第8期障害福祉計画の精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に係る成果目標の見直しに資する研究

文献情報

文献番号
202417003A
報告書区分
総括
研究課題名
第8期障害福祉計画の精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に係る成果目標の見直しに資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1011
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 隆志(福井県立大学 看護福祉学部)
  • 森山 葉子(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自治体の「にも包括」構築と評価に役立つロジックモデルの開発と評価指標候補の収集を目的として、(1)我が国の精神保健医療福祉システムを取り巻く現状の整理、(2)ロジックモデルの開発、(3)自治体職員インタビュー、(4)当事者インタビュー、(5)協議会に関する自治体の実態調査を行った。
研究方法
(1)関連法規・計画について、法文、制度説明資料、会議資料、事業報告書等のレビュー、精神保健医療福祉政策研究に精通したエキスパートの意見聴取を行った。
(2)モデル形式、アクティビティの主体と範囲、最終アウトカム、初期・中間アウトカムの条件を研究班で規定し、「にも包括」関連資料からロジックモデルの項目候補を抽出した。アウトプットおよびアウトカムについてはモニタリング指標候補をオープンデータなどから収集した上で、(3)(4)の結果からモデルの追加・修正を実施した。
(3)2グループ(自治体専門職10名)に対して、2回ずつフォーカスグループインタビューを行った。
(4)障害者雇用枠で勤務する当事者6名、精神保健医療分野において相談支援を行っている当事者2名に半構造化インタビューを実施した。
(5)協議会の実態に関する全国調査と公的オープンデータを統合して、地域相関研究を行った。協議会設置市町村、協議会未設置市町村ごとに潜在クラス分析、探索的因子分析による類型化・要約を行った。
結果と考察
(1)にも包括、医療法、精神保健福祉法、障害者総合支援法、障害者基本法、第8次医療計画、第7期障害福祉計画、第9期介護保険事業計画の相互関係と自治体役割を整理し、精神保健医療福祉システムの概念図を作成した。これにより「にも包括」およびその中に位置する障害福祉計画が担うべき範囲の共通認識を得た。
(2)インプット、アクティビティ、アウトプット、アウトカムという標準的な形式を採用し、活動主体を自治体に固定した。最終アウトカムは、「にも包括」の理念である「精神障害の有無にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすこと」ができている状態と設定した。短期から中期の事業効果を評価できる初期アウトカムおよび中間アウトカムを自治体インタビューで聴取して追加し、精神障害当事者のインタビューで得た知見も反映した修正を行った。
(3)ロジックモデルの効果として、関係者の共通認識醸成・活動立案促進と継続性の確保、全体像を意識した進捗把握、計画評価の妥当性向上などが上がった。自治体から地域へのエコロジカルな事業効果波及のモデルは概ね理解しやすいとの評価であった。また住民の体験を中心に最終アウトカムを捉えることも自治体職員の価値観としても違和感のないものであった。他方で、ロジックモデルを現場活用するには、住民体験を含む指標情報の収集負荷の大きさ、地域課題や将来ビジョンに応じた自治体の個別性と調和させる方策が課題として挙がった。
(4)住民の体験を中心とする最終アウトカムについては賛同が得られたが、差別スティグマが解消され個人として自分らしく地域生活ができることの重要性が話された。自治体への期待として、障害福祉サービスに関する情報収集や利用アクセスの困難さの解消、協議会のあり方の見直しなどが挙がった。
(5)協議会設置市町村(n=820):協議会の位置づけや取組内容から、部分的連携型(78.2%, 既存の会議体の活用などによる限定的な連携を実施)、統合型(21.8%, 個別支援や支援体制の整備も含め協議の場の設置に積極的)の2類型を同定した。協議会未設置市町村(n=630):協議会設置に向けた課題認識は、合意形成プロセス(議題や参画者選定、共通理解の困難)、実施体制(マンパワーやノウハウ不足)、医療資源(医療従事者の参画の難しさ、医療機関や社会資源の不足)の3因子に要約された。
結論
作成したロジックモデルは、一定水準の妥当性(アクションの網羅性、論理連関のセオリー妥当性、当事者価値観を包含した正統性)と現場中心性(自治体現場に根付いた指標立て、現場問題の解決を重視)を有していると考えられる。ロジックモデルを活用することで、「にも包括」全体の中で障害福祉計画(成果目標・活動指標)が果たす役割が何かをあらためて問い直し、自治体とその認識を共有することが促進される。他方、自治体で実用するには、地域特性や優先課題を定めたロジックモデルのトリミングや部分の作り込み、人的資源や予算規模に合わせたインプットやアクティビティの設定などの課題解決が求められることも明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2025-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202417003Z