アレルギー患者QOL向上のための医療従事者の効率的育成に関する研究

文献情報

文献番号
202412001A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー患者QOL向上のための医療従事者の効率的育成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FE1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
勝沼 俊雄(東京慈恵会医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・アレルギーセンター)
  • 伊藤 靖典(地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,271,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. アレルギー診療コメディカルが希求するeラーニング教材の検討
2. 上記結果に基づいた喘息治療薬吸入手技のeラーニング教材開発および妥当性検証
3. アレルギー性鼻炎治療薬鼻噴霧手技のeラーニング教材の開発およびeラーニングが患者の重症度・QOLに及ぼす効果の評価
研究方法
本研究計画はPart 1とPart 2で構成される。Part 1では喘息ステロイド吸入に関して、受講者のニーズに合致したeラーニング教材(以下,教材1)を作製した。検討の結果、その学習効果は参加型の講習に劣らないことが示唆された。
Part 2ではアレルギー性鼻炎(スギ花粉症)を対象疾患とした。Part 1同様,初めに薬剤師を対象とした聞き取り調査を実施し,eラーニング教材(以下,教材2)教材を作製した。
引き続き研究参加4施設の院内薬局薬剤師全員に,教材2で研修して頂いた。その臨床効果を確認するために,スギ花粉症患者の研究参加者を募集し,院内薬局にて処方を受ける群(鼻噴霧指導のeラーニングを受講した薬剤師に服薬指導をうけた群)と院外薬局にて処方を受ける群にランダム化して割り付けた。臨床効果に関しては,①処方時(2024年1月31日以前),②花粉飛散期(3月1日),③花粉飛散期(3月15日)の計3ポイントにおいて,花粉症症状とQOLに関するアンケート調査を行った。症状に関してはくしゃみ,鼻汁,鼻閉等に関するNRSを使用し,QOL評価には妥当性の認められた質問紙(JRQLQ)を使用した。
この研究計画は慈恵大学倫理委員会の承認を受けた。
結果と考察
研究結果
Part 2研究計画であるステロイド鼻噴霧指導の効果の統計解析結果を示す。年齢の平均値(±標準偏差)は被験群33.8 ± 12.7歳,対照群37.6 ± 13.8歳であった。年齢の範囲は両群とも13~58歳で,18歳未満の被験者は各群3名であった。両群とも女性の被験者が多かった。
最終評価時のくしゃみの程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群0.8009(0.5577),対照群1.0678(0.5634)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,-0.2669(-1.7549~1.2211,P=0.7194)であった。鼻汁の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群1.1657(0.5636),対照群1.0919(0.5698)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,0.07383(-1.4403~1.5880,P=0.9221)であった。
鼻汁の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群1.1657(0.5636),対照群1.0919(0.5698)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,0.07383(-1.4403~1.5880,P=0.9221)であった。鼻閉の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群-0.3422(0.6869),対照群0.6209(0.6937)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は-0.9631(-2.7929~0.8667,P=0.2943)であった。
結果的に,主要評価項目,副次評価項目のいずも,eラーニングの有意な効果は検出されなかった。ただし,個々のアレルギー症状の経時変化を見ると,3月初旬では被験群の程度のほうが軽かった項目も散見された。Post-hoc解析においては,3月1日前後にNRSで評価した鼻閉の変化量においてeラーニング群と対照群との間に統計学的有意差が認められた(P=0.0365)。
考察
上記の結果が得られた背景の一つとして,2024年春のスギ花粉が影響した可能性が考えられた。本試験は2023年10から2024年3月にかけて実施されたが,関東地方では2024年春のスギ花粉飛散量が例年よりも少なかった。このため,両群とも被験者が報告したアレルギー症状の程度は比較的軽度であった。さらに,被験者が点鼻手技の指導を受けたのは処方開始時のみであったため,3月中旬には指導の効果が減弱していた可能性も否定できない。
このような限界はあるものの,花粉飛散初期の鼻閉症状に関してはeラーニングを受講した薬剤師による服薬(ステロイド点鼻)指導あるいは疾患対応指導の有効性が示唆された。eラーニングには多忙な薬剤師等が受講しやすいというメリットもある。鼻閉はアレルギー性鼻炎患者のQOLに影響の強い症状であることも勘案すれば,アレルギー性鼻炎患者の症状やQOL向上に向け,eラーニング教材は医療従事者の効率的育成に資する可能性が示唆された。
結論
スギ花粉症対応のeラーニング教材は医療従事者の効率的育成に資する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

文献情報

文献番号
202412001B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー患者QOL向上のための医療従事者の効率的育成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FE1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
勝沼 俊雄(東京慈恵会医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・アレルギーセンター)
  • 伊藤 靖典(地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. アレルギー診療コメディカルが希求するeラーニング教材の検討
2. 上記結果に基づいた喘息治療薬吸入手技のeラーニング教材開発および妥当性検証
3. アレルギー性鼻炎治療薬鼻噴霧手技のeラーニング教材の開発およびeラーニングが患者の重症度・QOLに及ぼす効果の評価
研究方法
本研究計画はPart 1とPart 2で構成される。3年目に当たる令和6年(2025年)度はPart 1のステロイド吸入指導に引き続き、Part 2としてアレルギー性鼻炎(スギ花粉症)を対象とした。Part 1同様,初めに薬剤師を対象とした聞き取り調査を実施し,eラーニング教材(以下,教材2)教材を作製した。
引き続き研究参加4施設の院内薬局薬剤師全員に,教材2で研修して頂いた。その臨床効果を確認するために,スギ花粉症患者の研究参加者を募集し,院内薬局にて処方を受ける群(鼻噴霧指導のeラーニングを受講した薬剤師に服薬指導をうけた群)と院外薬局にて処方を受ける群にランダム化して割り付けた。臨床効果に関しては,①処方時(2024年1月31日以前),②花粉飛散期(3月1日),③花粉飛散期(3月15日)の計3ポイントにおいて,花粉症症状とQOLに関するアンケート調査を行った。症状に関してはくしゃみ,鼻汁,鼻閉等に関するNumerical Rating Scale(NRS)を使用し,QOL評価には妥当性の認められた質問紙(JRQLQ)を使用した。
令和6年(2024年)度に,教材2による鼻噴霧指導の効果を確認するために,データ収集,クリーニング,クエリ,データセット作成し,統計専門家による統計解析を行った。
(倫理面への配慮)
慈恵大学倫理委員会の承認を受けた。
結果と考察
結果
Part 2研究計画であるステロイド鼻噴霧指導の効果の統計解析結果を示す。年齢の平均値(±標準偏差)は被験群33.8 ± 12.7歳,対照群37.6 ± 13.8歳であった。年齢の範囲は両群とも13~58歳で,18歳未満の被験者は各群3名であった。両群とも女性の被験者が多かった。
最終評価時のくしゃみの程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群0.8009(0.5577),対照群1.0678(0.5634)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,-0.2669(-1.7549~1.2211,P=0.7194)であった。鼻汁の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群1.1657(0.5636),対照群1.0919(0.5698)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,0.07383(-1.4403~1.5880,P=0.9221)であった。
鼻汁の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群1.1657(0.5636),対照群1.0919(0.5698)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は,0.07383(-1.4403~1.5880,P=0.9221)であった。鼻閉の程度の変化量の最小2乗平均(標準誤差)は被験群-0.3422(0.6869),対照群0.6209(0.6937)で,群間差の点推定値(95%信頼区間,P値)は-0.9631(-2.7929~0.8667,P=0.2943)であった。
結果的に,主要評価項目,副次評価項目のいずも,eラーニングの有意な効果は検出されなかった。ただし,個々のアレルギー症状の経時変化を見ると,3月初旬では被験群の程度のほうが軽かった項目も散見された。Post-hoc解析においては,3月1日前後にNRSで評価した鼻閉の変化量においてeラーニング群と対照群との間に統計学的有意差が認められた(P=0.0365)
考察
上記の結果が得られた背景の一つとして,2024年春のスギ花粉が影響した可能性が考えられた。本試験は2023年10から2024年3月にかけて実施されたが,関東地方では2024年春のスギ花粉飛散量が例年よりも少なかった。このため,両群とも被験者が報告したアレルギー症状の程度は比較的軽度であった。さらに,被験者が点鼻手技の指導を受けたのは処方開始時のみであったため,3月中旬には指導の効果が減弱していた可能性も否定できない。
このような限界はあるものの,花粉飛散初期の鼻閉症状に関してはeラーニングを受講した薬剤師による服薬(ステロイド点鼻)指導あるいは疾患対応指導の有効性が示唆された。eラーニングには多忙な薬剤師等が受講しやすいというメリットもある。鼻閉はアレルギー性鼻炎患者のQOLに影響の強い症状であることも勘案すれば,アレルギー性鼻炎患者の症状やQOL向上に向け,eラーニング教材は医療従事者の効率的育成に資する可能性が示唆された。
結論
3年目も順調に研究を実施できた。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202412001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アレルギー診療コメディカルが希求するeラーニング教材を作成し、教育効果と臨床効果を検討した。前者は喘息吸入ステロイド指導において検討したが、従来の参加型講習会に劣らないことが示唆された。後者はスギ花粉症患者への指導教材という観点から検討したが、最もQOLに影響すると考えられる鼻閉においてeラーニングによる指導の有効性が示唆された。
臨床的観点からの成果
これまで「患者指導・教育」に関する研究は、指導の手技を評価するものが大半であった。今回は、第一に、コロナ禍を受けてeラーニングの妥当性を検証したが、参加型に劣らないことを示すことができた。またPart 2では、指導・教育の先にあるendpointである患者の臨床症状やQOLにまで踏み込み、eラーニング教育の有効性をある程度示すことができた。
ガイドライン等の開発
各種アレルギー疾患ガイドラインには患者指導・教育の必要性が記載されているが、エビデンスは非常に乏しい。今回の成果は、患者指導・教育の妥当性に関するエビデンスとなり得る。
その他行政的観点からの成果
本成果を基に医師、CAI(Clinical Allergy Instructor)、PAE(Pediatric Allergy Educator)らコメディカルのチーム医療が拡充すれば、アレルギー疾患基本法の目的であるアレルギー診療均てん化に近づくことができる。
その他のインパクト
医師もそうであるが、医師と協調すべきCAI(Clinical Allergy Instructor)、PAE(Pediatric Allergy Educator)にとっては、日常実践している指導行為やスキルの妥当性、正当性の根拠となり得る資料といえる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202412001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,084,000円
(2)補助金確定額
5,084,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 39,281円
人件費・謝金 383,101円
旅費 0円
その他 3,848,548円
間接経費 813,000円
合計 5,083,930円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
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