文献情報
文献番号
202415009A
報告書区分
総括
研究課題名
オーラルフレイル対策における口腔機能の維持・向上のための効果的な評価・介入方法の確立の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
研究分担者(所属機関)
- 本川 佳子(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 白部 麻樹(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
- 荒井 秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 理事長室)
- 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
- 池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科)
- 吉田 直美(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 口腔健康教育学分野)
- 大渕 修一(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム デジタル高齢社会)
- 植田 拓也(東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター)
- 枝広 あや子(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 秋野 憲一(札幌市保健福祉局)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,677,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
口腔機能の軽微な低下であるオーラルフレイルの概念は日本で考案され、2014年に基本的な概念が提唱された後、2024年4月1日にオーラルフレイルに関する3学会合同ステートメントが公表された。ステートメントにおいて、オーラルフレイルの位置付けが明記され、オーラルフレイル評価法として「Oral frailty5-itemChecklist:OF-5」も提示された。この評価法は残存歯数の減少、咀嚼困難感、嚥下困難感、口腔乾燥感、滑舌低下(舌口唇巧緻性低下)から構成され、2つ以上該当した者がオーラルフレイルと定義される。
健康維持を目的としたオーラルフレイル対策は、口腔機能低下症さらには食べる機能障害へと続く口腔の機能低下の負の連鎖に早期に対応することが重要であり、その体制整備は喫緊の課題である。しかしながら、オーラルフレイル評価法に基づく対策が明確になっておらず、オーラルフレイル対策の地域実装整備は進んでいない。
そこで、①オーラルフレイル評価・結果に基づくトレーニングメニューに関する知見整理、②社会実装(自治体等)モデル検討、③オーラルフレイル対策マニュアル作成、以上を本研究のコア事業として実施し、オーラルフレイル対策の適切な評価方法と有効な取組を確立することを本研究事業の目的とした。
健康維持を目的としたオーラルフレイル対策は、口腔機能低下症さらには食べる機能障害へと続く口腔の機能低下の負の連鎖に早期に対応することが重要であり、その体制整備は喫緊の課題である。しかしながら、オーラルフレイル評価法に基づく対策が明確になっておらず、オーラルフレイル対策の地域実装整備は進んでいない。
そこで、①オーラルフレイル評価・結果に基づくトレーニングメニューに関する知見整理、②社会実装(自治体等)モデル検討、③オーラルフレイル対策マニュアル作成、以上を本研究のコア事業として実施し、オーラルフレイル対策の適切な評価方法と有効な取組を確立することを本研究事業の目的とした。
研究方法
1. オーラルフレイル評価・結果に基づくトレーニングメニューに関する知見整理
地域で実装可能な口腔機能向上トレーニング等のオーラルフレイル対策および口腔機能向上に関する介入効果を報告した原著論文を和文英文ともに検索を行った。また、OF-5を用いたオーラルフレイルの実態を明らかにするため、OF-5の項目別および該当数による検討を行った。
2. 社会実装(自治体等)モデル検討
既に介護予防・日常生活支援総合事業等でオーラルフレイル対策を実施している地域等(自治体)へのヒアリングを行い、地域実装に必要な情報を収集した。また令和7年度モデル事業実施候補地を選定した。
3. オーラルフレイル対策マニュアル作成
先行研究および本研究で得られた成果を基に、オーラルフレイル対策マニュアル案を作成した。
地域で実装可能な口腔機能向上トレーニング等のオーラルフレイル対策および口腔機能向上に関する介入効果を報告した原著論文を和文英文ともに検索を行った。また、OF-5を用いたオーラルフレイルの実態を明らかにするため、OF-5の項目別および該当数による検討を行った。
2. 社会実装(自治体等)モデル検討
既に介護予防・日常生活支援総合事業等でオーラルフレイル対策を実施している地域等(自治体)へのヒアリングを行い、地域実装に必要な情報を収集した。また令和7年度モデル事業実施候補地を選定した。
3. オーラルフレイル対策マニュアル作成
先行研究および本研究で得られた成果を基に、オーラルフレイル対策マニュアル案を作成した。
結果と考察
1. オーラルフレイル評価・結果に基づくトレーニングメニューに関する知見整理
レビュー後に採用した研究は日本語論文が4件、英語論文が19件であった。
また、OF-5各項目が咀嚼機能、咬合力、嚥下機能等と有意な対応関係を持つことが示され、口腔機能低下リスクが高まっている可能性を示唆する知見を得た。また、OF-5該当数が増すにつれ、運動機能・認知機能・栄養状態低下との関連が強まり、特に4項目以上の該当では口腔機能低下に加え、栄養摂取の多様性の低下も顕著となった。これらの知見は、OF-5該当項目の内容および数に応じた個別化された対策の必要性を示唆する知見であった。
今後は、地域実装を見据え、短時間かつ簡便なトレーニングの開発と、それに応じたOF-5活用指針整備が求められる。
2. 社会実装(自治体等)モデル検討
自治体3ヶ所に対してヒアリングを実施したところ、地域における実装のポイントとして、通いの場や既存地域イベントを活用した、口腔・運動・栄養を組み合わせた多面的なアプローチが可能となっていること。また、歯科衛生士の配置などを通し、保健師・管理栄養士との円滑な多職種連携体制が整っていること。こういった体制により参加者の状態(リスク)把握と支援への迅速な対応が可能になると考える。さらに、大学(アカデミア)や歯科医師会との連携も、専門性担保と人材確保に寄与していた。
一方、課題としては(1)通いの場に参加しない住民へのアプローチ、(2)口腔機能に対する関心や理解の不足、(3)歯科医療アクセスの制約、(4)オーラルフレイル対策支援人材の不足とその負担の大きさが、共通して認識された。
今後のオーラルフレイル対策の社会実装に向けては、地域特性に応じた柔軟な支援体制の整備に加え、オーラルフレイルに関する包括的な啓発・介入策、持続可能な人材育成・確保の仕組み作りが必要である。
3. オーラルフレイル対策マニュアル作成
本研究で得られた知見等の研究成果を基に、オーラルフレイル対策マニュアル案を作成した。本マニュアルは次年度のモデル事業で使用しブラッシュアップし、さらに本事業で得られたOF-5に関する知見内容等も含め最終成果物である「オーラルフレイル対策マニュアル」を作成する。
レビュー後に採用した研究は日本語論文が4件、英語論文が19件であった。
また、OF-5各項目が咀嚼機能、咬合力、嚥下機能等と有意な対応関係を持つことが示され、口腔機能低下リスクが高まっている可能性を示唆する知見を得た。また、OF-5該当数が増すにつれ、運動機能・認知機能・栄養状態低下との関連が強まり、特に4項目以上の該当では口腔機能低下に加え、栄養摂取の多様性の低下も顕著となった。これらの知見は、OF-5該当項目の内容および数に応じた個別化された対策の必要性を示唆する知見であった。
今後は、地域実装を見据え、短時間かつ簡便なトレーニングの開発と、それに応じたOF-5活用指針整備が求められる。
2. 社会実装(自治体等)モデル検討
自治体3ヶ所に対してヒアリングを実施したところ、地域における実装のポイントとして、通いの場や既存地域イベントを活用した、口腔・運動・栄養を組み合わせた多面的なアプローチが可能となっていること。また、歯科衛生士の配置などを通し、保健師・管理栄養士との円滑な多職種連携体制が整っていること。こういった体制により参加者の状態(リスク)把握と支援への迅速な対応が可能になると考える。さらに、大学(アカデミア)や歯科医師会との連携も、専門性担保と人材確保に寄与していた。
一方、課題としては(1)通いの場に参加しない住民へのアプローチ、(2)口腔機能に対する関心や理解の不足、(3)歯科医療アクセスの制約、(4)オーラルフレイル対策支援人材の不足とその負担の大きさが、共通して認識された。
今後のオーラルフレイル対策の社会実装に向けては、地域特性に応じた柔軟な支援体制の整備に加え、オーラルフレイルに関する包括的な啓発・介入策、持続可能な人材育成・確保の仕組み作りが必要である。
3. オーラルフレイル対策マニュアル作成
本研究で得られた知見等の研究成果を基に、オーラルフレイル対策マニュアル案を作成した。本マニュアルは次年度のモデル事業で使用しブラッシュアップし、さらに本事業で得られたOF-5に関する知見内容等も含め最終成果物である「オーラルフレイル対策マニュアル」を作成する。
結論
①オーラルフレイル評価・結果に基づくトレーニングメニューに関する知見整理、②社会実装(自治体等)モデル検討、③オーラルフレイル対策マニュアル作成、以上3点の1年目の予定事業内容は円滑に実施された。
公開日・更新日
公開日
2025-05-29
更新日
-