文献情報
文献番号
202412010A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の層別化解析、生活環境が与える影響の解明に向けた疫学研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 靖典(地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター)
研究分担者(所属機関)
- 小池 由美(長野県立こども病院 アレルギー科)
- 徳永 舞(長野県立こども病院 総合小児科・アレルギー科)
- 加藤 泰輔(富山大学 附属病院)
- 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
- 高橋 雅和(山口大学 大学院技術経営研究科)
- 高橋 亨平(独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児科)
- 松原 優里(獨協医科大学 公衆衛生学講座)
- 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
- 福家 辰樹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科)
- 木村 孔一(北海道大学 大学病院)
- 野上 和剛(札幌医科大学 医学部小児科学講座)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アレルギー疾患対策の総合的な推進を図るために、我が国におけるアレルギー疾患の現状を定期的に把握する疫学調査は国の施策として極めて重要である.令和2年度〜4年度に実施した都道府県アレルギー疾患医療拠点病院(以下、拠点病院)の職員とその家族を対象とした全国アレルギー疾患有病率の調査は我が国において始めて全年齢層・各種アレルギー疾患の網羅的な有病率調査を実施したが、母集団のバイアスや新規質問票の妥当性の検証が必要である.
拠点病院調査票は各アレルギー疾患について「医師に診断されている」「診断はされていないがそう思う」と医師の診断や症状から各アレルギー疾患の有病率を算出しているのが特徴である.令和6年度研究では、拠点病院調査票の妥当性を検証するために、拠点病院調査質問票とこれまでに我が国で使用された症状から有病率を算出するATS-DLD質問票(気管支喘息)、UK-Working Party質問票(アトピー性皮膚炎)を用いて有病率の比較を行い、質問票の違いが有病率に与える影響について検討する.
また、アレルギー疾患の発症や悪化における生活実態や環境因子との関連性を検討するために、近年急増しているクルミアレルギーについて生活環境に関するアンケート調査を開始する.
拠点病院調査票は各アレルギー疾患について「医師に診断されている」「診断はされていないがそう思う」と医師の診断や症状から各アレルギー疾患の有病率を算出しているのが特徴である.令和6年度研究では、拠点病院調査票の妥当性を検証するために、拠点病院調査質問票とこれまでに我が国で使用された症状から有病率を算出するATS-DLD質問票(気管支喘息)、UK-Working Party質問票(アトピー性皮膚炎)を用いて有病率の比較を行い、質問票の違いが有病率に与える影響について検討する.
また、アレルギー疾患の発症や悪化における生活実態や環境因子との関連性を検討するために、近年急増しているクルミアレルギーについて生活環境に関するアンケート調査を開始する.
研究方法
1.有病率調査質問票の違いがアレルギー疾患の有病率に与える影響
インターネット調査会社のアンケートモニターを対象に無作為に2群に振り分け、①拠点病院調査票と②ATS-DLD調査票およびUK-Working調査票による気管支喘息およびアトピー性皮膚炎の有病率を調査し比較検討を実施した.
(定義)
有病率:現在症状がある
累積有病率:過去もしくは現在症状がある
寛解:過去に症状があったが現在はない
2.食物アレルギー児のクルミ感作に関する生活環境アンケート調査
0−7歳のクルミアレルギー児、クルミ以外の食物アレルギー児、非食物アレルギー児の3群についてウェブアンケートによる生活実態調査を多施設共同研究にて実施した.
インターネット調査会社のアンケートモニターを対象に無作為に2群に振り分け、①拠点病院調査票と②ATS-DLD調査票およびUK-Working調査票による気管支喘息およびアトピー性皮膚炎の有病率を調査し比較検討を実施した.
(定義)
有病率:現在症状がある
累積有病率:過去もしくは現在症状がある
寛解:過去に症状があったが現在はない
2.食物アレルギー児のクルミ感作に関する生活環境アンケート調査
0−7歳のクルミアレルギー児、クルミ以外の食物アレルギー児、非食物アレルギー児の3群についてウェブアンケートによる生活実態調査を多施設共同研究にて実施した.
結果と考察
1.有病率調査質問票の違いがアレルギー疾患の有病率に与える影響
令和6年12月に調査を実施した.
成人はATS-DLD/UK-working群2360名、拠点病院調査票 2366名であり、気管支喘息の有病率はATS-DLD 11.3%、 拠点病院調査票18.7%、累積有病率はATS-DLD 16.2%、 拠点病院調査票29.2%、寛解はATS-DLD 5.0%、 拠点病院調査票10.5%であった.
アトピー性皮膚炎については累積有病率は UK-working Party 27.9%、拠点病院調査票 24.5%であった.
小児(親が回答)はATS-DLD/UK-working群2542名、拠点病院調査票2477名であり、気管支喘息の有病率はATS-DLD 21.8%、 拠点病院調査票16.4%、累積有病率はATS-DLD 24.9%、 拠点病院調査票25.2%、寛解はATS-DLD 3.1%、 拠点病院調査票8.7%であった.アトピー性皮膚炎の累積有病率は UK-working Party 36.1%、 拠点病院調査票 24.1%であった.気管支喘息では症状に基づく有病率は拠点病院調査票よりも低い傾向があり、アトピー誠意皮膚炎では症状に基づく有病率が高い傾向が見られた.
2.食物アレルギー児のクルミ感作に関する生活環境アンケート調査
35施設に協力していただき、0−7歳のクルミアレルギー(感作)患者を有する養育者150名、クルミ以外の食物アレルギー患者がいる養育者300名、食物アレルギーのない小児の養育者150名の計600名について、乳児期の栄養(母乳、混合、人工乳)、離乳食の開始月齢、母親、家族、対象児のナッツ類摂取の習慣、居住生活環境:築年数、フローリング、畳、ペット、喫煙、掃除の頻度、妊娠中の食:クルミ摂取、サプリメントなどについて調査を実施した.予定期間内でほぼ予定人数について調査を実施しており、令和7年度に解析を開始する予定である.
令和6年12月に調査を実施した.
成人はATS-DLD/UK-working群2360名、拠点病院調査票 2366名であり、気管支喘息の有病率はATS-DLD 11.3%、 拠点病院調査票18.7%、累積有病率はATS-DLD 16.2%、 拠点病院調査票29.2%、寛解はATS-DLD 5.0%、 拠点病院調査票10.5%であった.
アトピー性皮膚炎については累積有病率は UK-working Party 27.9%、拠点病院調査票 24.5%であった.
小児(親が回答)はATS-DLD/UK-working群2542名、拠点病院調査票2477名であり、気管支喘息の有病率はATS-DLD 21.8%、 拠点病院調査票16.4%、累積有病率はATS-DLD 24.9%、 拠点病院調査票25.2%、寛解はATS-DLD 3.1%、 拠点病院調査票8.7%であった.アトピー性皮膚炎の累積有病率は UK-working Party 36.1%、 拠点病院調査票 24.1%であった.気管支喘息では症状に基づく有病率は拠点病院調査票よりも低い傾向があり、アトピー誠意皮膚炎では症状に基づく有病率が高い傾向が見られた.
2.食物アレルギー児のクルミ感作に関する生活環境アンケート調査
35施設に協力していただき、0−7歳のクルミアレルギー(感作)患者を有する養育者150名、クルミ以外の食物アレルギー患者がいる養育者300名、食物アレルギーのない小児の養育者150名の計600名について、乳児期の栄養(母乳、混合、人工乳)、離乳食の開始月齢、母親、家族、対象児のナッツ類摂取の習慣、居住生活環境:築年数、フローリング、畳、ペット、喫煙、掃除の頻度、妊娠中の食:クルミ摂取、サプリメントなどについて調査を実施した.予定期間内でほぼ予定人数について調査を実施しており、令和7年度に解析を開始する予定である.
結論
アレルギー疾患医療拠点病院を活用した我が国における大規模なアレルギー疾患有病率調査で用いた調査票について、これまで我が国で実施された気管支喘息、アトピー性皮膚炎の質問票とは有病率の差が見られることが明らかとなった.
拠点病院調査票は「医師に診断されている」有病率を調査するものであるが、これは日本の医療保険制度によって全ての国民が医療受診をすることが可能であることから調査が可能な質問票である.
今後、拠点病院調査を経年的に実施することで我が国におけるアレルギー疾患の有病率の推移を把握し、環境的・社会的な課題を抽出し政策による解決に資する資料となることを期待する.
拠点病院調査票は「医師に診断されている」有病率を調査するものであるが、これは日本の医療保険制度によって全ての国民が医療受診をすることが可能であることから調査が可能な質問票である.
今後、拠点病院調査を経年的に実施することで我が国におけるアレルギー疾患の有病率の推移を把握し、環境的・社会的な課題を抽出し政策による解決に資する資料となることを期待する.
公開日・更新日
公開日
2025-11-20
更新日
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