訪問系サービスにおけるLIFEの活用に向けた評価指標の開発に資する研究

文献情報

文献番号
202415005A
報告書区分
総括
研究課題名
訪問系サービスにおけるLIFEの活用に向けた評価指標の開発に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 佳小里(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 保田 江美(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 柴山 志穂美(神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター、  保健福祉学部)
  • 城戸 顕(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
  • 赤羽 たけみ(阪本 たけみ)(奈良県立医科大学 消化器内科)
  • 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 松本 伸哉(島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
15,122,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
訪問系サービスにおけるLIFE活用に向けて、データ分析、自治体と連携した実証研究を実施し、サービス別の適切な指標と評価可能な職種を同定することを目的とした。自治体の KDB データの分析によって、在宅における要介護高齢者の医療・介護ニーズを把握し、在宅医療介護連携等におけるLIFE活用の可能性についても検討した。
研究方法
1)訪問系サービスを受ける高齢者のモニタリング指標に関する文献レビュー、2)KDBを用いた訪問系サービス利用者の特徴とニーズの分析:在宅介護サービスの利用状況に関する予備的分析、3)LIFE関連加算の算定状況:KDBを用いた分析、4)訪問系サービスに係る職種別の評価可能な指標の同定に関するアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)Pubmed、CINAHL、Embaseの3データベースより4,535件が抽出され、タイトルおよびアブストラクトスクリーニングを実施し合致する617件が抽出し、宅療養の場で訪問系サービスを受けている高齢者の状態のモニタリング指標として、のべ1,585個の指標を抽出した。高齢者の状態をモニタリングする指標が包括的評価ツール(LIFE等)と具体的評価指標(Barthel IndexやMMSE等)に大別されることがわかった。InterRAI HCとOASISの項目と比較したところ、既存のLIFE項目のみに存在する項目は基本情報の「障害高齢者の日常生活自立度」、「認知症高齢者の日常生活自立度」、総論の「緊急入院の状況:入院日」、口腔・栄養の「食事摂取量」「必要栄養量」「提供栄養量」「むせ」「歯の汚れ」「歯肉の腫れ・出血」認知症の「Vitality Index(意欲の指標)」「認知症行動障害尺度(DBD13)」の一部、であった。
2)奈良県KDBを活用し在宅サービス利用者と施設サービス利用者の群間比較を行ったところ、施設サービス利用者では女性が多く、平均年齢が高く、要介護認定区分が重度であった。サービス利用状況について、施設サービス利用者は年齢も高く、要介護度も重度である一方、在宅サービス利用者はほとんどのサービスにおいて85-59歳の利用が最も多く、要介護2の者の利用が最も多かった。訪問系サービスへのLIFEの導入を考える際には、訪問介護の生活援助は利用者に対する直接的な支援を行わず、LIFE指標に関する評価の機会が得難い可能性がある。こうした場合には、同一利用者に関与している他のサービス(通所系サービスや訪問看護、訪問リハビリテーション)においてLIFE指標の評価を実施し、その結果を共有することも考えられる。
3)奈良県KDBを活用した分析結果では、サービス種類コードを基に「施設」「通所」「訪問」の3区分に分けて抽出した実利用者数は52,658人で、「訪問」「通所」「施設」の順に多かった。「科学的介護推進体制加算」全体の算定者割合を市町村別に算出した結果では、市町村ごとの加算の算定者割合では最高で93.5%、最低で28.9%と大きな差があった。「科学的介護推進体制加算」全体のSCRを市町村別に算出したところ、最大となる自治体のSCRは139で、最小は43であった。本研究では「科学的介護推進体制加算」全体のSCRを分析例の一つとして提示したが、施設や通所、訪問等の区分でも算出することが可能である。KDBの介護レセプトデータを用いたSCRの算出は、市町村間の算定状況を可視化し、隣接する市町村や同程度の規模の市町村の実態を把握できる指標として活用でき有用と考えられる。
4)看護職628人、リハビリテーション専門職79人、介護職523人、その他28人の計1258人から回答が得られた。167項目のうち124項目で90%以上において全ての利用者に、あるいは一部の利用者に評価を実施していた。職種別で評価を実施している項目を比較したところ、看護職は「呼吸」「服薬」など健康状態を中心に、リハビリテーション専門職は、評価頻度が高く特に移動や動作に関する項目を中心に、介護職は着替えや身だしなみなど生活面が中心であった。評価項目のうち、「口腔・嚥下」「転倒」「薬剤(服薬状況等)」「疼痛」「褥瘡」「社会活動・交流」「排泄」「聴力」「視力」は、今回のアンケート調査において、いずれも90%以上の情報収集実施状況であった。これらは、要介護認定における認定調査の基本調査項目にも含まれており、65歳以上高齢者の状態を評価する上で重要な項目である。
結論
文献レビューやKDBを活用した研究に加え、訪問サービスに従事している看護職、リハビリテーション専門職、介護職を対象としたアンケート調査も実施しているため、訪問系サービスにおけるLIFEの活用に資する適切な評価指標と評価可能な職種に関する知見が得られ、評価指標の有用性・妥当性が明らかになると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202415005Z