文献情報
文献番号
202415002A
報告書区分
総括
研究課題名
国保データベースを用いた医療及び介護における訪問看護サービスの質向上に向けた効果的・効率的な提供方策の提案
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
福井 小紀子(東京科学大学 保健衛生学研究科 在宅・緩和ケア看護学分野)
研究分担者(所属機関)
- 廣岡 佳代(東京科学大学 保健衛生学研究科 在宅・緩和ケア看護学分野)
- 秋山 智弥(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター)
- 藤田 淳子(国立看護大学校)
- 安齋 達彦(東京科学大学 M&Dデータ科学センター)
- 菅野 雄介(東京科学大学 保健衛生学研究科 在宅・緩和ケア看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,611,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和6年度は、訪問看護推奨モデルの枠組みとして設定した対象ごとに、訪問看護の利用とアウトカムとの関連についての検討を行い、本研究班でこれまでに創出した分析結果を踏まえて、これらを根拠として訪問看護推奨モデルを提案することを目的とした。
研究方法
(1) 2017年3月から2018年9月に死亡し、最期2年間の追跡が可能な75歳以上の高齢者を対象とし、最期2年間における死亡場所別の訪問看護の利用状況を記述した。さらに、対象者を介護保険サービス利用者に限定し、訪問看護の利用選択と在宅看取りとの関連について検討した。
(2) 2015年7月から2017年9月に新たに在宅医療を開始した75歳以上の要介護高齢者を対象とし、開始月の訪問看護の利用と開始後1年間の在宅日数割合95%達成および在宅看取りとの関連について検討した。
(3) 2015年4月から2017年9月までの期間に心不全で入院治療を受け生存退院した75歳以上の高齢者を対象とし、訪問看護の利用状況と転帰を記述した。さらに、死亡の有無と時期から対象者を3群に分け、訪問看護利用と在宅療養状況との関連について検討した。
(4) 2013年6月から2015年10月に初回要介護認定を受けた65歳以上の高齢者を対象とし、認定時の年齢区分、ポリファーマシー状態、褥瘡保有に着目し、状態像やサービス利用状況を記述した。認定前にポリファーマシーの状態にある高齢者については、訪問看護の利用と認定後の入院等との関連について検討した。
(5) 2012年1月から2017年9月にがん治療を受けた65歳以上の高齢者を対象とし、フレイルと死亡との関連を検討した。
(2) 2015年7月から2017年9月に新たに在宅医療を開始した75歳以上の要介護高齢者を対象とし、開始月の訪問看護の利用と開始後1年間の在宅日数割合95%達成および在宅看取りとの関連について検討した。
(3) 2015年4月から2017年9月までの期間に心不全で入院治療を受け生存退院した75歳以上の高齢者を対象とし、訪問看護の利用状況と転帰を記述した。さらに、死亡の有無と時期から対象者を3群に分け、訪問看護利用と在宅療養状況との関連について検討した。
(4) 2013年6月から2015年10月に初回要介護認定を受けた65歳以上の高齢者を対象とし、認定時の年齢区分、ポリファーマシー状態、褥瘡保有に着目し、状態像やサービス利用状況を記述した。認定前にポリファーマシーの状態にある高齢者については、訪問看護の利用と認定後の入院等との関連について検討した。
(5) 2012年1月から2017年9月にがん治療を受けた65歳以上の高齢者を対象とし、フレイルと死亡との関連を検討した。
結果と考察
これまでに得られた分析結果を踏まえ、利用者アウトカムの観点から訪問看護の活用が効果的と考えられる対象特性、時期や状況について対象別に整理した。
(1) 終末期の研究:最期2年間において在宅看取りとなった高齢者の訪問看護の利用割合が高いこと、属性等を調整した多変量解析の結果、要介護高齢者において訪問看護の利用選択が在宅看取りに関連していることが示された。また、死亡3か月以前からの訪問看護の利用と最期3か月間のコストの低減との関連がみられた。よって、在宅看取りや看取り期のコストの観点から看取り直前ではなく早めの時期からの利用を提案できると考えられた。
(2) 在宅医療移行後の研究:属性等を調整した多変量解析を要介護軽度/中重度別に行った結果、要介護中重度の集団では、開始後半年の期間において開始月の訪問看護の利用が在宅日数95%達成に関連していることが示された。いずれの集団においても訪問看護の利用が在宅看取りに関連していることが示された。よって、在宅看取りの観点から要介護高齢者に移行時からの利用を提案でき、要介護中重度者においては移行初期の在宅療養継続の観点からも利用が推奨できると考えられた。
(3) 心不全入院治療後の研究:訪問看護利用者は非利用者に比べて、退院月翌月から1年間の死亡割合が高かった。また、属性等を調整した多変量解析の結果、看取りが近いと考えられる状態像においては、退院月の訪問看護利用が完全在宅継続に関連していることが示された。よって、重症度が高く看取りが近い状態を有する心不全患者において在宅療養継続の観点から退院直後からの利用が推奨できると考えられた。
(4) 初回要介護認定後の研究:超高齢や多疾患併存の地域高齢者で認定後の入院や死亡、介護度の悪化の割合が高いことが明らかになった。また、属性等を調整した多変量解析の結果、認定前のポリファーマシー状態にある高齢者に対し訪問看護を利用することで入院を予防する傾向が示された。よって、要介護認定前にポリファーマシー状態や多疾患併存である場合、入院や重症化予防の観点から初回のケアプランに訪問看護を組み込むことを提案できると考えられた。
(5) がん治療後の研究:既存のフレイル指標は死亡と有意な関連が見られ、フレイルレベルが高いほど、死亡などのリスク増加と関連していることが示された。よって、がん治療を受けるフレイルレベルの高い高齢者については、医療・介護・看取りのニーズの観点から訪問看護の利用が推奨できると考えられた。
(1) 終末期の研究:最期2年間において在宅看取りとなった高齢者の訪問看護の利用割合が高いこと、属性等を調整した多変量解析の結果、要介護高齢者において訪問看護の利用選択が在宅看取りに関連していることが示された。また、死亡3か月以前からの訪問看護の利用と最期3か月間のコストの低減との関連がみられた。よって、在宅看取りや看取り期のコストの観点から看取り直前ではなく早めの時期からの利用を提案できると考えられた。
(2) 在宅医療移行後の研究:属性等を調整した多変量解析を要介護軽度/中重度別に行った結果、要介護中重度の集団では、開始後半年の期間において開始月の訪問看護の利用が在宅日数95%達成に関連していることが示された。いずれの集団においても訪問看護の利用が在宅看取りに関連していることが示された。よって、在宅看取りの観点から要介護高齢者に移行時からの利用を提案でき、要介護中重度者においては移行初期の在宅療養継続の観点からも利用が推奨できると考えられた。
(3) 心不全入院治療後の研究:訪問看護利用者は非利用者に比べて、退院月翌月から1年間の死亡割合が高かった。また、属性等を調整した多変量解析の結果、看取りが近いと考えられる状態像においては、退院月の訪問看護利用が完全在宅継続に関連していることが示された。よって、重症度が高く看取りが近い状態を有する心不全患者において在宅療養継続の観点から退院直後からの利用が推奨できると考えられた。
(4) 初回要介護認定後の研究:超高齢や多疾患併存の地域高齢者で認定後の入院や死亡、介護度の悪化の割合が高いことが明らかになった。また、属性等を調整した多変量解析の結果、認定前のポリファーマシー状態にある高齢者に対し訪問看護を利用することで入院を予防する傾向が示された。よって、要介護認定前にポリファーマシー状態や多疾患併存である場合、入院や重症化予防の観点から初回のケアプランに訪問看護を組み込むことを提案できると考えられた。
(5) がん治療後の研究:既存のフレイル指標は死亡と有意な関連が見られ、フレイルレベルが高いほど、死亡などのリスク増加と関連していることが示された。よって、がん治療を受けるフレイルレベルの高い高齢者については、医療・介護・看取りのニーズの観点から訪問看護の利用が推奨できると考えられた。
結論
静岡県より取得した医療介護レセプトを用いた分析結果を根拠とした訪問看護推奨モデルを作成した。退院支援や介護支援専門員のケアプラン作成場面で本モデルの活用が進むと、在宅において看護ケアが必要な高齢者への確実なサービス提供が推進でき、訪問看護が有する役割機能を活用した効率的・効果的なサービス提供に資すると考える。本研究はレセプトを用いた観察研究であるため、いくつかの限界がある。今後、提供量やケア内容を把握できる臨床データ等を使用した分析により、訪問看護推奨モデルの充実を図る必要がある。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
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