文献情報
文献番号
202413006A
報告書区分
総括
研究課題名
臍帯血移植体制の強化・効率化と移植成績向上および新規細胞療法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FF1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 剛二(一般社団法人中部さい帯血バンク 管理監督部)
研究分担者(所属機関)
- 森島 泰雄(中部さい帯血バンク 管理部門)
- 内田 直之(虎の門病院 血液内科)
- 森島 聡子(中部さい帯血バンク 研究部)
- 松本 加代子(中部さい帯血バンク 採取推進部)
- 石丸 文彦(日本赤十字社 技術部)
- 木村 貴文(日本赤十字社近畿ブロック血液センター)
- 佐藤 義朗(名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター新生児部門)
- 宮村 耕一(総合犬山中央病院)
- 高橋 聡(東京大学 医科学研究所 血液腫瘍内科)
- 寺倉 精太郎(名古屋大学 医学部附属病院)
- 東 史啓(日本赤十字社血液事業本部 技術部造血幹細胞事業管理課)
- 加藤 栄史(愛知医科大学病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,019,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
①臍帯血採取施設での同意取得の負担軽減、健康調査票の回答率向上のためスマートフォン等によるIT化を推進、②採取施設の増設、活性化のために効果的な採取推進活動のあり方を検討、③質の高い臍帯血保存のために各バンクの臍帯血調製・保存法等の共有化を目指す、④NGSタイピング法によるHLA検査を導入してアレルの曖昧さを解消し、従来のLuminex法と比較して臨床的有用性を検証、⑤「臍帯血ユニットの選択」につき新知見を取り込んでガイドラインを更新、⑥臍帯血中の生着および再発抑止に寄与する細胞集団を特定、⑦1)脳性麻痺のモデルラットで臍帯血投与の有効性と治療機序を確認、2)再生医療等の法律・省令を遵守して研究のための包括同意の取得を実現し、研究産物の実用化・商業化のための政策提言を行う、3)臍帯血バンクの外部査察を行う、4)臍帯血を用いた新規細胞療法を検討。
研究方法
上記①では「同意書」および「健康調査票」等につき電磁的記録提出システムを構築する。②各臍帯血バンクのデータを収集して解析し、良質な臍帯血の公開数の増加を目指す。③臍帯血の調製作業等の標準化を推進するために各臍帯血バンクの自己点検等の相互受入れを実施する。④NGS-HLAタイピング法によりHLA11座全領域のDNAデータを得て臨床的データとの相関を検討。⑤「臍帯血ユニットの選択」について最近の知見を取り込んでガイドラインを更新。⑥では生着および不生着症例のsingle cell RNA sequenceを行い、生着に相関する細胞集団候補を得る。⑦では1)Wistarラットの脳障害モデルを使用し、輸注細胞数と輸注回数を検討して、最適な投与方法を確認する。2)臍帯血の研究成果の実用化のために、法律省令等を読み込んで関連団体との検討を行う。3)外部監査に関して支援機関ならびに公的臍帯血バンクの担当者と検討。4)臍帯血を用いた新規細胞療法につき世界的知見を収集検討する。
結果と考察
上記①では採取施設へのアンケートによって書類作業の負担軽減のためIT化の期待が高い反面、院内の電子化が進んでいないためにその実現の難易度が高いことも確認された。②採取施設数は110施設と増加傾向にあり、臍帯血バンクへの到着数、受入合格数および保存数は全体では増加傾向にあるがバンク間およびバンク内の施設間格差が明瞭。また採取液量も65-87mlとバンク間格差が確認された。③バンク間で相互点検を開始した。④臍帯血のHLA検査にNGSタイピング法を導入することで従来のLuminex法と比較してより精細なタイピングが可能となり、また患者のDSAを有する臍帯血ユニットを避けることが可能になった。⑤多数例を対象とした複数のTRUMPデータの解析結果を用いて日本造血・細胞療法学会のガイドライン委員会で臍帯血選択に関する検討を行うことになった。⑥臍帯血中の生着に寄与する細胞集団を特定するためにSingle cell fixed RNA profiling kitを用いて解析を試験的に開始し、その実行可能性が確認された。⑦1)低酸素血正虚血性脳症モデルラットに対してX線照射後のヒト臍帯血を投与し、コントロール群と比較して運動機能および記憶・学習能力に有意な改善を認めた。2)臍帯血を利用した研究推進のためにはガイドラインおよび法律の改定を行う必要があるが臍帯血採取時に妊婦に対してから包括同意を得ることが必要と考えられた。また臍帯血の研究成果を一般臨床で応用するためには補助金適正化法による制限があることが確認された。3)臍帯血の質的向上のため国際認証を受けることが今後の臍帯血バンクの発展に寄与するため国際監査の試験的開始が必要であると考えられた。4)米国においてはNotchリガンドを含む培地で培養された臍帯血(Dilanubicel)を患者14例に投与した結果、全例で生着および無再発生存が得られたため今後目指す方向であることが確認された。
結論
臍帯血バンク事業において最も重要なことは良質な臍帯血を安定して供給することであり、そのためには採取病院における負担を軽減し、より多くの臍帯血を効率的に採取する必要があり、妊婦の同意取得をIT化することや各バンク全体のみならず個別の採取病院での状況の把握は重要である。また臍帯血のHLAタイピングにおいてNGS法を導入することでambiguityを極力低下させ患者との適合度をより精細に判定することや本研究班での移植成績の解析結果に基づく臍帯血の選択方法につきガイドラインに組み込むことは移植成績の向上に寄与すると思われる。さらに臍帯血の生着に寄与する細胞集団の特定や脳性麻痺患者への臍帯血投与の試み、および臍帯血の増幅等は将来的な臍帯血利用の拡大につながると考えられ、そのための現行の法律改訂も視野に入れる必要があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2026-03-16
更新日
-