文献情報
文献番号
202412008A
報告書区分
総括
研究課題名
患者視点に立ったリウマチ疾患のアンメットメディカルニーズの「見える」化と社会実装に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FE1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫内科学)
- 佐田 憲映(高知大学 医学部)
- 田中 榮一(東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学講座)
- 井上 祐三朗(千葉大学 大学院医学研究院総合医科学)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学)
- 川上 純(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
- 中山田 真吾(産業医科大学 医学部 第1内科学講座)
- 新納 宏昭(九州大学 大学院医学研究院 医学教育学講座)
- 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院 アレルギーリウマチ内科)
- 石井 優(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科/生命機能研究科)
- 阿部 麻美(新潟県立リウマチセンター リウマチ科)
- 岩田 慈(和歌山県立医科大学 医学部リウマチ・膠原病内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和2-4年度「難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズ(UMN)の把握とその解決に向けた研究」により抽出されたリウマチ疾患におけるUMNより,本研究では、1)専門施設受療における地域格差 2)医療情報に関するコミュニケーションを含む生活全般に及ぶ患者のUMNに焦点をあてる.これらを社会実装していく取り組みとして,1)に対し「関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA) (少関節炎型・多関節炎型)、全身性エリテマトーデス(SLE)の遠隔医療の確立に向けた提言」を作成し、2)に対し細胞擬人化漫画 講談社「はたらく細胞」を活用し,同漫画と連携した、「関節リウマチ・若年性特発性関節炎における関節炎の病態と抗リウマチ薬の作用機序」の作成を目的とした。
研究方法
1)遠隔医療の確立に向けた提言の作成 ①リウマチ医療におけるオンライン診療等の実装についてのスコーピングレビュー、②わが国のリウマチ医療におけるオンライン診療等のニーズの把握調査、③リウマチ医療における代表的疾患のオンライン診療モデルの確立と医療経済学的シミュレーションを行い、その結果を含めて提言の作成を行った。2)学習資材作成 全年齢層の患者の疾患,治療に対する理解を促進させ,患者をとりまく社会環境におけるリウマチ医療に対する理解の向上と患者・患者の周囲・医療者間での、当該疾患の医療に関するコミュニケーションの円滑化を目指す学習資材を講談社と相談しつつ、作成を行った。
結果と考察
1)遠隔医療の確立に向けた提言の作成 ①スコーピングレビューの結果、3つのランダム化比較試験と3つの観察研究が抽出された。遠隔医療による患者アウトカムに悪影響はなく、受診頻度を減少により医療費の低減につながることが確認された。今後遠隔医療の実装を行うに際し、「医療の質」の尺度の創出と評価が必要と考えられた。②ニーズ調査の結果、片道1時間以上かけて受診をしている患者がいると回答した医療者は、内科 77.5%、 整形外科58.6%、小児科76.6%であった。オンライン診療を「活用したい」または「どちらかというと活用したい」と回答した医療者は内科 67.0%、整形外科54.1%、小児科81.2%といずれも過半数以上で、地域偏在が最も著しい小児科で最多であった。成人患者・付き添い者は72.9%が「活用したい」または「どちらかというと活用したい」と回答した。疾患活動性安定の条件は、RA,JIAでは、「グルココルチコイド(GC)なしで寛解が維持され症状が安定している患者」とすることについて、「合意する」+「どちらかというと合意する」と回答した医療者は、内科 70.9%、整形外科65.4%、小児科71.9%で、SLEについて「GCがプレドニゾロン換算5mg/日以下で寛解が維持され,症状が安定している患者」(小児は「GCがプレドニゾロン換算で0.15mg/kg/日または5mg/日以下(いずれか低い方)で寛解が維持され、症状が安定している患者」)とすることについて「合意する」+「どちらかというと合意する」と回答した医療者は、内科 72.9%、小児科75.6%であり、いずれの疾患、診療科においても過半数を超えていた。③ニーズ調査結果によりRA,JIA,SLEいずれも、2か月に1回のオンライン診療に6か月に1回の対面診療を組み合わせた運用がモデルとして設定された。従来の対面診療単独の診療形態と比較した医療経済学的シミュレーションを行った。オンライン診療モデルでは、主に定期的な採血や尿検査が行えないことにより、専門医療機関は減収となることが明らかとなった。以上の研究結果を踏まえて、提言を作成した。わが国におけるリウマチ専門医療の均てん化の観点からはオンライン診療等の普及は望ましいと考えられる。今後のリサーチアジェンダとして以下9つの課題を掲げた。2)学習資材作成 関節炎の病態と主たる抗リウマチ薬(メトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害薬)の作用機序を示すべく、講談社と会議を重ね、資材を作成した。これまで「はたらく細胞」にはなかった滑膜細胞、破骨細胞を新規キャラクターとして作成した。
結論
1)遠隔医療の確立に向けた提言の作成 認識された遠隔医療実装の課題に対し、わが国がこれらを克服するための介入策を講じる必要性がある。提言に掲げた今後リサーチアジェンダに基づいた研究を展開することで、オンライン診療等の普及に貢献し、新たな臨床研究の進展が臨まれる。2)学習資材作成 病態とそれに対応した分子標的薬を含む薬物作用の理解は,病識の向上や質の高い受療、適正使用を支えるものである。本資材の貢献が期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-11-21
更新日
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