保健師等の地域保健従事者の地域住民からの暴力等に対する危機管理のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200942021A
報告書区分
総括
研究課題名
保健師等の地域保健従事者の地域住民からの暴力等に対する危機管理のあり方に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
平野 かよ子(東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 鳩野洋子(九州大学大学院医学研究院保健学部門)
  • 反町吉秀(青森県上十三保健所)
  • 末永カツ子(東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻 )
  • 中板育美(国立保健医療科学院公衆衛生看護部)
  • 妹尾栄一(東京都精神医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、文献検討を基に、全国の精神保健福祉センター、保健所および児童相談所において相談業務に従事する者が住民から受ける暴力の実態と暴力の危機管理体制を明らかにし、これらの実態を基に、有識者を交え対応方法および組織としての安全管理体制について検討し、対応の手引を作成する。

研究方法
1)聞き取り調査:平成20年度の調査においてインタビュー調査の協力を申し出た保健所の中から10ヶ所と1児童相談
所を特定し、暴力が発生したプロセス、暴力を行った住民等への対応方法及び暴力に対する職場の組織的な危機管理体制等のソフト面と暴力防止のための環境整備等のハード面についての詳細な聞き取りを行った。
2)検討会の実施:1)の調査結果を踏まえ、暴力の防止及び暴力発生時の個別事例への対応と組織における危機管理体制について、有識者(DV研究者と精神担当都道府県保健師)を交え論議集約した。

結果と考察
インタビュー調査の結果から、事例にかかわった職員の力量とともに職員をサポートする係内の情報の共有、支援体制のありかた、組織全体としての管理体制、警察等の組織外の機関との連携体制のあり方、さらに都道府県本庁との役割等の暴力防止に関連する構造的な側面を明らかにすることができた。技術的側面としては具体的な工夫、組織内外での教育・研修のあり方が示唆された。
新たに明らかにされた点は、①地域保健従事者は対象の言動に脅威を感じても、暴力を受けたとは認識していないことが多いことである。また、特に精神科救急においては本庁との役割分担あるいは本庁の保健所ヘのバックアップ体制が取れているかで、暴力の発生防止や暴力回避が異なることが明らかにされた。インタビュー調査結果を専門家を交えて分析することで、下記の項目立ての「暴力防止のための対応マニュアル」とするとの結論を得た。この柱立てにそってマニュアル案を作成中である。
結論
都道府県には暴力防止及び発生時の対応マニュアルが作られていたが、その多くは「不当要求行為等対応マニュアル」「行政対象暴力対応マニュアル」であった。暴力の発生する状況にあっても地域保健従事者が支援者としてのアイデンティティとモチベーションを維持し、暴力の発生を予測し対処する方法、さらに暴力の発生時に住民と従事者の双方の生命と人権を組織的に守る体制を整備することが重要であり、それを推進する指針等が必要であることを再確認した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-14
更新日
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