文献情報
文献番号
202412004A
報告書区分
総括
研究課題名
介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
- 酒井 良子(明治薬科大学 薬学部)
- 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
- 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ・膠原病内科学部門)
- 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科)
- 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
- 房間 美恵(関西国際大学 保健医療学部)
- 松下 功(金沢医科大学 リハビリテーション医学科)
- 辻村 美保(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,352,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「リウマチ等対策委員会報告書」(平成30年11月)において、関節リウマチ(RA)患者の高齢化及び高齢発症RA患者の増加が明らかとなった。しかし、高齢RA患者における医療・介護保険等の利用状況は調査されておらず、介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の実態も明らかでない。また、多職種連携による患者支援の充実に向けて、社会福祉士やケアマネージャー等が活用できる患者支援資材の作成も望まれている。本研究の目的は、RA患者のQOLの向上を目指し、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、社会福祉士、介護支援専門員、患者が協同して、①RA患者の医療・介護保険等の利用状況並びにRA患者の診療実態の調査、②介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援の実態調査、③①及び②に基づいたアンメットニーズの抽出、④アンメットニーズの解決に寄与する介護・福祉スタッフのためのRA患者支援資材の作成と普及活動を行うことである。
研究方法
1. RA患者の診療実態及び介護・福祉・在宅医療サービスの利用実態を明らかにするため、匿名医療保険データベース(NDB)と匿名介護情報等関連情報データベース(介護DB)を使用し調査を行う。
2. 介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の実態及びアンメットニーズの把握を行うため、介護支援専門員及び社会福祉士を対象としたアンケートを実施する。また、リウマチ医を対象に社会保険、社会保障制度、在宅診療に関する意識調査を実施する。
3. アンケート結果をもとに、介護・福祉職向けとリウマチ医向けの支援・啓発資材を作成する。また、2021年に作成されたメディカルスタッフ向け資材(『ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』)のアップデート作業を行う。
4. NinJaデータを用い、腫瘍発生後のRA治療薬使用状況と腫瘍再発リスクを評価する。
5. ATOMMおよびKURAMAコホートのデータを用いて、併存症の蓄積と関連する因子を調査する。また、NinJaデータを用いて身体機能に性差が及ぼす影響について解析する。
2. 介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の実態及びアンメットニーズの把握を行うため、介護支援専門員及び社会福祉士を対象としたアンケートを実施する。また、リウマチ医を対象に社会保険、社会保障制度、在宅診療に関する意識調査を実施する。
3. アンケート結果をもとに、介護・福祉職向けとリウマチ医向けの支援・啓発資材を作成する。また、2021年に作成されたメディカルスタッフ向け資材(『ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』)のアップデート作業を行う。
4. NinJaデータを用い、腫瘍発生後のRA治療薬使用状況と腫瘍再発リスクを評価する。
5. ATOMMおよびKURAMAコホートのデータを用いて、併存症の蓄積と関連する因子を調査する。また、NinJaデータを用いて身体機能に性差が及ぼす影響について解析する。
結果と考察
1) RA患者の診療実態調査及び介護・福祉・在宅医療サービスの利用実態調査を行うため、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)及び匿名介護情報等関連情報データベース(介護DB)の申出を厚生労働省に提出し承認された。介護DBは2024年6月と11月に、NDBは2025年2月に提供された。また、両DBで検討する項目の再確認をした。
2) 介護・福祉職を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、RAに関する基本知識は一定程度共有されていたが、治療や生活要因に関する理解は限定的で支援経験も乏しかった。RA特有の症状への配慮不足や、患者・家族からの多岐にわたる相談に対応するには、医療・福祉両面の知識が必要とされる一方、支援情報はインターネットに依存している状況が明らかとなった。医療連携では主治医の情報提供不足や文書の記載不備が課題であり、要介護認定の過小評価も多く指摘された。
3) リウマチ医を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、社会保険・福祉制度に関する知識不足が若年層を中心に顕著であった。診療所等の小規模施設ではMSWの不在による支援体制の脆弱さも明らかとなった。在宅診療に関しては、必要性の認識は高いものの実際の関与経験は少なく、RAに詳しい在宅診療医の不足や情報共有の乏しさなどが明らかとなり、在宅診療医との連携にも課題が認められた。
4) アンケート結果を踏まえ、介護・福祉職向けに『関節リウマチQ&A~すぐわかる患者支援ガイド~』、リウマチ医向けに『社会保険・福祉制度、在宅医療の基礎知識』と題した啓発資材の作成を開始した。また、2021年に作成された『ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』の改訂も開始した。
5) 腫瘍既往RA患者における薬剤使用と腫瘍再発の実態を明らかにするための検討作業を開始した。
6) 多施設前向きコホート研究(ATOMMコホート、KURAMAコホート)により、併存症の蓄積と関連する因子を明らかにした。また、NinJaコホートの解析より、身体機能に性差が及ぼす影響を明らかにした。
2) 介護・福祉職を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、RAに関する基本知識は一定程度共有されていたが、治療や生活要因に関する理解は限定的で支援経験も乏しかった。RA特有の症状への配慮不足や、患者・家族からの多岐にわたる相談に対応するには、医療・福祉両面の知識が必要とされる一方、支援情報はインターネットに依存している状況が明らかとなった。医療連携では主治医の情報提供不足や文書の記載不備が課題であり、要介護認定の過小評価も多く指摘された。
3) リウマチ医を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、社会保険・福祉制度に関する知識不足が若年層を中心に顕著であった。診療所等の小規模施設ではMSWの不在による支援体制の脆弱さも明らかとなった。在宅診療に関しては、必要性の認識は高いものの実際の関与経験は少なく、RAに詳しい在宅診療医の不足や情報共有の乏しさなどが明らかとなり、在宅診療医との連携にも課題が認められた。
4) アンケート結果を踏まえ、介護・福祉職向けに『関節リウマチQ&A~すぐわかる患者支援ガイド~』、リウマチ医向けに『社会保険・福祉制度、在宅医療の基礎知識』と題した啓発資材の作成を開始した。また、2021年に作成された『ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』の改訂も開始した。
5) 腫瘍既往RA患者における薬剤使用と腫瘍再発の実態を明らかにするための検討作業を開始した。
6) 多施設前向きコホート研究(ATOMMコホート、KURAMAコホート)により、併存症の蓄積と関連する因子を明らかにした。また、NinJaコホートの解析より、身体機能に性差が及ぼす影響を明らかにした。
結論
アンケート結果をはじめとする各種解析結果より、介護・福祉・在宅医療現場における高齢RA患者およびその支援に関する現状と課題、アンメットニーズが明らかとなった。次年度は、RA患者支援に関する各種啓発資材の完成とそれを活用した啓発活動、NDB及び介護DBの解析、NinJa及びATOMMコホートデータの解析を通して、高齢RA患者及び介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援の充実に寄与する研究をさらに推し進めていく。
公開日・更新日
公開日
2025-11-20
更新日
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