文献情報
文献番号
199700727A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい発生工学技術の開発による研究基盤高度化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
鍋島 陽一(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
- 笹岡俊邦(国立精神・神経センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 ヒトゲノム・遺伝子治療研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、モデル動物の開発については大きく2つの問題を抱えている。第1はこれまでの方法では詳細な解析が困難であることから、新たな方法の開発を必要としていることであり、第2は効率的な保存と供給システムの確立が急務になっていることである。本研究では(1)目的とする組織や発生段階で、対象遺伝子にアミノ酸の変異や、部分欠損、部分増幅を導入する方法の開発、(2)特定の組織や発生段階でCreリコンビネースを発現するマウスの作成、(3)Creリコンビネースを誘導的に発現させるシステムの開発により、遺伝子機能の質的変化を誘導できるシステムを確立し、併せて、「効率的な保存、生産システム」を導入することにより、遺伝子改変マウス、Creリコンビネースを発現するマウスなどの有効利用体制を確立し、病態の解析、治療法の開発のための研究基盤の高度化に貢献することを目的としている。
研究方法
モデルケースとして、NMDAレセプターのCaの流入を抑えているアミノ酸配列に置換をいれることを目的として、膜ドメイン2を含むエクソンをコードする遺伝子を分離した。ついで、正常配列をもつエクソンと変異を導入したエクソンが人工的に合成したイントロンを隔てて並列に配置するよう相同組み換えベクターを作成し、胚幹細胞に導入した。合成イントロンを工夫することにより、絶えず正常配列をもつエクソン(5'側)のみを選択させることが可能であるが、正常配列エクソンを欠失させると変異配列をもつエクソン(3'側)が利用され、転写産物に変異が導入されるように計画した。なお、正常配列をもつエクソンを欠失させる方法として、合成イントロンと正常配列エクソンの上流にloxP配列を組み込み、Creリコンビネースにより飛ばすこととした。
脳の部位特異的に発現する遺伝子のプロモーターにCreリコンビネース遺伝子を連結した発現プラスミドを作成し、マウス受精卵に導入し、その発現を解析している。
脳の部位特異的に発現する遺伝子のプロモーターにCreリコンビネース遺伝子を連結した発現プラスミドを作成し、マウス受精卵に導入し、その発現を解析している。
結果と考察
(1)アミノ酸の変異や、部分欠損、部分増幅を導入する方法の開発
相同組み換えベクターを胚幹細胞に導入し、TK,Neoを用いたPositive/Negative選択により生き残ったコロニーをピックアップした。各々の細胞の培養と平行してDNAをPCRにかけ、相同組み換え細胞を選択した。約1%の細胞が相同組み換えをおこした細胞コロニーと判断され、これらの細胞を多量に培養に最終的にはサザンブロットにより遺伝子型を判定し、計5個の相同組み換え細胞をえた。ターゲットであるNMDA受容体遺伝子には計3個のloxP配列が挿入されている。第2膜貫通ドメインをコードするエクソンの上流に挿入されているNeo遺伝子の上流(5'側)、下流(中央)にloxP配列を1個ずつ、合成イントロン(3'側)に1個の3個である。ついで、この細胞にCreリコンビネース遺伝子を発現するためのプラスミドを電気穿孔法で導入し、多数のコロニーを選択し、3個のloxP配列がどのような組み合わせで利用されて、遺伝子が切り出されたかを検討した。本実験の目的のためにはNeo遺伝子の上流(5'側)、下流(中央)のloxP配列の間で切り出し反応がおこり、結果として、TK遺伝子がきりだされ、第2膜貫通ドメインをコードするエクソンの上流にloxP配列が残る形にしなければならないが、大部分のケースはTK遺伝子の上流(5'側)のloxP配列と合成イントロン(3'側)のloxP配列の間で切り出し反応が起こっており、目的とするものではなかった。しかし、数%の細胞で目的どおりの切り出しが起こっていることが確認できた。この細胞では個のloxP配列と合成イントロン、。変異を導入したエクソンが挿入されている以外は何も遺伝子上に残っていない。ついで、残った2つのloxP配列が機能することを確認した後に胚幹細胞をブラストチストに打ち込み、キメラマウスを作製した。ついでヘテロマウス、ホモマウスを作製し、それぞれの脳よりmRNAを調製して、RTーPCRにより読み取られているエクソンを検討した。相同組み換えマウスは予想どおり、正常配列を読み取っており、ホモにしても何ら、変異症状を示さなかった。ところが、神経細胞でCreリコンビネースを発現するマウスと掛け合わせたところ、マウスは生後3週頃より硬直、運動機能異常を示すようになり、Caイオンが多量に神経細胞に流入し、神経細胞の機能異常、神経細胞死が起こっていることが推定された。検討すべき課題が多くあるが、基本的には細胞特異的にアミノ酸置換を導入する方法の開発に成功した。
(2)Creリコンビネースを発現するマウスの作成
上記の目的のためには、特定の部位で、あるいは誘導的にCreリコンビネースを発現させる必要があり、海馬、GABAニューロンなどでCreリコンビネースを発現するマウス、エクダイソンによる誘導系を利用したCreリコンビネースを誘導的に発現するマウスの作成を目的として、導入遺伝子を構築し、発現マウスを作成中である。マーカー遺伝子の発現によりCreリコンビネースを発現した細胞と発現していない細胞を見分けるためのマウスと掛け合わせて、作成されたマウスの判定を行うことを予定している。
Conditional Amini acid substitution実験に成功したが、その効率については今後の課題である。また、Creリコンビネースの発現なしにアミノ酸の置換がわずかながら起こっていないかを調べる必要がある。今回の成功が普遍的に各種の遺伝子に応用できるかどうかも調べる必要がある。
部位特異的なCreリコンビネースの発現には特異的なプロモーターを必要とするが、この点が問題であり、今後は直接遺伝子を導入することを考える必要がある。
相同組み換えベクターを胚幹細胞に導入し、TK,Neoを用いたPositive/Negative選択により生き残ったコロニーをピックアップした。各々の細胞の培養と平行してDNAをPCRにかけ、相同組み換え細胞を選択した。約1%の細胞が相同組み換えをおこした細胞コロニーと判断され、これらの細胞を多量に培養に最終的にはサザンブロットにより遺伝子型を判定し、計5個の相同組み換え細胞をえた。ターゲットであるNMDA受容体遺伝子には計3個のloxP配列が挿入されている。第2膜貫通ドメインをコードするエクソンの上流に挿入されているNeo遺伝子の上流(5'側)、下流(中央)にloxP配列を1個ずつ、合成イントロン(3'側)に1個の3個である。ついで、この細胞にCreリコンビネース遺伝子を発現するためのプラスミドを電気穿孔法で導入し、多数のコロニーを選択し、3個のloxP配列がどのような組み合わせで利用されて、遺伝子が切り出されたかを検討した。本実験の目的のためにはNeo遺伝子の上流(5'側)、下流(中央)のloxP配列の間で切り出し反応がおこり、結果として、TK遺伝子がきりだされ、第2膜貫通ドメインをコードするエクソンの上流にloxP配列が残る形にしなければならないが、大部分のケースはTK遺伝子の上流(5'側)のloxP配列と合成イントロン(3'側)のloxP配列の間で切り出し反応が起こっており、目的とするものではなかった。しかし、数%の細胞で目的どおりの切り出しが起こっていることが確認できた。この細胞では個のloxP配列と合成イントロン、。変異を導入したエクソンが挿入されている以外は何も遺伝子上に残っていない。ついで、残った2つのloxP配列が機能することを確認した後に胚幹細胞をブラストチストに打ち込み、キメラマウスを作製した。ついでヘテロマウス、ホモマウスを作製し、それぞれの脳よりmRNAを調製して、RTーPCRにより読み取られているエクソンを検討した。相同組み換えマウスは予想どおり、正常配列を読み取っており、ホモにしても何ら、変異症状を示さなかった。ところが、神経細胞でCreリコンビネースを発現するマウスと掛け合わせたところ、マウスは生後3週頃より硬直、運動機能異常を示すようになり、Caイオンが多量に神経細胞に流入し、神経細胞の機能異常、神経細胞死が起こっていることが推定された。検討すべき課題が多くあるが、基本的には細胞特異的にアミノ酸置換を導入する方法の開発に成功した。
(2)Creリコンビネースを発現するマウスの作成
上記の目的のためには、特定の部位で、あるいは誘導的にCreリコンビネースを発現させる必要があり、海馬、GABAニューロンなどでCreリコンビネースを発現するマウス、エクダイソンによる誘導系を利用したCreリコンビネースを誘導的に発現するマウスの作成を目的として、導入遺伝子を構築し、発現マウスを作成中である。マーカー遺伝子の発現によりCreリコンビネースを発現した細胞と発現していない細胞を見分けるためのマウスと掛け合わせて、作成されたマウスの判定を行うことを予定している。
Conditional Amini acid substitution実験に成功したが、その効率については今後の課題である。また、Creリコンビネースの発現なしにアミノ酸の置換がわずかながら起こっていないかを調べる必要がある。今回の成功が普遍的に各種の遺伝子に応用できるかどうかも調べる必要がある。
部位特異的なCreリコンビネースの発現には特異的なプロモーターを必要とするが、この点が問題であり、今後は直接遺伝子を導入することを考える必要がある。
結論
細胞特異的にアミノ酸の置換を個体レベルで導入するための新しい発生工学技術の開発に成功した。Creリコンビネースを脳の部位特異的に発現するトランスジェニックマウスのための発現ベクターを作成し、マウスを作製中である。
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