シックハウス症候群の原因解明のための全国規模の疫学研究-化学物質及び真菌・ダニ等による健康影響の評価と対策-

文献情報

文献番号
200942026A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の原因解明のための全国規模の疫学研究-化学物質及び真菌・ダニ等による健康影響の評価と対策-
課題番号
H20-健危・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 吉岡 英治(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 田中 正敏(福島学院大学福祉学部福祉心理学科)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 森本 兼曩(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学)
  • 柴田 英治(愛知医科大学医学部衛生学講座)
  • 河合 俊夫(中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター)
  • 西條 泰明(旭川医科大学医学部健康科学講座)
  • 瀧川 智子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,198,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般住宅を対象とした全国規模の疫学研究の結果、シックハウス症候群(SHS)の症状有訴は成人よりも未成年者に多いことを明らかにした。そこでSHSのハイリスク集団である小学生を対象に、学校と自宅環境・暮らし方とSHS症状との関連を解明し、発症予防の環境づくりと暮らし方を提言することを目的とした。
研究方法
3年計画の2年目となる本年度は、平成20年度に小学生を対象とした質問紙調査の回答者から、SHS症状のある症例児と、地区・性・学年をマッチさせたSHS症状のない対象児を無作為に抽出し、コホート内症例対照研究を実施した。対象児童の住宅を訪問し、居間室内のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、VOC類34化合物、微生物由来VOC(MVOC)類13化合物、可塑剤由来VOC 2-エチル-1-ヘキサノール)の濃度測定、居間床ダスト中のダニアレルゲン量、エンドトキシン量、およびβグルカン量を測定した。併せて対象児及びその家族の健康状況と、住宅特徴について調査した。
結果と考察
旭川10軒、札幌80軒、福島20軒、福岡20軒で、症例対照各75軒、合計130軒の調査を実施した。地区によっては1年の経過により症状が消失した症例者がおり、症例対照の比較を行うのは困難なため、比較的対象者の多い札幌での結果を示す。対象住宅には戸建住宅、木造住宅が約半数を占めた。築年中央値は8年だった。結露およびカビの発生は症例に有意に多く、また症例は築年数の経過している家に居住してる傾向が得られた。症例の自宅室内環境は平均湿度、およびn-ノナン、デカナール、n-ドデカン、n-トリデカンの濃度が有意に高かった。これら化合物の濃度は調査期間中の石油燃料の暖房使用と関連した。その他のVOC類、MVOC類、2-エチル-1-ヘキサノール、エンドトキシン、βグルカン、ダニアレルゲン量に症例対照間で統計学的有意差は得られなかった。
結論
過去の報告同様、SHSの要因としてダンプネスの問題が小児を対象にした症例対照研究からも明らかとなった。また札幌市では屋外排気のあるストーブが一般的であるが、石油燃料由来の化学物質が症状との関連を示したことから、換気に配慮する必要性が示唆された。各地区別には解析に耐えうるサンプル数にならなかったことから、4地区を統合したデータ解析が今後必要である。さらに平成22年度に対象数を増やして調査を継続する予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-