屋内ラドンによる健康影響評価および対策に関する研究

文献情報

文献番号
200942012A
報告書区分
総括
研究課題名
屋内ラドンによる健康影響評価および対策に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
研究分担者(所属機関)
  • 山口一郎(国立保健医療科学院・生活環境部)
  • 緒方裕光(国立保健医療科学院・情報センター)
  • 米原英典(放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター)
  • 笠置文善(放射線影響研究所・疫学部)
  • 藤原佐枝子(放射線影響研究所・臨床研究部)
  • 木村真三(労働安全衛生総合研究所・人間工学・リスク管理研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の屋内ラドンに関する政策決定のための基礎資料を収集する目的で、第1に、屋内ラドンの人口加重全国平均値、都道府県別の平均値を求め、第2に、アンケート調査により屋内ラドン濃度の交絡因子を解析し、第3に、人口加重全国平均値と男女・年齢階層別の喫煙率や喫煙の肺がん相対リスクなどの既存のデータを利用し、WHOあるいは米国環境保護庁が開発した屋内ラドンの肺がんリスク推計モデルを用いて、我が国でのラドンの肺がん死亡における寄与割合を推計する。第4に、屋内ラドンによる健康影響や対策に関する重要文献を翻訳する。
研究方法
H21年度は、第IV期・第V期の対象者で測定を実施した。最終的な有効回収率は、3461/3900で88.7%であった。
H21年度の翻訳として、WHOが2010年9月に公開したラドンハンドブックを翻訳した。
情報公開のためにホームページを作成した。http://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/radon/radonindex.html
結果と考察
  今回の調査のコンクリート造の建造物割合は32.4%であり、H15年度の政府統計の31.9%とほぼ同じであった。屋内ラドン濃度は、対数正規分布として矛盾しない。そこで、I期~V期のデータを使って木造、コンクリート造別に対数変換後のラドン濃度分布が春夏期と秋冬期で重なるよう季節調整係数を求めた。冗長を避けるため、結果は総合版に記載する。
結論
 3年間の屋内ラドン調査を成功裏に終えることができた。回収率は88.7%と高く、また屋内ラドン濃度に影響を与える家屋分布においても、H15年の政府統計とほぼ同じ分布でデータ収集ができた。季節調整係数の導入も相まって、信頼性の高い人口加重屋内ラドン平均濃度を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200942012B
報告書区分
総合
研究課題名
屋内ラドンによる健康影響評価および対策に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
研究分担者(所属機関)
  • 山口一郎(国立保健医療科学院・生活環境部)
  • 緒方裕光(国立保健医療科学院・情報センター)
  • 杉山英男(国立保健医療科学院・生活環境部)
  • 米原英典(放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター)
  • 笠置文善(放射線影響研究所・疫学部)
  • 藤原佐枝子(放射線影響研究所・臨床研究部)
  • 木村真三(労働安全衛生総合研究所・人間工学・リスク管理研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の屋内ラドンに関する政策決定のための基礎資料を収集する目的で、第1に、屋内ラドンの人口加重全国平均値、都道府県別の平均値を求め、第2に、アンケート調査により屋内ラドン濃度の交絡因子を解析する。第3に、人口加重全国平均値と男女・年齢階層別の喫煙率や喫煙の肺がん相対リスクなどの既存のデータを利用し、WHOあるいは米国環境保護庁が開発した屋内ラドンの肺がんリスク推計モデルを用いて、我が国でのラドンの肺がん死亡における寄与割合を推計する。第4に、屋内ラドンによる健康影響や対策に関する重要文献を翻訳する。
研究方法
全国3900家屋で半年間ラドン・トロン分別測定器を用いて屋内ラドン濃度を測定するとともに、測定器を設置した住人から、家の構造、家の形式、建築年、設置場所、換気等に関するアンケート調査を行う。統計解析は、SPSS Ver.15により行う。
 リスク解析は、WHOラドンハンドブックの手法および米国環境保護庁EPAのリスクモデルを使う。
結果と考察
 屋内ラドン濃度は、木造およびコンクリート造別に季節調整を行った。全国算術平均(SD)は 14.3 (14.7)Bq/m3、幾何平均(GSD)は、10.8 (2.1) Bq/m3であった。WHOの参考レベルを超す家屋数は、全国で0.1%(約5万世帯)であるが、岩手県、沖縄県、北海道は各々 3.8%、3.3%、0.94%と推計された。住宅形式ごとに屋内ラドン濃度の交絡因子を多変量解析した。戸建て住宅では、季節、建造時期、窓の開閉頻度のみが有意な因子であった。他方、集合住宅では、季節と換気口の開閉頻度のみが有意であった。
 WHOおよびEPAの手法で我が国の全肺がん死亡者のうちラドンが寄与する割合を推計した。前者では1.4%(ないし2.8%)、後者では男女全体の肺がんの2.4%が屋内ラドンの関与する肺がん割合と推計された。
 ホームページを立ち上げ、情報公開した。http://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/radon/radonindex.html
結論
 我が国の屋内ラドン濃度は、データが公開されているOECD参加国29カ国中下から3番目の低さである。コンクリート造住宅や省エネ木造住宅の普及により気密性の高い住宅が増え、屋内ラドン上昇の危惧もあったが、建築基準法の改定により空気質の改善が進んでおり、屋内ラドンはむしろ低下している。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 日本の屋内ラドン人口加重平均値は、今回初めて得られた。屋内ラドン濃度は、対数正規分布として矛盾しないので、平均値と分散をつかってWHOの屋内ラドン参考レベルを超す家屋割合を推計し、0.1%の家屋が参考レベルを超すと推計された。また、建造物の建築年、建造物の種類、換気の頻度、換気装置の種類、季節などと屋内ラドン濃度の関係を多変量解析したのは、今回が初めてである。平成15年の建築基準法改正は、屋内ラドンの低減に寄与していると考えられる。
臨床的観点からの成果
 WHOの手法では、我が国の肺がんの1.4%(高めのリスク係数を使うと2.8%)、米国EPAの手法では我が国の肺がんの2.4%が屋内ラドン被ばくに起因すると推計された。
ガイドライン等の開発
 WHOが2009年9月に公開したラドンハンドブックを翻訳し、公開した。
その他行政的観点からの成果
 本研究成果は、今後、我が国の屋内ラドン対策を考える上での基礎データになると期待される。厚労省だけでなく、全国の保健所、衛生研究所に研究報告書を送付した。
その他のインパクト
 学会発表、ホームページ公開を行っている。ラドンに関する英文原著論文を報執筆中。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
101件
ラドンに関する原著論文は、現在執筆中。
その他論文(和文)
77件
総説等
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
22件
2006年以降分
学会発表(国際学会等)
4件
2006年以降分
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Suzuki G, Cullings H, Fujiwara S et al.
LTA 252GG and GA genotypes are associated with diffuse type noncardia gastric cancer risk in Japanese population. 
Helicobacter , 14 (6) , 571-579  (2009)
原著論文2
Endo O, Matsumoto M, Inaba Y et al.
Nicotin, tar and its mutagenicity of mainstream smoke generated by machine smoking with ISO and HCI regiments of major Japanese cigarette brands.
J. Health Sci. , 55 (3) , 421-427  (2009)
原著論文3
Suzuki G, Cullings H, Fujiwara S et al.
Low-positive antibody titer against Helicobacter pylori cytotoxin-associated gene A (CagA) may predict future gastric cancer better than simple seropositivity against Helicobacter pylori CagA or against Helicobacter pylori.
Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention , 16 (6) , 1224-1228  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-11-25
更新日
-