大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
200942039A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究
課題番号
H19-健危・若手-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中久木 康一(東京医科歯科大学 大学院 医歯科総合研究科 顎顔面外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
  • 鶴田 潤(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 歯科医学教育学)
  • 戸原 玄(日本大学 歯学部 摂食機能療法学講座)
  • 村井 真介(東北大学 大学院 医学系研究科社会医学講座 国際保健学分野)
  • 小室 貴子(荒川区 健康部 健康推進課 歯科担当)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害等の健康危機発生時における地域包括的歯科保健体制の構築に向けて、地域における健康危機管理システムの構築過程を分析した。また、要援護者への歯科保健対策として、特に義歯紛失・破損による摂食困難者に対する、歯科保健医療支援体制への提言を行った。
研究方法
国内外での過去の事例の収集分析、ならびに大規模災害時における行政機関、歯科職能団体、歯科関係機関、歯科教育機関などにおける大規模災害時の歯科保健医療体制の準備状況や連携についてアンケートおよびインタビューにて調査した。
結果と考察
地域における大規模災害時の歯科保健医療体制の連携は十分ではなく、歯科職能団体と行政の歯科関係者を中心に、地域差のない多業種が連携した体制を構築して必要性があり、それらを教育の中に反映させていくことが求められていると考えられた。また、口腔ケアなどの大規模災害時の二次健康被害を予防するための歯科保健活動に関しては、その重要性や方策を具体的な提言とし、理解を求めていく必要性が示唆された。要援護者への歯科保健対策の検討としては、摂食・嚥下障害に対応している病院歯科に対しその災害時の支援体制について、歯科医師会を中心とした案を提示したが、対応の可否には地域差が見られ、歯科保健医療体制の構築同様に、多業種と連携しての体制を地域ごとに構築する必要性が示唆された。
結論
本邦においては高齢者を含む大人数が同じ部屋で数週間の避難生活を余儀なくされるような避難所が形成されることは少なくなく、大規模災害時の健康危機管理体制として、避難所の密集性と高齢化は特徴的であろうと考えられる。欧米諸国においては、大規模災害時に歯科医療従事者は主に身元確認作業、および不足する医療者の補充として活用されており、本邦における、高齢者に対する口腔ケアなどにより避難所の中で生じてくる感染症を予防するというような試みは皆無である。この先駆的な歯科保健医療支援を全国的な体制として構築し、更には世界に発信していくことにより寄与できることは大きいのではないかと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200942039B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究
課題番号
H19-健危・若手-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中久木 康一(東京医科歯科大学 大学院 医歯科総合研究科 顎顔面外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
  • 鶴田 潤(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 歯科医学教育学)
  • 戸原 玄(日本大学 歯学部 摂食機能療法学講座)
  • 村井 真介(東北大学 大学院 医学系研究科 社会医学講座 国際保健学分野)
  • 小室 貴子(荒川区 健康部 健康推進課 歯科担当)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害等の健康危機発生時における地域包括的歯科保健体制の構築に向けて、地域における健康危機管理システムの構築過程を分析した。また、摂食困難者に対する体制の提言や、情報活用のあり方について検討した。
研究方法
国内外での過去の事例の収集分析、ならびに大規模災害時における行政機関、歯科職能団体、歯科関係機関、歯科教育機関、NGOなどにおける大規模災害時の歯科保健医療体制の準備状況や連携について調査した。また、大規模災害時の歯科保健医療の予測されるニーズ分析を平常時のニーズから行い、要援護者への歯科保健対策として、特に義歯紛失・破損による摂食困難者に対する、歯科、および栄養学的観点からの支援の現状を調査した。さらに、過去の事例における健康危機管理支援情報の活用実績を収集分析した。
結果と考察
地域における大規模災害時の歯科保健医療体制の連携は十分ではなく、口腔ケアなどの大規模災害時の二次健康被害を予防するための歯科保健活動も十分に理解されていなかった。潜在的な歯科保健医療支援のニーズは災害時には増加することが予測されたが、摂食・嚥下障害に対応している病院歯科においては、摂食困難者への歯科治療や口腔ケア、そして摂食・嚥下機能の判定、食事指導、食事介助と多岐にわたる支援が可能ではあったが救護体制はほぼ組まれておらず、歯科医師会を中心とした体制案を提示したが対応の可否には地域差が見られた。必要とされる情報のインターネットでの収集が可能なものの比率は低く、特に英語でのアクセスが悪かった。これに対し、今回収集した過去の事例の文献や、作成した資料、参考文献などは、歯科保健医療体制情報として可能な限りインターネット上に公開した。身元確認(歯科的個人識別)の体制については、日本の体制は海外のものとは異なるもののすでに確立されており、国際的な観点が必要な場合は現状の日本の体制で対応した後に、国際的な書式に転記するほうが現場の混乱を回避でき、即応性があるものと考えられた。
結論
地域における大規模災害時の歯科保健医療体制の理解とともに連携が十分ではなく、歯科職能団体と行政の歯科関係者を中心に、地域差のない多業種が連携した体制を構築して必要性があり、それらを教育ガイドラインなどの提示とともに歯学教育の中に反映させていくことが求められていると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 災害時の歯科保健医療の体系を提示することにより、その意義や重要性を明確にすることができた。
 成果は歯科医学関連学会や歯科医師会の講習会などで発表し、関連機関における意識を喚起し、意見交換を行うことができた。
臨床的観点からの成果
 災害時の口腔ケアについてのシンポジウムの開催や報告集・パンフレットの作製により啓蒙活動を行った。
 災害時に口腔ケアによる二次疾病予防が行われるのは世界的にめずらしく、今後も発信していく必要性がある。
ガイドライン等の開発
 過去に提示されたことがなかった、歯学教育における災害時対応の扱い方、災害時の摂食困難者に対する対応、についての方向性を提示した。
その他行政的観点からの成果
 今後の災害時の歯科保健医療体制に関する情報を網羅的に収集しているため、政策策定時の基礎資料として活用できる。
その他のインパクト
 3回のシンポジウムを通じて関係者との議論をかわすことにより、より現場に即した体制を提示することができ、更に、これらの報告集やあわせて作製したパンフレットの配布などにより、ひろく一般に情報を提供した。また、これらを含む研究成果の全ては、ホームページにて公開している。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「大規模災害時の口腔ケアに関する報告集」
その他成果(普及・啓発活動)
3件
シンポジウム「災害支援における歯科の役割」  シンポジウム「被災者に対する歯科保健」 シンポジウム「大規模災害の歯科保健医療に関する教育のあり方」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-