子育て世帯のセーフティーネットに関する総合的研究

文献情報

文献番号
201001011A
報告書区分
総括
研究課題名
子育て世帯のセーフティーネットに関する総合的研究
課題番号
H21-政策・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大石 亜希子(国立大学法人 千葉大学 法経学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 久保田 まり(東洋英和女学院大学 人間科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、次世代育成支援の観点から子育て世帯を巡るセーフティーネットのあり方を、経済学、社会学、発達心理学の専門家を交えて総合的に研究する。具体的には、(1)人生の出発時点における格差の実態とそれをもたらす要因を、女性の避妊行動を含む世帯形成過程や社会経済的属性について把握するとともに、(2)世帯の社会経済的属性と子どもの健康格差の関係を分析し、(3)母子世帯や外国籍世帯の子ども、要保護児童など不利な条件の重複する脆弱な世帯の子どもの属性とセーフティーネットのあり方を考察する。
研究方法
インタビュー調査に基づく考察および集計・個票データによる実証分析。平成23年2月には海外から専門家を招聘し国際ワークショップと講演会を実施し国際比較の視点から学術交流・意見交換を行った。
結果と考察
本年度は研究会での議論に基づき、以下の論文を取りまとめた。(1)世帯形成過程および出生時点における格差に関する研究:「わが国における避妊の現状と女性の健康及び社会的・経済的地位との因果関係についての実証的研究」(野口論文)、(2)出生前後の母親の就業状況と育児休業制度の政策効果に関する研究:「育児休業制度の政策評価と展望」(大石論文)、(3)世帯の社会経済的属性と子どもの健康格差に関する研究:「子どもの社会生活と社会経済階層(SES)の分析:貧困と社会的排除の観点から」(阿部論文)、(4)脆弱な子育て世帯のセーフティーネットに関する研究:「子どものいる外国人世帯の生活実態―2009年静岡県多文化共生アンケート調査を用いた分析―」(千年論文)、「子育て支援の担い手としての保育士の職業性ストレスとストレス反応:保育士自身のセーフティーネットの問題と課題」(久保田論文)。
結論
第1 に、子どもの出生に至る前段階の、妊娠あるいは避妊という現象についても社会経済的要因との関連が強い。第2 に、子どもの社会生活における格差が早い段階で既に発生している。第3に、育児休業制度には女性の雇用を抑制するマイナス面があるため、政府・事業主・労働者の間で適切なコストシェアリングを図る必要がある。第4 に、保育士はストレスが強く、他の福祉職に比して労働力に見合った人材数の確保が最もできていない。第5に、外国人家庭の子どもは滞在が長期化しても親の従業上の地位に変化が見られず、より安定した生活が困難な状況にあるため、子どもの教育の保障を一層強化する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201001011B
報告書区分
総合
研究課題名
子育て世帯のセーフティーネットに関する総合的研究
課題番号
H21-政策・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大石 亜希子(国立大学法人 千葉大学 法経学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 久保田 まり(東洋英和女学院大学 人間科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、次世代育成支援の観点から子育て世帯を巡るセーフティーネットのあり方を、経済学、社会学、発達心理学の専門家を交えて総合的に研究する。具体的には、(1)人生の出発時点における格差の実態とそれをもたらす要因を、女性の避妊行動を含む世帯形成過程や社会経済的属性について把握するとともに、(2)出生前後の母親の就業と育児休業制度の関係、(3)世帯の社会経済的属性と子どもの健康格差、生活実態の関係を分析し、(4)母子世帯や外国籍世帯の子ども、要保護児童など不利な条件の重複する脆弱な世帯の子どもの属性とセーフティーネットのあり方を考察する。
研究方法
定性的な分析としてインタビュー調査の実施、および児童福祉施設の視察等。各種統計および調査の集計データおよび個票データによる実証分析。内外の研究者を招聘したワークショップの開催。
結果と考察
1)女性の経済的地位が高いほど、意図せざる妊娠や人工妊娠中絶、流産・死産リスクが低い。2)子どもの出生時点における所得格差には明確な拡大傾向は見られないが、所得格差と比して非常に大きい資産格差が存在する。3)日本は育児休業制度に関しては国際的な水準に達した一方で、保育サービスや家族支出の点ではOECD平均以下にある。4)育児休業法の施行は、女性労働者の雇用に負の影響を与えた可能性がある。5)育児休業給付金の拡充は女性労働者の継続就業率を引きあげる効果を持っている。6)貧困の子どもは有訴者となる確率が低い半面、有訴者となった場合に「無対処」におかれる傾向がある。7)世帯の社会経済的属性が子どもの健康や生活、社会包摂の度合いに差をもたらしている。8)ハイリスク家庭・親については、妊娠期から子どもが3歳までの間の継続的・集中的・積極的な家庭訪問が有効である。9)日本生まれの外国人児童が増加しているが、血統主義の日本においてはこれらの児童は外国籍であるため教育、医療などのセーフティーネットから取り残されている。10)生活保護制度は被保護母子世帯の就労へのインセンティブを阻害しているだけでなく、子どもとの同別居などの世帯形態をもゆがめている。
結論
子育て世帯間の格差の背景には、妊娠・出生時点にまで立ち戻った社会経済的な要因がある。また、幼少期の貧困は子どもの生活に長期的な影響を及ぼす。そのため、子どものセーフティーネットの観点からは、従来よりも出産前後の時期に重点的に社会保障財源を投入することが効果的と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-11-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、子育て世帯間の格差の背景に、妊娠・出生時点にまで立ち戻った社会経済的な要因があることを指摘した。さらに、幼少期の貧困が子どもの生活に長期的な影響を及ぼすことも示した。したがって、子どものウェル・ビーイングを改善するうえでは、出産前後の時期に重点的に社会保障財源を投入することが効果的と考えられる。
臨床的観点からの成果
虐待・ネグレクト等の問題については、親や子どものハイリスクを早期に同定し、継続的介入に至るまでの「途切れのない援助」を実施することが早急に必要とされる。欧米における先行研究から示唆されたように、我が国においても、地域保健師やソーシャルワーカーを中心とした家庭訪問サービスや、多職種から構成される協働チームと包括的援助プログラムの開発・実践が求められる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
海外研究者の招聘に当たっては、当プロジェクトメンバーとのワークショップのほかに、千葉大学において学生・院生を対象とする特別講義(2011年2月7日)を開催したほか、研究者や厚生労働省の政策担当者を対象として国立社会保障・人口問題研究所の特別講演会(2011年2月10日)を開催した。さらに、2011年3月4日付日本経済新聞「経済教室」に研究代表者の大石が育児休業制度のあり方について寄稿した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
The 1.03 million yen ceiling and earnings inequality among married women in Japan.
その他論文(和文)
19件
大石亜希子(2009)「仕事と家庭の両立支援」『労働調査』2009年7月号,4-10.他
その他論文(英文等)
1件
Noguchi,H.(2009)"Do Work-Life Balance Policies and Workplace Flexibility Matter?-
学会発表(国内学会)
9件
大石亜希子「出生時における人的・経済的資源の検討」社会政策学会第119回大会報告(2009年11月1日、名古屋・金城学院大学)他
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yukiko Abe and Akiko Sato Oishi
The 1.03 million yen ceiling and earnings inequality among married women in Japan
Economics Bulletin , 29 (2) , 1510-1519  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-07-06

収支報告書

文献番号
201001011Z