医療者および患者の視点から見た災害に備えた透析患者の情報管理と体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
202411003A
報告書区分
総括
研究課題名
医療者および患者の視点から見た災害に備えた透析患者の情報管理と体制整備に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FD1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中山 雅晴(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 真理子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 正(東北大学病院 総合地域医療教育支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、災害時に自施設における透析が不可となり他施設に透析を依頼する際、平時における患者情報の中でどの情報が共有すべき重要な項目か、またどのようにしてその情報を共有するか等について、透析医療に従事する多職種スタッフに調査を行い明らかにすることを目的とする。さらに透析患者側についても調査を行い、災害時に「知っておいて欲しい情報」および「自分自身でも知っておきたい情報」などを明らかにする。また、地域医療連携システム等透析情報ネットワークを持つ地域、逆に持たない地域における全国調査も行い、文献的考察も加えながら、感染パンデミックを含む災害時における透析患者管理に必要な情報の特定とそれを支えるインフラの有り様を明らかにし、課題の抽出および解決への提言へつなげていくことを目標とする。さらに今後活用が期待されるPersonal Health Record (PHR)の利用による患者-透析施設間の情報共有の改善効果も検討する。
研究方法
令和6年度は奈良県および三重県の透析施設の調査を行う。これまでの被災経験の有無、前年度調査した宮城県内施設との比較を行い、現状の問題点を詳らかにする。本研究は、医療機関のみならず患者側の視点を取り入れることで、患者管理に重要と思われるデータ項目の差異を明らかにし、患者目線を考慮した診療体制の確立を目的とした提言へ繋げることを主眼としており、対策のコストをいかに抑えながら効果を上げられるかという見地からも論点を整理する。また、災害時には透析時間を通常よりも短縮して、多くの患者を受け入れる試みがなされるが、その影響や是非について文献的調査も行った。さらに、令和6年1月に起きた能登半島地震において実際に血液透析患者治療に関わった医師にオンラインインタビューを試みた。
結果と考察
1)今年度は奈良県内からのアンケート回答を解析した。医療関係者の有効回答数は227名であった。院内における患者情報は電子カルテや透析記録等を活用するが、その情報を患者と共有している割合は全体で34%であった。自施設で透析が不可となった際に依頼する施設が決まっていると答えた医療者が48%であった。他院に透析を依頼する際に共有すべき情報は透析情報(Dry weight、抗凝固剤、ダイアライザ等)ならびに感染症、禁忌薬、アレルギーを上位に挙げた。全国医療情報プラットフォームにおける透析情報の共有に関しては84%、地域連携ネットワークにおける情報連携は86%が有用と回答した。PHRについても77%が有用性を期待していた。
透析患者にも施設を通してアンケートを実施(有効回答数 237名。年齢:67.7±11.0歳、男性約61%、透析年数:9.9±9.2年)。18%の回答者が被災経験を有した。他施設に紹介される際に自分の情報が上手く伝わっているか気になるという人は61%おり、知ってほしい情報として、普段の透析条件、薬剤、ドライウェイトなどが挙げられた。マイナポータルや全国医療情報プラットフォームにおいて透析情報の共有は81%が必要と関心が強かった。地域連携ネットワークに関しても85%が有用と感じ、PHRによる透析情報の共有も64%が賛成であった。
2)災害時における透析時間短縮は大規模地震の発生直後に行われ、いくつかのガイドラインにも明記されている。通常回復が速やかなため健康被害に明らかなものはないが、患者心情を踏まえ、より明確なエビデンスの構築と医療従事者を守る仕組みづくりが必要である。
3)能登半島地震において本研究で想定される内容について重要な知見を得たため、今後対象を拡大し、論点を整理する。
結論
昨年度宮城県で調査した結果同様、患者情報を医療者および患者間で共有している割合は高くない。また、災害時自施設で透析が不可になった際に依頼する施設が既に決まっているという回答は約半数であった。共有すべき情報項目に関しては、医療側が透析情報のみならず、感染症、アレルギー、禁忌薬などを重視していた。一方、患者側は自分の情報がきちんと伝達されるか6割以上に不安感があるため、伝達するデータおよび方法や状況の可視化が望まれた。現在国が進める全国医療情報プラットフォームやマイナポータルを介した透析情報の共有に関して、医療関係者側からも患者側からも望む声が多く、地域連携システムやPHRの活用も同様である。また、災害時における透析時間の短縮や、令和6年能登半島地震における透析患者対応など、知見に関しての情報収集と論点整理は引き続き検討していく。

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202411003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 944,000円
人件費・謝金 2,303,343円
旅費 401,107円
その他 201,550円
間接経費 1,150,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-11-20
更新日
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