学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究

文献情報

文献番号
202412003A
報告書区分
総括
研究課題名
学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 今井 孝成(昭和大学医科大学医学部)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,856,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患を有するこどもが長時間を過ごす学校や保育所等において、適切な医学的管理の体制を構築することは極めて重要である。現在、教育現場の職員向けに「学校におけるアレルギー疾患対応ガイドライン」や「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が整備されており、主治医が現場に管理方法を適切に伝えるための生活管理指導表(以下、指導表)を基軸とした連携体制のあり方も示されている。
しかし、実際の運用には多くの課題が残されている。たとえば、指導表の不適切な記載により、食物アレルギー児に対して不要な除去食が指示された事例や、記載の不備によって症状誘発のリスクが生じた事例が報告されている。また、指導表の運用状況を把握するモニタリング体制が整備されておらず、必要な対策を講じるための情報も十分に得られていないのが現状である。
本研究では、指導表運用に関わる課題を可視化し、その改善を図る新たなシステムの構築を目指す。具体的には以下の4点を柱とする:
1. 指導表の精度向上:自治体(教育委員会)等を対象に実態調査を行い、課題を明らかにした上で、精度向上のための方策を提案する。
2. 連携体制の強化:先進地域の事例を分析するとともに、研究班員の地域において実際に連携構築に取り組む。
3. 指導表作成支援アプリの開発:非専門医でも適切に指導表を作成できるよう、既存のプロトタイプアプリを改良し、診療の質の均てん化に資する実用ツールの完成を目指す。
4. 指導表のデジタル化:継続的評価を可能とし、迅速なモニタリング体制の構築に資するシステムとして、指導表の電子化を進める。
研究方法
1. 生活管理指導表の精度向上
自治体(教育委員会等)、全国の小児科医、アレルギー対応に関わる栄養士に対する調査を実施し、現状の問題点を明らかにして、それをもとにした運用改善の提案を行い、ハンドブックとして出版する。
2. 連携体制の強化
全国6地域において、学校・保育所と医療機関、行政、消防機関等との多機関連携体制の構築の取り組みを行い、取り組み内容をまとめ、問題点を明らかにして、今後の全国での連携体制向上に資する提案を行う。
3. 生活管理指導表作成支援アプリの開発
初年度の研究で開発したアプリの有用性の検証のため、ランダム化比較試験を実施した。対象は、アレルギー疾患非専門であり、指導表記載の経験がない初期研修医または医学生である。アプリ使用群と非使用群に無作為に割り付け、模擬患者(シナリオをもとに保護者を演じた)に対してウェブ上で問診を行い、指導表を作成させた。
主要評価項目は専門医の標準的記載との一致率(正答率)とした。
4. 指導表のデジタル化
医療現場での作成、教育現場での検索/集計を容易に可能とするデジタルシステムを開発する。
結果と考察
精度向上プロジェクトでは、調査結果をもとに、『生活管理指導表運用ハンドブック(暫定版)』を作成した。これに対する医師会、教育委員会、行政機関等からのフィードバックを得て改訂作業を行った。連携体制向上プロジェクトでは、各地域の取り組みで連携が順調に進んだ地域と多くの障壁により全く進まなかった地域に分かれる実態があった。地域間の格差解消に向けた取り組みの必要性が示された。開発した生活管理指導表作成支援アプリの有用性を検証するために、非専門で経験のない研修医等を対象としたアプリ有用性を検証するランダム化比較試験ではアプリ使用群が「病型の記載」「アナフィラキシー原因の記載」「除去根拠の記載」「学校管理区分」において非使用群に比べて有意に正答率が高く、アプリの有用性を示す結果と考えた。指導表のデジタル化では、作成支援アプリと統合したシステムとして開発し、医療現場の負担軽減と教育現場の利便性向上に資するものとして完成することができた。
結論
アレルギー疾患をもつこどもが、学校や保育所等で安心・安全な生活を送るために、生活管理指導表の運用体制向上を目的として研究を遂行した。
指導表の精度向上、連携体制の整備、作成支援アプリの開発、デジタル指導表の構築という4つの柱において、いずれも一定の成果が得られた。特に、精度向上および連携強化に資するハンドブック(暫定版)の作成と、生活管理指導表作成支援アプリの妥当性がランダム化比較試験により証明された点は特筆に値する。。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202412003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,608,000円
(2)補助金確定額
7,608,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 677,520円
人件費・謝金 1,975,217円
旅費 326,640円
その他 2,175,097円
間接経費 1,752,000円
合計 6,906,474円

備考

備考
研究分担者 今井孝成(昭和医科大学)は生活管理指導表を軸とする連携体制の向上に関する研究に従事したが、今井の周辺自治体(品川区等)が、想定よりも協力関係構築が困難で、予定した連携体制構築経費(人件費・謝金)を要しない事態となった。旅費は、日本アレルギー学会等に出向いて、現状調査や研究協力者との進捗の確認などを実施する予定であったが、事前の想定よりも参加者が減ったり、また想定していた参加者が別研究費を獲得して、そちらの研究費から旅費等を捻出したため、本研究費が予算額よりも支出が大幅に少なくなった。
研究代表者 藤澤隆夫は臨床試験参加者への謝金支払いのため、人件費・謝金は増加したが、臨床試験をウエブ上で実施したため、物品費は減少、旅費もウエブ会議の多用により減少した。差引として、費用の減少がやや上回ることとなった。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-