析等)の基準として利用できる。
その他行政的観点からの成果
長崎県社会福祉協議会『平成21年度相談員スキルアップ研修会』(2010年1月30日~31日)にて研究成果を反映した講義・演習を実施した。
その他のインパクト
社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国民生委員児童委員連合会『平成21年度全国生活福祉資金貸付事業運営研究協議会』(2010年2月1日~2日)のパネルディスカッションにて研究成果の一部を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本福祉社会学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-06-18

収支報告書

文献番号
201001012Z