文献情報
文献番号
202417008A
報告書区分
総括
研究課題名
世界精神保健調査に資する大規模疫学調査による精神疾患の有病率等を把握するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1016
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
- 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
- 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
31,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでに世界保健機関(WHO)とハーバード大学がとりまとめる世界精神保健調査の一環として、わが国では世界精神保健調査日本調査ファースト(WMHJ、2002-2006年)および同調査セカンド(WMHJ2、2013-2015年)が行われ、気分症、不安症、物質使用症の有病率や受療率、その関連要因等が明らかにされてきた。しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、感染拡大前と比べて有病率等が大きく変化した可能性が考えられる。また、WMHJおよびWMHJ2は精神保健疫学調査用の構造化面接であるWHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)の第3版(CIDI 3.0)を用いて実施されたが、精神疾患の国際的診断基準がDSM-5に改訂されたことに伴い、CIDIも第5版(CIDI 5.0)に改訂されている。
これらを踏まえて、本研究はランダムサンプリング・構造化面接(CIDI 5.0)といった方法論を用いた世界精神保健調査日本調査サード(WMHJ3)を実施し、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率等を明らかにするとともに、WMHJおよびWMHJ2のデータとの比較によって経時的な変化についても検討することを目的とする。2024年度は東日本(1道16県)の調査を行うことを目的とした。
これらを踏まえて、本研究はランダムサンプリング・構造化面接(CIDI 5.0)といった方法論を用いた世界精神保健調査日本調査サード(WMHJ3)を実施し、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率等を明らかにするとともに、WMHJおよびWMHJ2のデータとの比較によって経時的な変化についても検討することを目的とする。2024年度は東日本(1道16県)の調査を行うことを目的とした。
研究方法
本研究と同様の調査経験を持つ調査委託企業を選定し、トレーニングで面接員を養成した。2024年度は東日本(1道16県)の市区町村を①政令市(大都市)②人口20万以上の市(中都市)③人口20万人未満の市(小都市)④郡部の町村の4層に分け、各層の人口に比例した47地点を無作為抽出し、住民基本台帳に基づき、各地点から20歳以上75歳未満の男女55人を無作為抽出し、47地点×55標本= 合計2,585人を、研究参加を依頼する対象者とした。
調査は面接調査と自己記入式質問紙を用いた留置調査の2つの方法を用いて実施した。面接調査にはCIDI5.0を用いた。
調査員は、画面上の質問を読み上げ、得られた回答を入力した。
面接調査では、WMHJおよびWMHJ2で有病率に関するデータを収集したうつ病、双極性障害、不安症群(パニック障害、社交不安障害、広場恐怖、全般性不安障害)、PTSD、アルコール使用障害に加えて、精神病体験のセクションも実施した。
精神病体験があり、わずか以上の精神的苦痛があると回答した者全員と、精神病体験はあるものの精神的苦痛はないと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出して二次面接を依頼し、精神科医によるオンライン面接を行い、陽性的中率を出すことで地域住民における統合失調症の有病率を推定することを目指した。
研究参加者と研究参加を拒否した者とでは、人口統計学的背景や精神健康の程度が異なる可能性がある。そのため、拒否した者に関しても、最低限の人口統計学的背景や精神健康の状態を把握しておくことが望ましい。そのため、拒否の意向を示された場合、後日、調査会社より説明文書とともに所要時間1-2分の質問紙を送ってもよいか確認した上で郵送した。
調査は面接調査と自己記入式質問紙を用いた留置調査の2つの方法を用いて実施した。面接調査にはCIDI5.0を用いた。
調査員は、画面上の質問を読み上げ、得られた回答を入力した。
面接調査では、WMHJおよびWMHJ2で有病率に関するデータを収集したうつ病、双極性障害、不安症群(パニック障害、社交不安障害、広場恐怖、全般性不安障害)、PTSD、アルコール使用障害に加えて、精神病体験のセクションも実施した。
精神病体験があり、わずか以上の精神的苦痛があると回答した者全員と、精神病体験はあるものの精神的苦痛はないと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出して二次面接を依頼し、精神科医によるオンライン面接を行い、陽性的中率を出すことで地域住民における統合失調症の有病率を推定することを目指した。
研究参加者と研究参加を拒否した者とでは、人口統計学的背景や精神健康の程度が異なる可能性がある。そのため、拒否した者に関しても、最低限の人口統計学的背景や精神健康の状態を把握しておくことが望ましい。そのため、拒否の意向を示された場合、後日、調査会社より説明文書とともに所要時間1-2分の質問紙を送ってもよいか確認した上で郵送した。
結果と考察
面接調査に関しては、2,585人に研究参加を依頼し、1,008人が面接を完了し、このうちPCデータ上の問題がなかった人数は990人(回答率38.3%)であった。自己記入式質問紙調査は、面接調査と同様の2,585人を対象者として、1,091人より回答を得た(回答率42.2%)。
統合失調症に関しては、精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者全員の15人と、精神病体験があり苦痛がなかったと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出した10人、合計25人に精神科医によるオンライン面接への参加を依頼した。精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者の内の4人と、精神病体験があり苦痛がなかったと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出した内の4人から研究参加の同意を得て、合計8人の面接を完了した。精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者の内の1人が統合失調症の診断基準を満たした。
拒否者調査は、面接調査の拒否者の内、拒否者調査の質問紙の発送に承諾を得られた727人に研究参加を依頼し、165人より回答を得た。(回答率22.7%)。
統合失調症に関しては、精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者全員の15人と、精神病体験があり苦痛がなかったと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出した10人、合計25人に精神科医によるオンライン面接への参加を依頼した。精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者の内の4人と、精神病体験があり苦痛がなかったと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出した内の4人から研究参加の同意を得て、合計8人の面接を完了した。精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者の内の1人が統合失調症の診断基準を満たした。
拒否者調査は、面接調査の拒否者の内、拒否者調査の質問紙の発送に承諾を得られた727人に研究参加を依頼し、165人より回答を得た。(回答率22.7%)。
結論
ランダムサンプリング・構造化面接といった方法論を用いた大規模地域疫学研究によって、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率、受診率、関連要因等を明らかにすることを目的に研究を実施しており、2024年度は東日本(1道16県)の調査を完了した。2023年度より参加率・回答率は改善しており、来年度も今年度と同等またはそれ以上の参加率・回答率を目指して研究を継続する。
公開日・更新日
公開日
2025-06-26
更新日
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