文献情報
文献番号
202417001A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科医療機関における包括的支援マネジメントの普及に向けた精神保健医療福祉に関わるサービスの提供体制構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
研究分担者(所属機関)
- 吉田 光爾(東洋大学 福祉社会デザイン学部)
- 岡村 泰(地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立松沢病院 精神科)
- 佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
- 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,412,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、包括的支援マネジメントの普及に向けて、入院ケースマネジメントや外来のケースマネジメント、医福連携に関する調査および関連する啓発活動などに取り組んでいる。本年度は、1年以上の入院期間を経て精神科病院を退院する患者に関する入院中および退院後のケースマネジメントの実態把握、医療機関における包括的支援マネジメントの実装と支援内容との関連の検証、当事者から見た医福連携の実態や課題の把握、入院ケアにおける入院ケースマネジメントとアウトカムとの関連を検証する調査を実施し、④研究班の知見を周知するウェブサイトを構築することを目的とした。
研究方法
①6精神科病院の1年以上の入院期間を経て退院した患者を対象とした横断調査、②医療機関における包括的支援マネジメントの導入と支援内容との関連を検証した介入研究、③当事者から見た医福連携の実態や課題の実態調査、③障害副福祉事業所を対象とした医福連携に関する調査は横断デザインを実施したほか、④研究班の知見を周知するウェブサイトを構築した。
結果と考察
①1年以上の入院期間を経て退院する患者の調査について、対象者(n=101)の約90%に残存する精神症状が認められ、Global Assessment of Functioningの平均得点は全体的に低い傾向にあった(約30点)。対象者の全員が入院中にケースマネージャーを選任されていたが、外来ケースマネジメントの支援を受けていた者は22.8%であった。また、精神科退院時共同指導料や療養生活継続支援加算はほとんど算定されていなかった。②医療機関における包括的支援マネジメントの実装について、看護師以外の職種(臨床心理師、精神保健福祉士、作業療法士、薬剤師)による支援については、非導入群と比較し、CCM導入群で関連支援の平均回数が多かった。包括的支援マネジメントの導入により、従来看護師中心で行われていた業務が、多職種間で分担された可能性が考えられる。③当事者から見た医福連携の実態調査では、医療機関において障害福祉サービスについて半数以上(54.6%)が情報提供を十分にうけていないと感じていた。障害福祉サービスの情報提供が行われている場合、その主体は外来・入院中ともに、医師・精神保健福祉士であり、結果的に障害福祉サービスにつながった率が63.6%~79.2%と、他の職種が情報提供した場合より高くなっていた。障害福祉サービスの利用経験の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析では、有意な促進要因として「医療機関での情報提供の度合い」、ピアとの関わり、入院経験が有意な促進要因となっており、障害福祉サービスへの認識「気後れ」が抑制要因となっていた。④研究班の知見を周知するウェブサイト「精神科ケースマネジメント研究班」(https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/pcmr/)を公開した。
結論
本研究班は主に3つの知見を報告した。第1に、1年以上の入院期間を経て退院した患者は残存症状や重い機能障害・生活障害があるにもかかわらず、彼らに対する外来ケースマネジメントの実装は大きな課題であり、特に精神科退院時共同指導料や療養生活継続支援加算など関連する診療報酬の算定実績も極めて乏しいことが明らかとなった。第2に、精神科病院における包括的支援マネジメントの導入は、看護師以外の専門職(臨床心理士・精神保健福祉士・作業療法士・薬剤師)の支援回数が増加することから、多職種連携の促進が期待できる。第3に、当事者調査では医療機関からの障害福祉サービス情報提供の度合い、ピアとの関わり、入院経験が利用促進要因であった。情報提供については、医師・精神保健福祉士が行う場合が多く、結果的に障害福祉サービスにつながりやすいことから、スタッフ配置も重要な要因であると想定される。また、本研究班の知見を公開するウェブサイトに関する調査から、継続的に調査知見をアップデートする重要性も指摘された。これらの知見から、①退院患者の支援ニーズに応じた外来ケースマネジメントと診療報酬加算の在り方の再検討、②包括的支援マネジメントの多職種展開を支える体制整備の推進、③医療機関における障害福祉サービス情報提供の仕組みを強化する体制の推進、④専門職と当事者ニーズを同時に満たすwebプラットフォームによる継続的な情報発信が今後の課題として挙げられる。
公開日・更新日
公開日
2025-06-26
更新日
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