最低所得保障制度の再構成

文献情報

文献番号
201001004A
報告書区分
総括
研究課題名
最低所得保障制度の再構成
課題番号
H20-政策・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学 大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嵩 さやか(東北大学 大学院法学研究科)
  • 中野 妙子(名古屋大学 国際法政教育研究センター)
  • 関根 由紀( 神戸大学 大学院法学研究科)
  • 渡邊 絹子(東海大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、市場経済の下でのセーフティネットたる最低所得保障制度について、公的年金、失業保険・失業扶助、公的扶助、障害者福祉、母子福祉等の諸制度を横断的に取り上げ、最低賃金制度および就労インセンティブとの関係にも着目しつつ、受給者の範囲、支給要件、給付水準、財源および各制度の相互関係等について比較法的研究を行い、その考察をもとに、今後の法制度設計・政策の方向性を模索・検討することを目的とする。
研究方法
①研究テーマに関する国内外の文献・資料の収集、②既存の研究業績の検索・分析、③わが国の制度が抱える問題点の抽出・分析、④フランス・スウェーデン・ドイツ等の調査・分析、⑤比較法的考察と全体の総括的な分析による課題の析出と今後の方向の提示、という方法で研究を進行させる。
結果と考察
今回研究対象とした国々では、就労可能年齢にある長期失業者、若年失業者等については、金銭給付を行うだけにとどまらず、就労インセンティブを付与する仕組みを導入するようになっている。その具体的成果については、必ずしも明確ではなく、また批判・問題点の指摘もなされている。給付付き税額控除の制度が導入されているフランス、アメリカ、イギリスでは、それによって低所得世帯に対して所得補助を行っているが、イギリスでは制度運用の困難さが指摘され、新しい枠組みへの切り替えが議会で審議中である。
結論
研究対象とした先進諸国では、各種の最低生活保障給付(金銭給付)と様々な就労支援措置とを連携させることによって、対象者・世帯の社会参入を促進するアプローチを採用している。低所得者に対する対策として、給付付き税額控除の仕組みも、アメリカをはじめとして、イギリス・フランスでも導入されているが、後2国ではその成果は現時点では必ずしも明確ではなかったり、実務上の運用の難しさ等の問題が指摘されているところである。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201001004B
報告書区分
総合
研究課題名
最低所得保障制度の再構成
課題番号
H20-政策・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学 大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嵩 さやか(東北大学 大学院法学研究科)
  • 中野 妙子(名古屋大学 国際法政教育研究センター)
  • 関根 由紀(神戸大学 大学院法学研究科)
  • 渡邊 絹子(東海大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、市場経済の下でのセーフティネットたる最低所得保障制度について、公的年金、失業保険・失業扶助、公的扶助、障害者福祉、母子福祉等の諸制度を横断的に取り上げ、最低賃金制度および就労インセンティブとの関係にも着目しつつ、比較法的研究を行い、今後の法制度設計・政策の方向性を模索・検討することを目的とする。
研究方法
①法および各国法(本研究で取り上げたのは、フランス、ドイツ、スウェーデン、イギリス、アメリカ合衆国)に関する既存の邦語文献の検索、収集および分析、②外国語文献・資料の検索・収集と研究・分析、③地方公共団体等での実務の状況や問題点等についての調査、④対象国での研究者・実務家との面談による実務の状況等や問題点等について調査と文献・資料の収集、⑤外国法研究(上記①②④)の成果および日本法の研究(上記①③)の成果をもとに、わが国の最低保障に関する法制度との比較法的考察を行う。
結果と考察
本研究で取り上げた各国では、金銭給付の受給と就労支援プログラムへの参加や求職活動、就労等とを連結・連携させたり、最低賃金制度との連携等を図ることで就労インセンティブを持たせる仕組みを導入する等の形で、受給者の自立を促している。ただ、まだその具体的成果が明確でない国や制度の見直しが迫られた国もある。スウェーデンも、生計扶助につき就労インセンティブを強く持たせる厳しい措置を用意しているし、失業保険についても同様である。アメリカのEITCは、他の福祉制度との組み合わせによって有意義であると評価されているが、イギリス・フランスでの評価はまだそれほど固まっているとはいえない。給付付き税額控除と最低賃金との関係の捉え方は、イギリスやフランスが示すように、対照的でありうる。
結論
本研究で取り上げた各国は、最低生活保障と各種の就労支援プログラム等とを牽連させる制度を導入する政策を採用している。ただ、制度の安定期に入ったとはいえない国もある。給付付き税額控除は、その水準設定に関する考え方は各国で必ずしも同じではなく、社会保障の観点からどう評価するかという点もなお検討の必要があるし、実際の運用に当たって解決すべき問題も存在する。若年者の失業、不安定雇用に就く者の増加、長期失業者の増加、障害者の就労を通した社会統合の必要性の認識といった点は、わが国とも共通しており、その点では本研究で検討した各国の制度は示唆に富む。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
フランス・スウェーデン・ドイツ等では、最低生活保障と各種の就労支援プログラム等とを牽連させる制度を導入する政策を採用している。低所得者に対する対策として、給付付き税額控除の仕組みも、フランスで導入されるなど新しい動きも見られる。ただその成果は現時点では必ずしも明確ではない。給付付き税額控除は、その水準設定に関する考え方は各国で必ずしも同じではなく、社会保障の観点からどう評価するかという点もなお検討の必要があるし、実際の運用に当たって解決すべき問題も存在する。
臨床的観点からの成果
研究の性格上とくになし。
ガイドライン等の開発
とくになし。
その他行政的観点からの成果
とくになし。
その他のインパクト
とくになし。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岩村正彦
経済学と社会保障法学
社会保障研究 ,  (1) , 273-315  (2011)
原著論文2
中野妙子
指導支持への不服従を理由とする保護廃止処分の相当性
名古屋大学法政論集 ,  (231) , 115-168  (2009)
原著論文3
渡邊絹子
ドイツ求職者基礎保障制度の展開
東海法学 ,  (44) , 71-82  (2010)
原著論文4
神吉知郁子
イギリスにおける最低賃金制度と稼働年齢世帯への最低所得保障
イギリス労働法の新展開 , 127-168  (2009)
原著論文5
黒田有志弥
食保障制度としての給付付き税額控除の意義-アメリカの稼働所得税額控除(EITC)
ジュリスト ,  (1413) , 44-52  (2010)
原著論文6
永野仁美
フランスにおける障害者への所得保障
季刊労働法 ,  (224) , 141-154  (2009)
原著論文7
岩村正彦
Droit social et les travailleurs pauvres au Japon
Zeitschrift fuer Japanisches Recht , 15 (30) , 33-50  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-06-29

収支報告書

文献番号
201001004Z