データベースを活用した慢性腎臓病(CKD)の診療実態把握と最適化を目的とした体制構築

文献情報

文献番号
202411005A
報告書区分
総括
研究課題名
データベースを活用した慢性腎臓病(CKD)の診療実態把握と最適化を目的とした体制構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FD1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部)
  • 猪阪 善隆(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学)
  • 伊藤 孝史(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科(腎臓内科))
  • 中川 直樹(旭川医科大学 医学部)
  • 矢野 裕一朗(順天堂大学  総合診療科学講座)
  • 福間 真悟(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
4,546,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎疾患対策を有効に進めていくためには、CKDの実態、診療実態に関する詳細なデータ収集及びその経時的解析を行い、進捗を管理し、その都度課題を抽出・解決できる仕組みを構築する必要がある。現状では、全国の状況を俯瞰し、評価できる包括的なデータベース及び運用システムは構築されていない。
そこで本研究の目的は以下となる。
1)日本におけるCKDの実態・診療実態に関する既存のデータベース等を整備、拡充する。研究目的に最適なデータベースを選定する。
2)選定したデータベースを用いてCKDの実態・診療実態を解析する。
3)ガイドラインの遵守率及び遵守することで予後が改善されるかを検証可能なシステムを構築し、さらなるエビデンスも構築できる継続的・円環的な系とする。
4)解析結果を広く開示し、関係者・国民が共有できるシステムを構築する。
5)データベースの持続的な運用及び利活用が可能となるシステムを構築する。
6)次期腎疾患対策検討会におけるCKD対策の政策立案で活用可能な資料を準備する。
7)CKD対策の進捗管理にロジックモデルを導入する。最終的なアウトカムとして「新規透析患者数の減少」を目標に掲げ、その達成に向けて初期アウトカムや中間アウトカム、アウトプットを設定する。これに基づき、インプットやアクティビティを整備する。各段階で評価指標を明確にする。
研究方法
項目1)日本におけるCKDの診療実態に関するデータベース等の構築と、最新の診療実態を検証する、項目2)CKD重症化予防と透析導入防止に向けたCKDの診療実態の評価のための指標を策定する、項目3)ガイドラインが推奨する治療の遵守率及び遵守によるアウトカム改善を解析する方法を確立する、項目4)データベースの持続的な運用及び利活用が可能となるシステムの構築と、データベース維持のための方策を提示する、項目5)CKD対策ロジックモデルによる進捗を管理する。
結果と考察
日本におけるCKD(慢性腎臓病)対策の推進に向け、診療実態の把握や評価指標の構築、ガイドライン遵守の効果検証など、データに基づく包括的な取り組みが進められている。J-CKD-DBおよびNDB(National Database)を活用し、前者では2014年から2024年までに10施設から計52万9,169件の症例を収集・解析してきた。特に注目すべきは、CKD診療ガイドラインの評価方法を独自に開発し、実臨床における遵守状況と腎アウトカムとの関連を検証したことである。RA系阻害薬使用など8項目を遵守指標とし、遵守指標を満たす数で4群に分類した結果、最も遵守度の高い群では、腎機能の低下や腎イベントのリスクが有意に低下していた。このことは、ガイドラインに準拠した診療がCKDの予後改善に直結することを科学的に裏付けるものである。
さらに、国の腎疾患対策として、普及啓発、診療連携、人材育成、診療水準向上の4本柱からなるロジックモデルも作成されており、政策実行の進捗管理にも活用されている。 
以上により、CKD対策を科学的根拠に基づき持続的に展開できる基盤を構築し、透析導入の抑制や患者QOLの向上を図ることが期待される。
本研究により以下の効果が期待できる。
1)全国的なCKDの実態、診療実態を俯瞰的かつ経年的に可視化することが可能となる。
2)厚労省腎疾患対策検討会報告書で掲げる到達目標(10年間で新規透析10%減少)の進捗管理に必要な情報を適宜提供できる。俯瞰的データを経時的に提供することで医療行政へ貢献できる。
3)ガイドラインが推奨する標準医療への遵守率をQuality Indicator(QI)を測定し、医療の質、Evidence-Practice gap,地域による医療の質のばらつき評価が可能となる。
4)リアルワールドデータに基づく持続的かつ自立的(低負荷)のCKDの診療解析、エビデンス創出プラットフォームの構築が可能となる。CKD診療の質向上、医療最適化に資する医療ビッグデータの活用法を提示できる。
5)精緻なCKD重症化予測指標を確立し、より正確な重症化予測、層別化が可能となる。
6)ガイドライン改定前後の診療実態変化、予後変化を評価し、ガイドライン自体の評価が可能。
7)以上の過程を円環的に循環(PDCA)させることで、遵守可能で完成度の高いガイドラインの作成が可能となり、診療の質向上に貢献できる。良質な医療の均霑化、標準化を加速できる。
結論
本研究によりCKDの実態・診療実態の“見える化”が可能となり、CKD対策の政策立案、次期腎疾患対策検討会で活用可能な資料を準備する。診療の質の向上と腎臓病重症化抑制に貢献することを目標としたい。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202411005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,035,501円
人件費・謝金 751,117円
旅費 131,300円
その他 656,335円
間接経費 454,000円
合計 5,028,253円

備考

備考
自己資金充当ありのため。

公開日・更新日

公開日
2025-11-21
更新日
-