文献情報
文献番号
202416005A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性認知症の病態・支援等に関する実態把握と適切な治療及び支援につなぐプロセスの構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GB1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
鷲見 幸彦(社会福祉法人仁至会 認知症介護研究・研修大府センター )
研究分担者(所属機関)
- 李 相侖(イ サンユン)(社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター 研究部)
- 齊藤 千晶(社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター 研究部)
- 武田 章敬(独立行政法人国立長寿医療研究センター 脳機能診療部)
- 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所 認知症未来社会創造センター)
- 表 志津子(金沢大学 保健学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,597,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では若年性認知症(YOD)のステージに応じた医療提供、支援体制に関する実態調査を行い、切れ目のない支援体制の構築につながるデータを提供する。併せて患者・家族の情報源となるような情報提供システムの構築が必要となる。
研究方法
(1)医療上の課題に対する調査
研究分担者 武田は1年目に作成した調査票を用いて全国の認知症疾患医療センターを対象に調査を行った。
研究分担者 粟田はYOD診断後支援の在り方に関する文献レビューを行った。2つのResearch Question(RQ):「RQ1:年齢によらず、認知症の診断後支援として実施されるべきことは何か」「RQ2:若年性認知症の診断後支援として実施されるべきことは何か」を立てRQに関係する論文を選定した。
(2)介護支援での課題に対する調査
研究分担者 齊藤は、全国の就労継続支援事業所、認知症地域支援推進員(推進員)、若年性認知症支援コーディネーター(支援C)を対象にアンケート調査を実施した。研究分担者 表は、企業を対象にWeb調査により、YODに関する企業の研修や支援体制、及びYODの従業員について、主治医との連携、職場内・外の支援、事業場内の支援体制や就労継続等を調査した。
(3)若年性認知症の人と家族を支える情報提供システムの検討
研究代表者 鷲見は研究の統括、倫理・利益相反委員会への申請を行うとともに研究分担者 李と本人および家族が求める情報の種類、情報源、情報収集の時期を就労継続支援事業所や推進員を通じて調査した。
研究分担者 武田は1年目に作成した調査票を用いて全国の認知症疾患医療センターを対象に調査を行った。
研究分担者 粟田はYOD診断後支援の在り方に関する文献レビューを行った。2つのResearch Question(RQ):「RQ1:年齢によらず、認知症の診断後支援として実施されるべきことは何か」「RQ2:若年性認知症の診断後支援として実施されるべきことは何か」を立てRQに関係する論文を選定した。
(2)介護支援での課題に対する調査
研究分担者 齊藤は、全国の就労継続支援事業所、認知症地域支援推進員(推進員)、若年性認知症支援コーディネーター(支援C)を対象にアンケート調査を実施した。研究分担者 表は、企業を対象にWeb調査により、YODに関する企業の研修や支援体制、及びYODの従業員について、主治医との連携、職場内・外の支援、事業場内の支援体制や就労継続等を調査した。
(3)若年性認知症の人と家族を支える情報提供システムの検討
研究代表者 鷲見は研究の統括、倫理・利益相反委員会への申請を行うとともに研究分担者 李と本人および家族が求める情報の種類、情報源、情報収集の時期を就労継続支援事業所や推進員を通じて調査した。
結果と考察
武田は全国の認知症疾患医療センターを対象に抗アミロイドβ抗体薬による治療の現状を分析した。治療が初回投与から可能と回答した医療機関は33%、継続投与のみ可能と回答した医療機関は25%であった。そのうち65歳未満の患者数は0人が最も多く、1-5人、6-10人と続いた。治療中および治療の対象とならない患者への支援では、就労支援や福祉的就労、障害福祉サービスの利用に関する支援やリハビリテーションを行っていると回答した医療機関は少なかった。粟田はRQ1については12報を採用して文献レビューを行い、RQに対する回答を文書化した。RQ2については、27件を採用した。昨年度の認知症疾患医療センターにおけるYOD診断後支援の実態調査及び文献レビューの結果を踏まえて、「認知症疾患医療センターにおける若年性認知症診断後支援ガイド」の骨子案を作成した。齊藤の調査ではB型事業所での受け入れが多かったが、実際には利用申し出自体が少なかった。また、支援Cの認知度は低いが、連携すると、本人や家族等へ具体的な成果があった。推進員においては支援Cの認知度は高いが、個別ケース以外での連携は少なく物理的距離が連携の障壁であった。個別相談や周知・啓発などの多岐に渡る業務を担う一方で、産業医や企業への周知の難しさや、地域住民・関係機関への認知度の低さなどの課題があった。支援Cも併用利用に関与し、その理由は事業所と同様であった。表の企業への調査では従業員が心身の変調をきたした場合に「人事部門と産業保健スタッフが連携して対応している」と回答した企業は64。1%、「企業内でYODに関する研修を実施」した経験のある企業は2。1%であった。鷲見と李は6割以上が情報収集を行っており、病気の進行、治療方法、初期症状が上位3位であった。情報収集の時期は、症状や疾患に関する情報は診断直後、初期症状や専門医に関する情報は診断前も3割以上を示した。介護サービス、経済的な支援、就労相談は、診断後や進行後の回答が多かった。情報源は、症状・疾患は医療機関やインターネット、介護や社会的資源は行政機関、就労相談や地域資源は支援Cからも取得が多かった。
結論
認知症疾患医療センターで実施されているYODの診療および新たな抗アミロイドβ抗体薬による治療の現状が明らかになった。疾患医療センターにおけるYOD診断後支援の実態調査、個別事例の分析、文献レビューの結果を踏まえて、「認知症疾患医療センターにおける若年性認知症診断後支援ガイド」の骨子案を作成した。
YODの人が自分らしく地域で生活し続けるためには、社会全体でのYODの認知度向上とともに、ワンストップの相談窓口(=支援C)を明確にし、支援Cと医療・福祉・労働による連携体制の強化と、支援の継続性・専門性の確保が求められる。また従業員にYODが疑われる状況が生じた場合、企業内では普段から相談できる体制等連携した取り組みが望まれる。
YODやその家族は、診断前から幅広い情報に関心を示している。情報源としては、インターネットが重要な役割を果たしている一方で、専門家や行政機関からの情報提供も求められていた。
YODの人が自分らしく地域で生活し続けるためには、社会全体でのYODの認知度向上とともに、ワンストップの相談窓口(=支援C)を明確にし、支援Cと医療・福祉・労働による連携体制の強化と、支援の継続性・専門性の確保が求められる。また従業員にYODが疑われる状況が生じた場合、企業内では普段から相談できる体制等連携した取り組みが望まれる。
YODやその家族は、診断前から幅広い情報に関心を示している。情報源としては、インターネットが重要な役割を果たしている一方で、専門家や行政機関からの情報提供も求められていた。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
-