思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制に資する研究

文献情報

文献番号
202412007A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FE1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人東京科学大学 生涯免疫医療実装講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 弘明(久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)
  • 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
  • 梅林 宏明(宮城県立こども病院 リウマチ・感染症科)
  • 金子 佳代子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科)
  • 桐野 洋平(横浜市立大学 医学部)
  • 清水 正樹(東京科学大学 大学院 茨城県小児周産期地域医療学)
  • 楢崎 秀彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
  • 西山 進(一般財団法人倉敷成人病センター リウマチ科)
  • 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
  • 持田 勇一(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
  • 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,163,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間の連携の現状を実態調査により明らかにし、そこに存在する課題を抽出する。さらに、得られた知見をもとに、連携体制の強化に向けた具体的な方策を提言することを目的とする。
研究方法
本研究班では、本研究は、日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会との合同研究とし、日本リウマチ学会評議員および日本小児リウマチ学会評議員に対し、小児リウマチ性疾患の成人移行患者の受け入れ状況(小児科医は紹介状況)の他、精神神経科および産婦人科連携を含めた AYA 世代患者診療における診療科間連携および医療機関間連携の実態についてWebアンケートを用いて調査を実施した。
アンケート原案は、日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会が作製・ブラッシュアップし、WebアンケートSurveyMonkey
(https://jp.surveymonkey.com)上に本研究分担者がアンケート文面を整え提示した。
アンケートの実施方法は、日本リウマチ学会と日本小児リウマチ学会事務局へ、それぞれの評議員(1031名、110名)に対しメールを依頼した。
2025年2月19日より4月26日までの回答期間の予定である。
結果と考察
<結果>アンケート期間は2025年2月19日より2025年4月26日の予定。2025年3月31日までの中間解析を行った。回答総数は124、回答中断が16、重複回答が9あったため、99件を解析対象とした。
回答者の属性は成人科(内科59%・整形外科19%)および小児科22%。全国各地から幅広く回答が寄せられていたが、回答のない都道府県も9県存在した。医療機関の規模は、大学病院44%、400床以上の市中病院21%、200〜399床の市中病院12%で3/4を占めた。
成人移行の現状は、過去3年間での小児科から成人科への紹介数、成人科での受け入れ数はいずれも増加傾向にあるという回答が29〜50%あったが、成人科の3割では受け入れを、小児科の約1割では紹介していない状況であった。
移行支援ツールである「移行支援ガイド」や「ミライトーク」などの活用は限定的で、移行期医療支援センターの認知度が成人科で24.3%、小児科で63.6%と不十分であることが明らかとなった。
また、診療科間連携については、精神科との連携は成人科で11%、小児科で36%と限られているが、産婦人科との連携は成人科で72%、小児科で80%と比較的行われていた。プレコンセプションケアの実施状況については、成人科での実施は約8割、小児科では約半数にとどまった。女性患者にはほぼ全例で対応されていたが、男性患者への実施は2〜3割と低かった。実施時期や内容にはばらつきがあり、医師が単独で担っているケースがほとんどだった。
<考察>
本調査は、成人移行期およびAYA世代の慢性疾患患者におけるシームレスな医療提供体制の整備状況を把握することを目的として実施された。その中間解析の結果、以下のような課題が浮き彫りとなった。

診療科間・医療機関間の連携の課題
成人移行症例の紹介・受け入れについて、3年前と比較すると概ね改善・前向きになっている事が明らかになった。しかし、依然として成人科の3割が受け入れを、小児科の1割が紹介を完遂できていないことが判明した。また、既存研究による作成物の「成人リウマチ医のための移行支援ガイド」や「ミライトーク(移行支援資材)」の十分な有効利用がされていないことが明らかになった。
移行支援体制整備の必要性
現在、日本全国で移行期医療支援センターは9施設設置されているが、その認知度が高くない事が明らかになった。今後は、小児科・成人科双方が共通の視点で移行支援を行えるような、地域連携パスや支援体制の標準化が求められる。
プレコンセプションケアの未整備
プレコンセプションケアは、近年その必要性/重要性が認識されるようになりつつあるが、成人科においても実施施設が8割に満たず、小児科では半数だけであった。支援チームの組織作りや、指導内容など整備が喫緊の課題と考えられた。



結論
今回の「AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間連携の実態調査とその課題の抽出」アンケートの中間解析にて、診療科間・医療機関間連携の課題、移行支援態勢整備の必要性、プレコンセプションケアの標準化の必要性が明らかになった。思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制の質向上を図るためには、医療者への教育強化、地域連携体制の整備、ガイドラインの普及、プレコンセプションケア体制の構築といった多面的な取り組みが必要不可欠である。来年度は、本調査結果を詳細に解析して、AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間連携についての提言を提示できるよう努める。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202412007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,711,000円
(2)補助金確定額
6,711,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,208,536円
人件費・謝金 190,490円
旅費 361,676円
その他 2,443,082円
間接経費 1,548,000円
合計 6,751,784円

備考

備考
自己資金40,484円

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-